J庭56レポ
近井とおと申します。
J庭、お疲れさまでした。スペースで本をお手にとっていただいた方、設営の雰囲気で立ち止まって頂けた方、ありがとうございます。会場ならではだなと、一人喜んでました。
また、サンプルを読んでいただけた方もありがとうございます。自分でも本編が好きすぎて、話の本軸を読んでもらいたく長めに投稿してました。
J庭自体は一般も含めて参加が初めてだったので、申し込みから家に帰るまでのすべての時間が楽しかったです。
私自身はオフイベが好きで、参加前にJ庭のレポも読んでいたので、せっかくだしここ半年のことも含めて記録としてまとめてみようと思いました。
・新刊について
元々小説を書いてはいたのですが、不調が重なり年単位でろくに書けない読めないという状況が続いていました。その時に無意識にpixivを開き、ある作品を読んで、創作BLを書いてみよう! pixivに投稿してみよう! と思わせてもらい、その勢いのままこうやって本を作れるところまで来ました。本当にありがたいことだなと思います。
書けていた頃でも2000字前後の作品ばかりで、投稿する前までは100字書くだけでも厳しかったです。なので、半年で新刊+おまけで11万字近く書けるようになったのが、本当に、本当に嬉しいです。驚異の伸び率1100%となりました。
きっかけをもらえて、私が投稿した作品を読んで下さる方やコメント等で反応をして下さる方がいて、周りの友人たちも応援してくれて、様々なものから影響を受けて進んでこれたなあと思います。常に周りに恵まれていると言って回っているような人間なので、この場でみなさんにそんな感謝の気持ちが伝えれていたら嬉しいです。(SNSのROM専期間が長すぎて、返信に時間をもらっているのが本当に申し訳ないのですが……)
『川底にふれる』は、その書けなかった時期に川に憧れを持ち、いつか川を書きたいなと思っていたので今回題材に選びました。明日には何も書けなくなるかもしれないといつも思っているので、書けなくなる前に全部消化しようという作戦です。
当初は「神の孤独を癒すために主人公たちは肉体的な死を選び、川底で神と仲良くする」みたいな展開でした。しかし、添削・校正の手伝いをしてくれる友人にそれだと読めないと言われたこと、デザインの協力をしてもらった友人の原案やイメージに心を奪われたことで、実際には当初からどんどん離れていき明るいオチになりました。その関係で、プロットにない場面が多く、自分の想像していない方向に進んでいったのが楽しかったです。
元々キスすらほぼ書いたことがなかったのでそういう描写のほぼすべてに自信がないのですが、えっちだったと言って下さった方がいて本当に安心しました……。
好きなものを詰め込もう! と思ったので、方言を入れてみたり(おまけで私が二十歳くらいまで方言だと思い込んでいた造語も出しました)、当初人型の神様だったのを大蛇として出したり(友人に話したときに私の癖のわりに人にしたんだと驚かれ、蛇でもいいんだと気付きました)、蛇に精通を導かせてみたり(すごくえっち)しました。逆にヘミペニスが出せなかったのと、丸呑み要素が薄くなってしまったのが悔しいので、また蛇を書ければいいなあと思います。風景をもっと豊かに書ければよかったという反省点もあります。
村名や伝承部分に関してはいくつか参考にした上で作り、村自体も何カ所かを混ぜながら書いています。
書く前に一度だけ山を眺めに行きました。
装丁は銀箔紙を使いたいという一言と作品のイメージや大まかなあらすじだけで、デザインを組み立ててもらいました。実物を見たときに、すごい表紙になってる! と感動し、いろいろな場所に連れ回したほどです。実際、スペースに来て下さった方にも、表紙が気になってと教えて下さった方もいられたので、すごい友人を持ったものだと改めて思いました。
おまけ本に関しては、入稿後にもっと書けたのになんでここで止まらないといけないんだろうと本当に悔しくなって、追加で書くことにしました。自分で製本するんだしトレペにステンシルして糸綴じにしちゃお〜と軽い気持ちでデザインを決め、普通に間に合わなくて当日の移動中やスペースで縫ってました。糸綴じは添削の友人にも協力してもらいました、本当にありがとうございます……。
