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山が好きな理由について

「趣味は登山です」と人に堂々と言えるようになったのはここ数年のこと。

「登山なんてしんどいだけじゃないですか!」という風に反応されることはよくあって、それでも「一緒に行ってみようかな」と一度着いてきてくれた人はみんな、「しんどかったけどそれ以上に気持ち良かった!」と言ってくれることがほとんどだ。

山を登るという行為は面倒に思えることかもしれないけれど、やめられない理由は人それぞれにあるものだ。
人が山を登る理由を聞くのって、その人の人柄が見える気がして好きなのだけれど、私にとっての登山の魅力は何だろう。

昔好きだった小説やエッセイ本を何年も何年も経って読み返したときに、当時感じたこととはまた違った印象を受けたり、別の視点からの気付きを得られることがあるように、山を登ることで得られる気付きや感じることもそれと同じなのでは?と思う。

今まで感じてきた登山の魅力も、歳を重ねた先にはまた変わっているかもしれない。またいつか読み返して「あぁ、こんな風に感じていたなんてあの頃は若かったな」なんて思い出すのも良さそうだから、今思い浮かぶことを綴っておきたい。

私が登山を続ける理由① - とにかく歩きたい -

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とにかく歩くことが、食べることと眠ることの次に好きだ。

場所は山に限らず、街散策やショッピング、カフェ巡りのためならどこまでも何時間も歩ける自信が昔からあった。街で遊ぶことが好きだった頃も、一日中カフェやアパレルショップ、インテリアショップを巡ってあちこち歩きまわる休日を過ごしていて、足が疲れてもう歩けない!という状態になったことが本当になかった。

趣味嗜好が変わって、20代の半ばを過ぎた頃からは山や自然の中で休日を過ごすことが増えてきたのだけれど、場所が変わっても歩くことが好きだという気持ちは同じままだった。暑い夏の山も、雪の積もった冬の山も、とにかくずんずん進んで歩くことが気持ち良いのだ。

私が登山を続ける理由② - 美しい自然と生き物 -

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山を登ることでしか味わうことの出来ない美しい景色がある、ということが登山の一番の醍醐味といえる。車やバスで気軽に行けるような絶景スポットももちろん楽しいけれど、自分の足で歩ききったからこそ、その先に待っている景色に大きな感動を覚えることもある。

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歩く過程では、足もとに咲く草花やトレイルを囲む木々の様子に心奪われる瞬間が沢山ある。思いがけず可愛い野生動物に出会えることや、鳥のさえずりに癒されることもある。

そういう瞬間の数々は、キラキラとした美味しいデザートを食べたときのような気持ちに似ている。

ワクワクする気持ちや優しさを忘れず、いつも心を豊かな状態にしておくために、美しさの中に身を置く。それは私にとって欠かせない日常の一部なのだ。

私が登山を続ける理由③ - グラスの水を空にできる -

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日常の生活の中や仕事にあるTO DOやタスクをこなすためにフル稼動している頭。人付き合いにおける気遣い。
自分の頭と心のキャパシティを1つのグラスと例えたら、日々のなすべきことでいっぱいいっぱいになっている状態って、溢れんばかりの水がグラスいっぱいに入っているようなもの。

溢れる前に空っぽにしてあげることを怠ると、気付かぬうちにどんどん溢れてしまって、始末にも回復にも時間がかかると分かって以来、登山やハイキングをすること、自然の中に身を置くことで、頭も心もリラックスさせてクリアな状態を保つように心がけるようになった。

もうそろそろだなぁと感じたら山を登る。身体を動かして、呼吸を整え、美しいものに心を動かす。それに尽きる。

私が登山を続ける理由④ - 達成感が自信に繋がる -

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山を登って誰もが共通して得られるものは達成感。ただ、その達成感のために登っているのかというとそうではなくて、その先の気持ちの変化みたいなものが私にとってはいつもプラスになるからだ。

目指すものは山の頂上とは限らない。ある山から見たい別の山、見たい景色、行きたい山小屋、山小屋のメニュー、山でやってみたい料理、決めたトレイルを歩ききること、などなど、その時々によって異なる。どれを取っても、それらを楽しみ切った一日の終わりは何とも言えない高揚感がある。キラキラとした気持ちで溢れて、何の自信なのかは分からないけれど、「自分の人生が最高に大好き!」と心から思えるような、そんな自信をひとつひとつ積み重ねていくことができるのが登山だと思う。

自分の人生が好きだと思えることはとても大切なことで、だから登山はやめられない。

私が登山を続ける理由⑤ - ニュートラルに戻れる -

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身の回りのモノやコトを出来るだけそぎ落として本当に必要なものだけを携帯して出かける登山では、すべてをシンプルな状態に戻すことができる。

疲れたら立ち止まる、暑くなったら服を一枚脱ぐ、喉が渇いたら水を飲んで、お腹が空いたらご飯や行動食を食べる、山で泊まるときなら眠くなったら眠る。ただただ自分の身体と心が赴くままに行動することは、本来あるべき生き物の状態で居られることだと思う。街にいたり仕事に追われている日常では意外とそれらのことを無視してしまっている状態。

疲れていても仕事や人付き合いのために頑張り過ぎたり、暑くてもファッションを優先したり、スマホを見過ぎて夜更かしをしてしまったり。そういったことから離れる時間を作ることで山に行けば何度でもニュートラルな自分に戻ることができるのだ。

自分にとって本当に必要な最小限のモノやコトが分かると、登山以外での私生活や仕事においても思考の取捨選択がしやすくなるように思う。

おしまいに

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思い巡らせてみると実はちゃんと自分のなかにもあった深い登山の魅力。
登山=ハード な面ももちろんあるのだけれど、ピークを目指すことだけが登山の楽しみではないと知ったのはニュージーランドでの自然の楽しみ方がきっかけだった。美しい山々の景色を見ながら、新鮮な空気を胸いっぱいに吸って歩くことが、私にとっては何よりも好きな登山の楽しみ方だ。

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