見出し画像

エロイカジャパン2022参戦記

概要
コース 160km 獲得標高3700m
スタート 北軽井沢旧草軽電鉄駅舎前 AM5:00

自転車の仕様
フレーム コルナゴ スロンスーバー 1980年?
フォーク コルナゴ ストレートフォーク 1インチアヘッド 

主要コンポーネント
シマノ 7400系デュラエース  
クランク  FC-7410 (53-39)
フロントディレィラー  FD-7402 
リアディレィラー  RD-7402
ヘッドセット HP-7700 
ブレーキ BR-5800 
Wレバー ダイヤコンペ ENE W-SHIFT LEVER
ブレーキレバー ダイヤコンペ DC204QC
ブレーキワイヤー 日泉 Vintage Outer Casing
ペダル 三ヶ島 Urban Platform  トゥークリップ christophe
ステム NITTO UI-2 120mm
タイヤ ヴィットリアCORSAコントロール25C


ホイール  手組6本組み イタリアン
リム FR アラヤRC-540 32H
ハブ Fスズエラージハブ RシマノFH-6700
スポーク 星プレーン#14  プラスニップル

その他 自作フレームバック&ハンドルバーバック(下記補給食を詰め込む)

補給 コンビニおにぎり  カロリーメイト 玄米ブラン プロテインバー セノビックバー Mag-on  2RUN    CCDドリンク 計約2000Kcal

ウェア
1978年 日刊スポーツ グリーンピアロード記念ウールジャージ
Defeet ウールアームカバー
Rapha カーゴビブ
Rapha メリノニーウォーマ
Café de CYCLISTE メリノ靴下 
Rapha レインジャケット
靴 オニツカタイガー MEXICO66

レポート

早朝5時、草軽電気鉄道旧北軽井沢駅舎前がスタート・ゴール地点。
残念ながら、まだ雨が残っている。
回復傾向であることに望みを託してレインジャケットを着てスタート地点へ向かう。スタートの5分前に前輪がパンクしているのに気づく。
新品のタイヤに交換したときにチューブがだいぶん伸びていたので、気にはなっていたが案の定である。スタート遅れても特に問題はないので、その場で交換。ここでパンクしといてくれて良かったと前向きにとらえる、ただ残りのチューブは2本。

マルコさんがスタートのスタンプを押してくれる。ミドル・ショートのスタートは地元の議長殿が押してくれたらしいが、我々は朝が早すぎたようだ。「5時に来てください」とは言えなかったのだろう。

スタートはエントリー順だろうか、前のめりで常にWebをチェックしていたのでエントリーだけは最も速かった様子。2番ゼッケンなので(1は欠番)スタートは先頭のはずが、パンクで少し遅れて4番目ぐらいに出発。
コースは穴があくほどGoogleMapで確認し、スマホのGPSも起動、キューシートっぽいのも印刷してきたが、道知らないから先頭が間違えたら後続にも迷惑かかるから丁度良い。

過去、一般道のラリー形式のイベントは2回経験している。
1回目は蓼科のバイクロアのディアハンター
2回目は野辺山グラベル
前者は、道中の道案内板が皆無。ゆるい感じのお兄さんが先頭をアテンドしてくれたが後方は放置。開始5分で中切れが起こり、取り残された後続集団は全員迷子。結果、第一ステージのスタート地点にたどり着けない事態に。
後者は、道案内板も人員配置も完璧でコースを知らなくても、生粋の方向音痴でも迷子になることはまずない。両極端を経験しているので、デフォルトは前者と思う事にしている。

結果的には道案内板は完璧で分かれ道には必ず設置してくれていた。スタート直後、数キロもいかずにいきなりグラベル。
万沢林道を想定して熊鈴を百均で購入し装着していたが、万沢林道が雨で危険との判断でカット。
四万温泉のエイドで折り返して、暮沢峠を登り返してミドルコースへ入るコースに変更とのこと。なので、この熊鈴は不要、だが振動でチリンチリンうるさく、不要なのだがひと際その存在感を放っている。途中、うるさすぎて煩わしいのでハンドルバーの間に押し込み消音。