サンプルは九月末まで本軸分を丸々公開しています。
通販も今日から開けました。
少しでも気になるなと思ったら、是非覗いてもらえると嬉しいです。
・設営コンセプトについて
今回は新刊一冊だけの分スペースが広く使えたので、せっかくだしそのためだけの設営をしてみよう! とこんな感じにしてみました。
規定や環境といった条件を並べてみると、スペースは机上の平面部分だけでなく縦にも広い空間があり、めちゃくちゃ遊べるなと思います。
設営コンセプトなんて初めて考える内容だったので、小説のアイディア出しと工作の合いの子みたいな感覚でやってみました。
今回は距離・視線位置と情報について意識し、初案では『作品紹介ボード』をコンセプトに「その場で作品の世界観・内容を分かるようにする」ことを目標としました。また、その場で捨てれる素材を使うことも前提として設定しました。
本文が終わった段階で、「因習村要素が薄くなってしまった」「内容自体も説明のしにくい部分が多くなった」ため、それを補うような形で各話から台詞を持ち出す作品紹介のレイアウトにしようと決まりました。友人との会話のすれ違いから「ポスターを敷き布のように使う」という案が出たため、そのまま採用してみました。文字のレイアウトはデザイン担当の友人から指示をもらい完成させました。本当に彼女には頭が上がらないです。
当日までどうなるか分からなかったので、形が出来たときに思いの外上手くいって安心しました。スペースの雰囲気で本に興味を持って下さった方がいて嬉しかったです。撤収完了まで、この空間本当にいいな! とずっと思っていました。(私はこの手の作業が不得意なため、実際にはほとんど友人二人が空間を作ってくれました……)
悪かった点として
・実際にスペース前で本を見たときに、銀箔部分の輝きが分かりにくかった→ライトを設置してもよかった
・情報の精査が甘く、一参加者として見たときに分かりにくい箇所もあった
・座っているとスペースに人がいるのか分かりにくい
など、改善点も多かったので、次回以降に生かしていきたいと思います。
J庭に関する部分は、そんな感じでした。
帰路でまとめようと決めていたのがここまでで、ここからは後日談となります。
翌日にたまたま水路の近くを通ったのですが、波の肌が蛇の鱗のように見えて、透明な蛇と一緒に歩いたりしました。
元々川と蛇に関係がある程度の知識は持っていましたが、大きな川を橋の上から渡ったときに、大蛇が這うような水面の揺らめきを感じました。川に蛇が宿っているという感覚を心の底から理解できて、この美しい川をどうすれば書けるのだろうと思わされたのが、ネタの根本のきっかけでした。全部終わってから気付いたので、あまりにも遅すぎたのですが……。
その後、歩道橋の下も通り、歩道橋上から見たときに道路もまた川であると気付かされました。自分も流れる波の一部分となれると思うと、本当に嬉しいです。川の上を進むことが出来るので、歩道橋や跨線橋なども含めて橋も好きです。船も好きですし、船の通った道は波の表情が違うのでおもしろいです。海は波が砂ごと足を浚っていこうとするところが、可愛くて好きです。
やっぱり空間って美しい! 空間と人間は作用しあうので、その二人にしかない場所がある! 最近は人間を書くのに必死で忘れていたので、空間への憧憬を手触りのある描写に変換していきたいと思いました。
とりあえず九月まで走りきってみよう! と思っていたので先の目標は決まっていないのですが、まだ書き途中のものもあるし、ゆっくり戦利品を読みながら次の目標を探していきます。
まとめていくと書きたいことがどんどん増えて幸せです。
誰かの本棚で彼らの川底が輝いている姿を想像しながら、美しい景色を書けるように頑張っていきます。
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