ナンパ

彼女と初めて会ったのは、20年ぐらい前。

今だと本当によくやっていたよな、と思う習い事の数々の中で比較的長いこと続けていた英会話教室。ここは高校を卒業するぐらいまで通っていた。まだ、入りたての頃は毎回先生と生徒のメンバーがコロコロ変わって、外国人の先生一人に対して5~6人ぐらいの授業。英語しか喋っちゃいけません!みたいなルールも10分に一回は破られるような環境の中で風船を行き交わしながら英単語を叫び授業が終わって行く。そんな授業の一つの中で初めて会った。大分昔のことだけど、この時のことは鮮明に覚えている。彼女は皆が風船をプカプカしているのを横目に折り紙で兜を作っていた。周りの子達より身体が割と大きく、チビだった私は大人っぽい子だな、と思っていた。そして、なんで折り紙を今折っているんだろう、と。

皆がまだ風船をプカプカと行き交わしている中、

「ねえ、これあげる。」

黄色い小花模様の折り紙で折った小さい兜を私にくれた。これは一応授業中の話。ニコニコと嬉しそうに私が手に取るのを待っていた。

「ありがとう。」

兜を開くと中に名前と電話番号が書いてあった。・・・え?

初めての出会いはまるで街中でナンパに遭うような出会い。この後、この英会話教室で彼女に会うことはなかった。

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