そのグラベルは一瞬で終わりアスファルトに。裏道を通り、長野原方面へと下る。後続の方々が結構良いペースで追い抜いていく。160キロの距離は経験あるが、獲得標高4000mUPは経験がない。
登りか下りしかないコースプロフィールなのでこの大会に向けては、ひたすら近所の山を登り下りし、獲得標高を稼ぐ練習をしていたが2500mを超えると途端に足が止まりまったく踏めなくなる。
結局3000mを超える練習は出来なかったが、それは本番にとっておくとして、戦略としては、その足が止まるポイントをできるだけ後ろにずらすこと、そして踏めなくなった状態でどれだけ粘れるかと考えていた。なので前半に飛ばすのは百害あって一利なしと言い聞かせ、そろりそろりと慎重に前半はいなす。

292号線に入り、中之条町への緩やかな登りへ。気が付くと3段ギアで木リム・コルクシューのかなり良い感じをかもしだしている自転車の若い方と二人になっており、歓談しながらペースを合わして進む。
話を聞くと、ギアは前42T後ろは最大24T、車輪をひっくり返すと28Tのシングルになるとのこと。
何より関心したのが普段からこの自転車に乗っているとのことで日常の相棒になっている様子。なので、僕もこのエロイカ仕様自転車もイベントが終われば通勤で乗ることにする。この時決めた。
“自転車は道具であり、おもちゃである”
(翌日に訪問した浅麓堂の店主が仰ってたが、ここはパンチが効きすぎてて紙面が足りないので後日)

中之条六合から県道55号線へ入り、暮坂峠への登り。ここで、若手の方が登り用に車輪をひっくり返すという、それも見てみたかったがお別れして先を行く。ここの勾配はそんなにきつくなく、緩急を繰り返しながら標高を稼ぐ。ここで雨が止んできたので、ジャケットを脱ぐ。同時におにぎりを補給。
今回、補給が重要になると考えてたので2000キロカロリー分を持参、ポケットだけに収まらないのでフレームバッグ・ハンドルバッグを装着し詰め込む。で、このバッグ類、最近のモノをつけると雰囲気が台無しになるので思案した結果、自作。
これも、百均にB4サイズほどの牛革が売っており、菱目打ちや糸、トコクリアなどは近くのホームセンターに置いてあり購入。
先生は、アトリエ ネトラポートの レザークラフトYouTube。自転車系 YouTubeの推しの強さに辟易していたせいか、優しい解説を見ながら作業していると心が安らぐ。作業されている手元と所作が素敵である。あと、声と雰囲気も好き。 

話がそれた。
で、感覚で補給していると手遅れになるので、40分おきに機械的に固形物から摂取する。
自作バックは我ながらフレームにジャストサイズで取り出しやすい、量産したら売れないだろうか?ドリンクもいつもは水道水だが、今回は奮発してCCDの粉末を溶かす。なんとなく腹持ちが良い気がする。この暮坂峠で、前走者の方に追いつく、その先で車輪を外して確認されている方もいる。トラブルだろうか?声をかけるも「大丈夫です、行ってください」とのことで先に進む。

特に疲労を感じることなく暮坂峠のピークを過ぎて、中之条へと下る。この頃には、薄く日が差すようになってきた、霧の中に光が差し込み幻想的な雰囲気が良い。ここで、初めてギアをアウターに入れる、下り、平地で休みすぎないように、踏みすぎないようにに踏む。四万温泉まで行ったら帰路はここを登り返すことになるので、勾配なんかはよく見ておく。これはきつそうだ。ここでどれだけ足を残せるかが完走のコツになるであろう。

