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27.スラムダンク創作山王でわちゃわちゃする話(深津一成)


主人公佐藤アキちゃん、山王工高出身、大手雑誌編集部で働いている。


沢北:アキの幼なじみ 山王工高出身 アメリカ在住


深津:東京のプロチーム所属 沢北の先輩 山王工高出身 

南:大阪のプロチーム所属 豊玉高校出身
岸本: 大阪のプロチーム所属 豊玉高校出身

リョーコ:深津の幼馴染 東京プロチームのマネージャー


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※成人指定※

※直接的な表現ありなので、苦手な人はご遠慮ください


完全自己満、結構大人な内容ですので苦手な方はご遠慮ください。あまりバスケに触れず健全な男女として書いてます。誤字脱字あり。すみません。前回の続きです。


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山王1年の夏。
虚な目で体育館横の階段で座り込む。

刈りたての頭も、
怒号が飛んでくる練習も
全てが気に食わなかった。
周りにじゃなく、自分自身に。

合宿練習を逃げ出した時、3年間ついていけるのかと自問自答した。

とにかく苛立っていた。

幸い、感情を出すのが苦手なので
そんな性格が功を奏した。
愚痴をこぼしあう馴れ合いがくだらなくて
その輪に入らなくて済む。
かなり感じは悪かったと思うし、単純に尖っていた。

タオルを頭に被せて短い休憩時間をやり過ごす。
自信はもうなかった。
何が優れていたのかも見失った。

ただ、練習用のボールをながめる。
無意識に壁に投げた。
結構な力が入ってたんだと思う。
なかなかの音がして、どこかへ飛んでいく。
気だるく拾いにいこうと立ち上がると
知らない制服の女の子が、しゃがみ込んでいた。

見られてた、な。
と思ったのと同時に、自分のボールを持って立ち上がる様子が目に移る。
肩からずり落ちてる学生バックと、中身が溢れたペットボトルが体育館横の砂利に転がるのを見て
自分のボールが当たったんだ。と理解する。

静かに近寄る。
こちらを見つめる女の子を見下ろす。

「それ‥俺のボール、ベシ。」 

睨んでくるだろうな。という予想に反して、その子は笑顔になった。

「あ、どうぞ。」
小走りで駆け寄ってくる。
近くで見ると、ペットボトルの中身をかぶったようで、セーラー服が濡れていた。
チラッと目線を映すと膝も擦りむいている。

俺のせい…だよな。と思いながらボールを受け取る。
見慣れない制服とネームプレートを見て、高校見学に来た中学生だと気づいた。

「さっき、練習見てました。」
「え?」 
そんな事言われると思ってなくて面食らう。

「私、幼馴染がバスケやってて、それで‥興味あって練習見てたんです。」
「はぁ…」

正直、幼馴染以外の女の子と話した事なくて、気の利いたリアクションができない。

「もしかして…キャプテンですか?」

そんなわけない。と思いながら、
ついカッコつけたくなって、頷く。

どうせもう会わないだろう。

不思議そうな顔をしてる自分を見て、その子が続ける。

「パス、すごいなって思って。手とか目たくさんついてるみたい。クルクルーってパスするやつとか。」

その子がふにゃっと笑いながら手を自分の体に回す。
ビハインドパスの事かな…?と思いながら
上手く答えられない。
多分そんな事ないとか、言った気がする。

「みんなの事、凄い見てるからキャプテンだと思いました。」

真っ直ぐそう言われて、なんだか嬉しくなる。
幼馴染には、シューターになれって言われるけど…

確かに、自分は周りを見るのが得意な方かもしれない。と気づく。

自分より、この子の方が俺を見てるな。と感じた。

「ちょっと待ってるべし」
小走りで自分が座っていた場所に戻る。
その子はキョトンとしてて、戻ってくる自分を見つめる。

「これ、使ってないタオル…。使うべし。」
ぶっきらぼうに渡す。
これじゃ感じ悪いな。と思いながら上手くできない。

「ありがとうございます。」
またまた、想像してない笑顔でその子は受け取った。
「優しいですね。」
いや‥俺のせいでそうなってるし。と思いながら
体を拭くのを見守る。

