王座戦振り返り⑦

2021/12/24 7R 東大(Y氏)

一度敗北して以来、およそ2年ぶりのリベンジマッチとなる相手。今回こそは、という思いで臨んだ。

第7局は相掛かりの出だしとなった。▲2五飛型は比較的珍しい形で、これを指す人は戦型を固定しているイメージが強い。
よって経験値での勝負になると思ったのだが、自身の経験から、この形の脅威は少ないと踏んでいた。

数手進んで、さっそく動きを見せてきた。
ここでの飛車交換は先手有利、よって△8四歩と打つ方針なのだが、これで▲8六飛と引かせて良いと見るか、ひねり飛車に組まれて不満と見るか、好みが分かれる。私は、ひねり飛車に組ませても不満はないという考えだった。

代えて△8三銀もあった。結果からすると、一考の余地があったかもしれない。

さらに10手ほど進んで、先手が仕掛ける。
このタイミングでの仕掛けはやりにくいと思っていたが、いざなってみると難しい。基本的に▲6四歩と押さえられても、そこまで不満ではないのだが、まったく働いていない飛車が気になる。どこかで△8五歩、もしくは△9四歩など活を入れるべきだったか。
そうなると、△4四歩を入れずに△3三角と上がり、▲3六飛は△9四歩で甘受する方針もあったかもしれない。

△6五同歩▲6四歩△5四銀▲7四歩と進んでいく。

一歩交換した図。
ここで先手の狙いは▲7二歩だろうと読んでいた。△同飛▲8六飛△8二飛▲7二歩△8五歩▲8九飛△8六歩…と進めばそこそこと思っていた。
しかし、▲8三歩と打たれて飛び上がった。完全に見落としていたのだ。

代えて△6二金とすべきという結論になったが、やはり少し苦労する展開に見える。
そうすると、△4四歩~△4五歩が微妙だったのかもしれない。持久戦では良いプレッシャーになるが、早仕掛けだと△2二玉や△9四歩などの方が価値が高い。ここは形の知識だけで、経験が浅かったのが大局観の見誤りにつながったのだと考えられる。

先手を歩切れにしたが、桂損をしてしまった形。
ここで▲7五桂と打たれるとかなり厳しかった。△8二飛▲6三歩成△同銀▲同桂成△同金▲6四銀△7四金▲6三銀不成△8五桂…のような読みでいたが、いかんせん先手玉が全く見えない形なので辛い。
相手の方は勘違いがあり、▲7五桂を早めに切り上げていたようだが、それで少し助かった。

しかし、すでにかなり時間を消費しており、ほとんど秒読みの状態になっていた。不利な中盤で迎える秒読みほど危険なものはないので、かなり集中モードに入っていた。
▲9八香△7一飛▲8六飛△8一飛▲3六飛と進む。

これでもかなり嫌味ではあるが、前述の順よりはいくらか軽傷に思えた。
△8五飛▲3四飛△8六歩▲8五歩と進み、少しよ見た目がマシになった気がした。

△8七歩成▲同金△4三銀上▲3六飛△6六歩と進む。
このあたりのふらつきは秒読みの不安さを表している。形を乱して、少し希望が見えてきたものの、歩切れを解消してしまったので一長一短。

▲3四桂は常に気になる筋であったが、優勢だと打ちにくいかと思った。
こちらも△1二玉▲2二歩△3五歩で案外頑張れるので、なかなか成立しないと考えていた。

本譜は▲7六金と、あくまで偏りの解消を目指してきた。
この時点で先手の左辺はほぼ働きがないので、何かしらのチャンスがあるような気がしていたのだが…何も芳しい順が見つけられなかった。

▲7六金△3五歩▲2六飛△8七歩▲7五桂

駒の配置的に、何かありそうだったのだが、歩だけでは一歩及ばなかった。
△8八歩成▲同角△6一飛と我慢する方針に変えたが、不利を認める順なのでようやく厳しい局面だと認識を改めた。

以下数手進む。
▲8三桂成とそっぽに成って、押さえ込みを狙う方針をとってきた。
ここで何かアヤをつけないと一方的になってしまうが、ここが最後のチャンスだろうと思っていた。
まず△4六歩と突き、▲7二成桂△4一飛▲4六飛と攻め形を作った。

初めは△3六歩の予定だったが、▲7三成桂でどれくらい効いているのか。
やはり歩だけの攻めなので、いまいち迫力に欠ける印象があった。

本譜は単純に△4四銀と押し出し、4筋の位を活かした突破を狙うことにした。しかし、以降の流れを見ると少し足りなかったかもしれない。

感想戦では△4二飛について検討した。▲7三成桂~▲6三歩成の厳しさが軽減され、こちらは△3四銀~△3六歩など、飛車交換を見せつつ強い戦いができた。
こちらの方がよかったかもしれないが、実戦で一手渡すことが少し怖かった。

以下数手進んで、一直線の叩き合いに。
▲4六同歩△同銀▲6三歩成△同金▲同成桂△5七銀成▲4二歩△同飛▲5三成桂と進む。

△4九飛成▲同銀△6七成銀▲5四成桂△2七銀と進む。

△7七角成と△4八歩の両狙いで、何とか攻めをつないだと思っていた。
しかしここで▲6二飛があった。

これが詰めろになっていることを見落としていた。
△6四歩と中合いしたが、▲4六飛と逃げられてこれも詰めろ。大勢が決してしまった。

投了図

これまで良い将棋を続けてきただけに、序盤で足をすくわれ、そのまま逆転の糸口がないまま持っていかれてしまったのは非常に悔しい思いだった。
いくら悪くなったとしても、そこから持ち直すのが自分の将棋でもある。一番の反省点は、悪くなった局面で頭を抱えてしまい、かなり持ち時間を消費してしまったことだろう。持ち時間という主張点すらなくなってしまうと、やっぱり実力者相手には苦戦を強いられてしまう。

幸いにもチームが勝ち星を挙げ、なんとか次につなげることができた。
本来1敗でもしたら全局出場は叶わなかったはずだが、次の一局で弾みをつけて、最終決戦に備えてほしいという期待から、出場させていただけることになった。
ここで良い将棋を取り戻し、最終局につなげようと気持ちを切り替えることにした。しかし、力みすぎるあまり痛い目にあうことになる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?