中之条まで下り、四万温泉へと向かう、ここは緩い登り基調。四万温泉の手前で、突如チェックポイントとエイドステーションが現れる。ここで折り返しのようだ。ルートMAPをサコッシュから出してハンコをもらおうととすると、まさかのトップ通過。3,4人は前にいると思っていたが、先ほどの二人が先頭だった模様。バナナと饅頭と水を頂いて、再出発。
こうなると、競争ではないと重々承知しているが、先頭でゴールしたい欲が大量発生。

先ほど、緩く登ってきた道を2割増しで踏んで中之条まで折り返す。後続の方々とスライド、手を挙げてコンタクト。そして、暮坂峠への登り返し。ここは慎重に進むが、見た目以上に勾配の変化が激しく、ギアが足りない場面が出てくる。
足りないものは回せないので、ダンシングも使い少しでも体力の損失がないように努める。
やがてピークへ、ここで体力ゲージは三つ減って7/10。ミドルコースへの分岐まで下るが、急遽変更になったので向こうからは見えているが、こっちから見える道案内板はないはず。見逃すと永遠に下る可能性があるので、ただでさえ登るのに、無駄に1mmも登りたくないので見逃さないように注意して下る。無事発見しミドルコースへ合流。裏道で尻焼温泉へと進む。

下った後の登り返しが脚にくる。
8時スタートのミドルコースの方々と会うのかなと思っていたが、人の気配は皆無で先に行っている様子もない。途中、案内板だけがあっちだよ、こっちだよと教えてくれる。長く一本道が続くと案内板が出てこないから、この紺色の→とEroicaの文字が出てくるとホッとする。
うねうねとアップダウンを繰り返し、時々現れる集落を抜ける。青空も現れてとても気持ち良い。
55号線に帰ってきて横断すると尻焼温泉に到着。2回目のチェックポイントとエイドステーション。
が、まだ誰も居られない、しばらくすると下のテントでエイドの準備をされていたのか、上がってきていただいてスタンプを押して頂く。旅館の女将さんらしき方も現れて「おにぎりとかあるから、どうぞどうぞ」と言ってくださる。が、次の草津までそんなに距離がないであろうことと、補給はし続けているのでお腹が空いてない。何より、トップを守りたいから先を急ぎたい。という思いが先行して「すいません、先にいきます」とエイドには寄らなかった。結果、この行動が色々な意味でのちに後悔をもたらすことになる。
ここまでの工程で更に体力ゲージが減り、この時点で5/10。

尻焼温泉から草津へ向かう。
遠くないが近くもないことを思い知る。本格的に登りが始まるのはここからであった。そして勾配がきつい、ここにきて蓄積疲労もたまり回して登れない、踏み込むしかない状態。勾配のせいもあるが感覚的には相当遅い。
さっきは、お腹空いてないなどと言ったがちょっと空腹感を感じる、あわててスロウバーを食す。
おにぎりのほうがどんなに美味しいか・・・30分前に戻りたい。前には進まず、上にだけ上がっている感覚。九十九折を繰り返しこの辺の道の記憶があいまい。ようやく下ると思いきや、例の矢印が脇の砂利道を指している。ここで、グラベルである。「No…」と声が出た。路面状況はそんなに良くない、ガレれている所も多く、少なくともトスカーナの白い道ではない。石も多いのでパンクしないようにラインを選ぶ、下りは出来るだけ腰をあげる。ここらへんは、シクロクロスの技術が役立つ。21mmチューブラーか25mmクリンチャーか最後まで迷ったが、見た目はチューブラーだがグラベルの走破性とパンクのリカバリーを考えて後者にして正解。

グラベルを抜けると草津温泉にひょっこり出てきた。湯畑周辺は大勢の観光客であふれているので、接触しないように細心の注意でエイドステーションへ。湯畑の横のだいぶん目立つところに設置されていた、このラックにたくさんのビンテージ自転車が並んでいたら壮観だろうなと思いつつ、独りぼっちで少し寂しくなってきたが、エイドの方々のお声がけが嬉しい。トン汁と温泉饅頭を頂く、残念ながらおにぎりは無かった。この区間で更に体力ゲージが減って3/10。

