実は、日本でもまったく同じ意匠が他人により不正に出されているって、ご存知ですか?
今回は、日本のある登録意匠で、あり得ないことが起こっていたので、ここでばらします。
海外で前に既に出された意匠とまったく同じ意匠を、後日、他人が日本で出したケースです。
先ず、
これは、日本の登録意匠です。
日本の登録意匠で、こんな感じのアロマディフューザー。
出願日:2020/07/20
登録日:2021/01/06
権利者:A氏
このデザインが、日本で実体審査を受けて、登録になりました。
それでは、これは本当にオリジナルのA氏が考案したデザインでしょうか?
次に、アメリカの意匠です。
アメリカの登録意匠で、こんな感じのアロマディフューザー。
出願日:2019/03/19
登録日:2021/02/23
権利者:B氏
このデザインが、アメリカで実体審査を受けて、登録になりました。
日本の意匠とまったく同じで、
出願日は、日本意匠より1年半も前になります。
ただし、公開(登録日)されたのが日本意匠の出願日の後なので、これにより日本意匠が無効されることはないです。
それでは、これは本当にオリジナルのB氏が考案したデザインでしょうか?
因みに、A氏とB氏は、名前からみれば、まったく関係のない別々の個人みたいです。
最後に、中国の意匠をみましょう。
中国の登録意匠で、こんな感じのアロマディフューザー。
出願日:2017/05/10
登録日:2017/12/26
権利者:C社
日本とアメリカの意匠とまったく同じで、
出願日は、日本意匠より2年超前、アメリカ意匠より1年弱前になります。
公開(登録日)されたのも、日本意匠/アメリカ意匠の出願日より前なので、これで、日本意匠もアメリカ意匠も無効される可能性が高いと思います。
こちらの権利者は、中国の会社でして、その創作者の名前をみても、A氏とB氏ではありませんでした。
日本とアメリカは、両方とも意匠については実体審査を行いますが、ご覧のように、日本とアメリカの意匠審査官は、中国ローカル文献を把握されていません。
これが現実です。今現在、現実社会で、こんなことが起こっています。
中国の意匠出願件数がどれだけ凄まじいかは、以下の記事で書いてあります。
意匠の場合、日本人は日本で年間3万件ぐらいしか出しません。
それに比べ、中国人は中国で年間70万件も出しています。
しかも、日本の関連意匠みたいなものを、中国では最大10パターンまでの設計変更を1つの意匠出願に入れることができるので、日本的な感覚で言うと、中国の意匠出願件数は700万件ぐらいにもなり得ます。
このように、中国で出されている意匠は、全世界の半分以上です。
その中には、確かに価値が低いコピー品もあると思いますが、このように、他の国よりもっとも先に出された意匠もあります。
我々は、今現在、日本で意匠出願を2番目に多くやっている事務所です。
意匠ウォッチサイトの最新統計。
幸いなことに、今回事例で挙げた不正な日本意匠出願は、我々の代理した案件ではありませんでした。
ここまで多くの意匠を代理すると、不正な意匠出願案件も受けるのではないか、本当に怖いです。
まとめ
・訴えられたら、その権利が大元ではないかも、と疑うべき!
・他国に既に存在するものを日本に持ってきて出す人って結構いる!
・出願日が最近ですと、中国ローカル文献の中から無効資料を調べることを超オススメ!
最後に言いたいのは、
日本で、特許法においては異議申立制度と無効審判制度が並存しているのに対し、意匠法においては、意匠権の有効性を争う制度として、無効審判制度しかありません。
日本の意匠は、登録になって始めて公開されるので、情報提供もできません。
こんな感じで不正に意匠権を取った悪質業者が、それをもって権利行使したら、被害が非常に大きいです。
なので、日本でも是非、意匠の公開制度を取り入れ、登録前に情報提供できるようにしてほしいことと、登録後には、特許と同じく異議申立ができるようにしてほしいです!
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