Pre-PGP 2022 Final 作問後記

Pre-PGP 2022 Final に作問その他で関わらせていただきました。エクストラ的な回ですので実を言うとやるかどうかも怪しかったのですが、いろいろ頑張ってなんとか開催することができました。過去ラウンドから一問ずつパズルを選んでの出題ということで、作者としては自由度が上がる半面、では何をしたものかと悩むことも多かったです。また、主に問題数が少なめだからという理由ですが、気持ち一問一問が難しめ(というか易問枠があまりない)というセットにしています。

Slitherlink

今回は「せっかくのFinalなのでそれらしいものを」ということも考えつつ作問をしていました。スリリンは頻出ではあるのですが、pPGPだと目新しいパズルが難問枠になりやすい都合上副菜的な立ち位置になりやすいパズルだったので、Finalという場でメインに持っていこうと考えてのチョイスです。3桁配点はpPGPでは今回初のはず。
ちなみにpPGP2021FinalにもWolfs&Sheepバリアントでの出題があったので、ちょっと被ったなと後から思いました。とはいえそちらも軽め枠なのでコンセプトとしては崩れないかなというところ。そもそも、ループパズルはド定番枠となるとましゅ/スリリン/ヤジリンの3強(たぶん)になってしまうという事情もあります(ましゅは2020で出しており、ヤジリンはみんな既に解きまくってるという勝手な偏見があるので難問枠として置く意義は低いかなと…)。
そういうわけでコンセプトはすぐ固まりましたが、いつもの「正統派難問ループパズル作れない問題」に突き当たります。気を抜いて作っていたら間違いなく内外!バシーン!みたいな問題になっていたのですが、それだと知識みたいになってしまうので今回は封印。自分でもGPやパズスクの問題を解きまくって理解を深めつつ、高難度スリリンらしい細かい議論を狙いに行きました。最終的にひねり出した"見えない2"は難しいことはもちろん、試行錯誤の仮定であれっと気付けそうな点で出題にちょうどいいかなと考えました。ちなみに解き修行ではPGPの理詰めに気付いたりと手応えがあってなかなか有意義な経験になりました。スリリンは元々苦手と割り切ってはいますが、プレーオフで爆死したわけですし克服できるに越したことはないですよね。
問題盤面を見ていただければわかるのですが、点対称配置を途中までやろうとして結局諦めたというなんとも中途半端な見た目となってしまっています。確定してほしい線は決めないくせに余分な情報で右上を破壊してしまうR3C10が悪い。今回はコンテスト問題ということでやむなく見栄えを捨て実利を取りました(そもそも作問力があればこういう風にはならないはずなのですが…)。対称を気にしなくなった中央付近では空白が広めになっていますね。ちなみに、想定ルートは左下からなのですが、右上の下図の部分でギミック発動に必要な要件がピンポイントで確定するため、そちらから解くこともできます。後はユニークネスも使えそうな雰囲気はありますが、そこまでは気を回す余裕がありませんでした。

Letter Weights

こちらもSlitherlinkと同様、Finalだからちょっと重くできる枠として選びました(ぶっちゃけて言うと、今回みたいに「100点台に狙いを定めて作りたい」というときにかなり難易度をコントロールしやすいという理由も大きいです)。Letter Weightsはそこそこ作るのも解くのも好きなのですが、特に初~中級者が解きにくいパズルであるようで、pPGPでの出題時は難易度をかなり控えめにしています。今回は使用数字=使用可能文字数を増やしての制作ということで、単語選びにも幅が出せて楽しい作問でした。
パズルとしてはカッチリ理詰めで決まるようにしています。文字数が多くなってくると試行錯誤の負担がかなり大きくなってしまうし、そもそも理詰めルートを探す労力自体で十分難易度が確保できるという考えからです。
前述のとおりpPGPのターゲット層には解きにくいかなと気持ち上げ気味の配点にしていたのですが、結果を見るときっちり取ってきているようにも見えます。認識を改めてもいいかもしれませんね。