湯畑を後にする。
再び、観光客やカップルが楽しそうな中をそろりそろりと走り出す。が、外周路に出るまでの道が、なぜここをチョイスした?と聞きたくなる激坂。休んで直ぐでなおのこと辛い。しかし、ここから嬬恋パノラマラインまでは下り基調のはず、気を取り直して進む。が、しばらく住宅地を進むと、またもや矢印が草地の方を指している。最後のグラベルである。下り基調ではあるが、かなりガレている。先のグラベルよりも尖った石が多く、乗車するのも躊躇するレベル。ここにきてパンクは避けたい、目を皿のようにしてラインを選ぶ。正直に言って爽快感はない。2回目であるがトスカーナの白い道では全くない。
なんとか無事に抜けて嬬恋パノラマラインへ。この時点で神経を使ったので体力ゲージは2/10。

嬬恋パノラマラインに突入。
ここの前半は、意外と視界が広がらない登り。
道が広く真っ直ぐ伸びているので錯覚するが、勾配が意外とあるのかかなりきつい。ここまでくれば獲得標高も3000mを超えていると思われ、ここは頑張りどころと言い聞かす。
すっかり天気は良くなり日差しが強い。発汗量も増えてきているので足攣りが心配になる。
予防に持ってきた2RunとMag-onを同時に摂取するが、その10分後に攣る。なんだよ、と思うが、攣っているのに走れるから、逆に効果はあるのかもしれない。

我慢の走りでしばらくすると、パッと視界が広がる。キャベツ畑の新芽の緑と土の色とスコーンと抜けた空の青さが心地よい。ギアをアウターに入れて、いにしえのツールの逃げ気分。青い空と流れていくアスファルトがアンダルシアの夏のようだ。「2004年のあの映画を観て自転車買ったんだよなぁ」と思い返す。

もしかして後続が協調して追いかけてくるのでは?と妄想し後ろを確認するも遥か彼方まで誰もいない。
この広い道に僕だけしかいない。あとにも先にもこんな時間はもうないだろうから至福の時間。

と気分良く走っていたが、愛妻の丘に向けての登り返しに突入する。ここが、予想以上にきつい、体力ゲージ1/10でいよいよ搾りかす。この登りがどこまで続くのか不安になってきた頃に左矢印が現れて下りへ。

愛妻の丘が見えてきて、最後のチェックポイント。スタッフの方が暇なのか、自転車でグルグル回っているのが遠くから見える。スタンプを押して頂き、ゴールへ向かう。国道144号線をまたぎ、南側のパノラマラインへ。丘っぽい丘陵地帯でアップダウンはあるものの勾配はきつくない
テンポを取り戻しラストスパート、はかけれずに淡々と北軽井沢のスタートした地点へ向かう。
いつの間にか景色は緑が鮮やかな森の中にかわっていて、その中を進む自分がいた。


エロイカのビンテージ感とそれに相反するコースの厳しさに魅せられて出たいと思うもコロナ禍で2年の休止。
ようやく参戦できたが、想像の上を行く厳しさと楽しさであった。
雰囲気とノリも好きだけど、古い機材をしっかりと整えて、脚力と体力も鍛えないと過酷な道と大地に負ける。相当疲れたが、しばらくはその余韻に浸りたいと思う。
開催と準備をして頂いた方々には感謝しかない。
それもあって、悔いが残るのは尻焼温泉のエイドスキップ。無くしてはいけないものを大事にするのは、自転車も環境も山の奥深くにある旅館も同じで、特にコロナ禍で経営も厳しいであろう旅館の女将さんが施してくれた想いを無にしてしまった気がして仕方ない、
どんな状況においても相手のことを考えられる行動をとれるのが強さであって、本当のサイクリストと思う。
サイクリストとしても人としてもタフになって、来年またこの地に戻ってこようと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?