恋の話

みんながいるときに会うと、そうでもないのになぁ。不思議だな。
でも、考えはじめると、みんながいても関係ないよね。だめになっちゃう。
・・・
ガタッと椅子から立ち上がる音がして、私はちらりと後ろを見る。
広瀬くんが、私のななめ後ろの、さらにもうひとつ後ろの席で教科書を読み上げている。
いい声。
そう思うけど、それより深くは考えないことにする。
どんな風にいいのか、他の人の声とはどう違うのか、友達と話すときにはどんな声だったっけ。こんな風に考え出すと、すぐに頭がいっぱいになる。
気づくと、教科書を読んでいるのはもう広瀬くんじゃなくなっていた。
別の男の子が漢字を読み間違えて笑いが起こる。私も一緒に笑った。
広瀬くんの方は、もう見ない。
28.8.1

#はんぶんフィクション

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?