こんな夜に

些か前の話になるが、肩を痛めた。


仕事での怪我であればまだ胸を張って言えるものの、純粋に公園でキャッチボールをしている際に痛めたので至極情けない。


恥ずかしさのあまり、穴があったらお湯を張って肩まで入りたい。

それならバスタブでいいか。

今日は湯舟に浸かろっと。


肩を痛めた心当たりは多々あるが、今思うとボールだけではなく普段から匙ばかり投げ続けたのが大きな原因だろう。

私の場合、一度匙を投げては、その匙を拾ってまた投げるの繰り返しをしている為たちが悪い。

そりゃ肩も痛める。

可哀想な性分である。

そもそも匙は投げるべきものでは無いが、食事に使うよりも投げるものという認識にまでなってしまっているのが末期である証拠だ。


兎にも角にも、この「ぴえんぴえん」と悲鳴をあげて泣く肩とは早急に決別しなくてはならない。

肩と男は泣かない方がいいのだ。

分からないけれど、感覚的にそう思う。


したがって私は、肩の治療のため通販で低周波治療器を購入することを決意した。

堅苦しい名前だが、耳にしたことはあるだろうか。

低周波治療器とは、電流を流して実際に痛めている部位の治療を行うものである。

電流がバイオレンスで物騒な響きだが、これが怪我に良いらしい。


私の肩は湿布やマッサージでは最早如何にもならず、治療専用の器具が必要なところまできているのだ。

身体は資本。

ここに資金を投入せず、なにが自らを大事にしていると言えるであろうか。

幾らかかろうが、ここは惜しまずに金銭をかける所存である。


低周波治療器。


調べてみると、激安ジャングル価格で約二千円。


野口三人でも夏目三人でもお釣りが来る。

樋口なら野口も夏目もお釣りで来る。


少しばかり安すぎやしないか。


低周波治療器の「さあ痛みを金で解決しようではないか」と言わんばかりの高価な響きとは裏腹に拍子抜けしてしまった。


ここまで安いとクオリティに疑問符が付くのは当然だろう。

だが、疑問符だろうがピンフだろうが今の私には安いに越したことはない。

財政状況がギリシャも真っ青な苦難に陥っている我が家の家計を鑑みると特にだ。


そのまま調べを続けていると、どうやら低周波治療器も価格はピンキリであることがわかった。

ピンとキリのどちらが高くて、どちらが安いという意味合いで使われているか分からないが。



当然私はピンの方を購入した。


なんとなくピンの方が安そうな響きをしているので、安いという意味で使っているのは読者諸兄姉ならお分かりだろう。


そのピンが手元に届いて、実際使ってみた訳だが、



確実に、


キリの方がよかった。


間違いなく。


使用感は、電気が流れるたびに筋肉が収縮するのだが、もう治療器具というよりは筋トレ器具。

筋力強制増強マシーン。


ピンだからか、流れる電流がべらぼうに強い。

ピンだからか、使用する度に筋肉痛になる程の負荷がかかる。

これでは肩は痛いままなのに筋肉ばかりがついて肩幅が大きくなってしまうではないか。

ピンだからか、何か身体に悪いような気もする。

こうなってくると、起こりうる全ての違和感がピンだからという帰結になってしまいかねない。


これはまずい。

ショッピング失敗である。


だが、幸運なことに少し体を休ませてもらえる期間をいただいている。。

緊急事態宣言とやらが世に発令されているためらしい。

これは僕の肩にとっても緊急事態ではあったので個人的には良い機会だ。


こうなると、自然治癒の路線に変更するしかない。


読者諸兄姉が自宅待機で暇を持て余すこんな夜に、申し訳ないが。


私は、ピンで失敗した身。

これ以上無駄なことをせず、ゆっくり身体を休ませてもらう。

皆々様も、この期間が少しでも良いものになりますように。

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