L-Words

pPGP Finalの「今年のPGPで出たパズル名リストでワードパズル」枠です。といっても元々枠として定番化するつもりはそんなになく、PGPの8ラウンドそれぞれの担当国名をリストにするとかも考えたのですが、UKを2単語に分けてリストにするかとかが面倒だったのでこのような形になりました。その後パズルを組むことも考えるとリストには遊びがあったほうがいいですしね。ちなみにR1~8から一種ずつのチョイスです。
領域分割とワードの複合ではあるのですが、今回はその2パートが完全に分かれている作りでした。本当は多少相互作用があるようなものを作ってみたかったのですが、自分だといいアイデアが浮かばず…。妥協ではありますが難易度的にもまあ無難な判断ではあったと思います(融合路線だと本家PGPの1問目が単語リストをコンパクトにすることで上手いことコントロールしており見事でした)。ただ、さしがねがすぐ終わるから実質にょろワと見てしまうと結局2021 Finalとの被りではと後から気付いてちょっと凹みました。
なお、パズル種選択の時点からpPGP R4での出題が超難問だったのでバランス取って穏当なものをという意識もありました。白丸をあらかじめ全表出にしておくとかですね。

Araf (Anti)

ここは最後まで何を作るか悩みました。最終的な選出理由としては、私がAraf好きだから、セットで他に領域分割がそんなにないから、そしてpPGP R7では非常にスマートにまとまった問題だったので傾向を変えてもっさり&重ためにするのもよいかなと思ったからですね。最後がなかったらこのトンチキバリアントじゃなくてクラシックにしていたと思います。
自分で作っておいてトンチキと言ってしまっていますが、実際非常に作りにくいルールです。ほとんどの場合3個数字があればどれかはペアにできてしまうので、通常のArafのようにスルスルと領域を伸ばすということが非常に困難です。そのため、数字配置によって図形的制約をかけることがより重要になります。今回は左上で十字配置によって大領域を作る→できた壁で中央を操作と進めています。最後の右下は多少数字に目立ちがありますが、広めの空白を比較的マス数寄りで詰められたのではないかと思います。そういえば、作問時に地味に悩ましいのが情報を持たない数字マスに何を置くかですね。いっそ"?"を導入してもいいかも…。

今回はFinalという気負い…というか狙いたい難易度帯の関係もあってそれなりに苦労した作問でした。途中でStatue ParkやArukone (Filled, CrossCount)、No Four in A Row (Overlapping)なども触ったのですが難易度を外れてしまったりしっくりこなかったりで没にしています。このうちStatue Parkは問題としてはよくできたと思ったのでパズスクに上げました。

これは過去出題されたStatue Parkとの味の違いを出すためにリストから変えてみようとしたものの、まともな解き筋を思いつかず変なことになってしまったやつです。ちなみに上げる前にゆずっこさんにチェックいただいてなければ危うく複数解で出してしまうところでした。

さすがにいかんいかんと思って作り直したのがこれ。Statue Parkの発想としてはオーソドックスでpPGPで取り上げる価値もあるかなと考えての作問でしたが、完成後冷静に見返すとアカンな…となって没にしました。

少し脱線してしまいましたが、残り半分はにしなんとかさんに担当していただいた問題です。にしなんとかさんがいなければそもそも運営できていないので、ご協力いただき非常に助かりました。

3. Suguru: 結構慣れのいるパズルというか、私自身不慣れでPGPとかだと配点以上に時間をかけてしまうパズルです。今回の問題はそうした上級問題への入門にちょうどよかったのではないでしょうか。

5. Twopa: 綺麗に作られていて良いですね。詰めに技が光ります。

8. Skyscrapers (Cipher): ラテン系も敷居の高さからpPGPでは難問や大きめサイズが出題しにくいパズルなので、Finalに欲しいと思っていました。にしなんとかさんが作っていなければ多分私がSkyscrapersかEasy Asあたりをチョイスしていたでしょう。

Finalを無事年内に開催できたことで、いい感じに今年を締められたと思います。Pre-PGPは来年度も継続して関わっていければと考えていますので、よろしくお願いいたします。また、本家PGPも来年1月下旬からシーズンが始まる(と思われる)ので、興味のある方はぜひそちらにもチャレンジしてみてください。

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