無神論者の倫理論


結論。個人では健康を、集団では調和を、社会では平和を目的として行動するのが良い。

倫理的行為は下記3つに分けられる。


①自身に対する自制

自制には、禁欲と勤勉がある。
欲望を抑える力と、目標に向かって動かす力である。
欲望には、自然な欲とと不自然な欲がある。
自然な欲とは、生存のために必要な欲のことである。
代表的なものは、食事・睡眠・生殖の3つである。
これらは限度がある。
それに対し、不自然な欲とは、地位や名誉、名声、金銭を求める欲のことである。
そしてこれらには、限度がない。

そこで倫理的であるには、不自然な欲は抑制すべきである。
また、自然な欲と言えども、過度な美食や豪奢な寝具(住環境を含む)、不自然化した性欲にも注意すべきである。

そのために目的とすべきは、健康である。特に、自然な欲望を必要最低限満たすには、肉体的な健康の追求と維持が良い。

勤勉には、学業と職業がある。
そして、行動が倫理的な場合と、目的が倫理的な場合がある。
行動が倫理的であるとは、熱心に勉強に励むことや、真面目に仕事に従事することである。
目的が倫理的であるとは、医学や法学、工学など、社会に広く認められた学問を学んでいることや、それらの知識を生かした仕事を行うことである。

②他者に対する利他

人が利他行為をする理由は、生存に有利だったからである。
人間は常に集団で生活してきた。集団に貢献することは、自己の生存と、そして集団としての生存確率を上げる行為である。
なので、血縁関係の有無に関わらず、なるべく利他的な行動を取るのが良い。
結果として、それはどのような形であれ、自己に帰ってくる可能性が高いからである。
ただし、過度な身内贔屓と、外部集団との関わりは避けた方が良い。
所属する集団内での立場を危うくするのみならず、集団そのものの秩序を崩しかねない。いずれにせよ、自己の安全は脅かされる。

集団内では利他的に振る舞いながらも、特定の相手を贔屓せず、外部とは距離を保つ。
この難題を達成するのに、重視すべきは、調和である。

③社会に対する奉仕

奉仕には有償と無償がある。
有償の奉仕とは、一般的にに仕事のことである。
仕事には目的があり、その貢献度に応じて金銭的な対価が発生する。
社会的に意義や価値を認められた仕事に従事することは、倫理的な行為である。
ただし、研究や芸術の領域においては、その価値判断が難しいため、倫理的と認められないこともあるだろう。

無償の奉仕とは、逆に、仕事以外の全ての行為が該当する。
完全に個人的な趣味でさえ、一度、一人の目に止まれば、それがどのようなものであれ、社会への奉仕になり得る。(本書がそうであるように)
しかし、その行為が倫理的であるか否かは、完全に他者に、ひいては社会的価値観に依存する。
傾向としては、利他的な行為ほど、倫理的と見なされやすい。結局のところ、個々人の判断基準と、集団での価値基準が、社会全体にも適応されると思って良いだろう。
その上で、共通認識として価値を持つものがあるとすれば、平和ということになる。
幸福や発展も、平和無しには成り立たないからである。


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