「深津!」
体育館から、先輩が呼ぶ声が聞こえる。
「あ‥俺、練習。」
そう言って、手を上げる。
「はい!頑張ってください。」

そう言われて、単純だけど頑張ろうって思った。
チラッと名札をみる。
体育館に戻りながら「佐藤アキちゃんか。」
と頭においたタオルを取りながら小走りで戻る。

沢北の部屋に急に来た女の子。
幼馴染って、沢北の事か。
と思ったのと同時に、
本当にキャプテンになってから
もう一回顔を合わせられた事に嬉しく思った。

同じ高校にいた事は知らなかったけど
名前はずっと覚えてた。

沢北の幼馴染としてじゃなくて、
自分にアドバイスをくれた佐藤アキちゃんとして。

君は俺のことを好きだって沢北が言うから
あの夏の日、ボールがぶつかったのが、
君でよかったと思った。

ある日の体育の時、
たまたま体育館が一緒で、
アキちゃんがボールにぶつかって怪我をした。

あの日を思い出して、そういえば謝ってなかった。と気づいた。

だから、何かしてあげたくなって
後をついて保健室に行ったんだ。

予想してなかったけど、「もっと話したい」って君に言われて何かが始まる気がした。
すごい、嬉しかったんだ。

君はもう忘れてるよね。

いつか、機会があったら
あの時の話をしたいよ。

今なら、上手く話せる気がする。




疲れた体を引きずりながら
成田空港から乗ってきたシャトルバスから降りる。
そのまま東京駅を歩く。

まだ、アメリカに行ったことも信じられない位。
あっという間の10日間だった。
帰ってきたんだ現実に。
そう思った。

すっかり辺りが暗くなっていたけど
なんとなくまだ、家に帰りたくない。

「東京駅って、
確かロケ地だったな。」
自分が降り立った八重洲口とは反対側に足が向かう。
高校生の時に大好きだった、Netflixのドラマ。
主人公が恋人と再会するシーンが大好きだった。
高校生の時には見れなかったラストシーン。
社会人になってから、何回も見た。

丸の内の方…?なんだ。とあまり来ないので観光気分で足を進める。

「うわー。綺麗。」
東京駅前広場にくると、中央広場でたくさんの人が写真を撮っていた。
こんなに綺麗だと思わなかった。

ライトアップもされてるんだ。と写真に写したくなる。
ウエディングフォトをとってる人もいて
自分の薬指にまだ、はまったままの指輪を思い出した。

広場の前は、幅広い道がずっと続いていて
行幸通りと書いてあった。
ここ、皇居に続いてるんだ。と何となく引き寄せられるように近づく。

確かこの辺りがドラマのシーンだったな。と思い立ち止まる。

皇居の方から、ランニングしてくる人達がいて
その人達も足を止めて広場の綺麗さに見惚れていた。

1人、トレーニングウェアを着た人がこちらに歩いてきながら同じ場所に見惚れている。
少しおぼつかない足取りで、歩みを緩める。

被っていたフードをとった時
その顔を見て驚く。

周りを見ていた視線が、前に立ち止まっている私に焦点が合っていく。

「深津先輩…」

思わず名前を呼んだ。
どうして会っちゃうんだろう。
こんなタイミングで。
私が好きな歩き方で、表情で、近づいてくる。

深津先輩は目を見開きながら
私の前で立ち止まった。
虚な目だった。
初めて会った時と同じ。
すっかり穏やかになっていた表情から
一変していて、少し心配になる。
少し沈黙する。

深津先輩が何かを言ったけど、走ってきたからか息が上がっていて聞き取れない。
「え?」
聞き返す私。

「…嘘ついてたぴょん」
呼吸で肩が上下する深津先輩。

「あの時……
まだキャプテンじゃなかった。」

てっきり、嫌な話だと思っていた言葉の続きは意外はものだった。
半信半疑で聞く。
もしかして。と
昔の記憶を呼び起こす。
一度腰に手をあてて、下を向いたあと
呼吸を整える深津先輩。

「アキちゃんと…初めて会った時」

そう言って虚な目で私を見下ろす。
覚えてたんだ。初めて会った時の事。

心が掻き乱される。
どうして。深津先輩って、こんなに喜ばせて傷つけるんだろう。
深津先輩が口を手で抑える。
なんだか、様子がおかしい。
そのまま膝をついて倒れた。

「深津先輩!!」
キャリーを置いて、倒れた深津先輩に駆け寄る。
慌てて携帯を探す。
バスの中で充電が切れてしまっていたことに気づく。
倒れた拍子にポケットから出た深津先輩の携帯を慌てて拾う。
幸いロックがかかってなくて、電話のマークを震える手で開く。

発信履歴に残る、私の名前がびっしり並んでいて手が止まる。
涙が出そうになるのを抑えて
人生で初めて119にダイヤルする。




「運動しすぎたのかもしれないですね。一時的に脳の血流が低下することによる症状ですよ。」

私がそれを聞いても死にそうな顔をしているからか、中年の男性医師が言葉を変える。

「一通り検査したので、大丈夫ですよ。」

そう聞いて、息をやっと吐き出す。
「よかった…。」

まだ手が震えてる。
怖かった。

「目が覚めると思いますので、それまで一緒にいますか?」
私の様子を見て、医師が慣れた様子で病室に案内する。
夜の緊急外来なので、カーテンで仕切られただけの小さな部屋だった。

点滴をされていて、心配になる。
「少し脱水だったので、点滴しました。」
それだけ言って、病室を後にする先生。
その素っ気ない対応が逆に私を安心させた。
大丈夫だってことだよね。

顔色が悪い深津先輩を初めて見た。

もう…顔見れないと思ってた自分がいて
変な気持ちになる。
走ってたから、あそこにいたのかな…?
と考える。私の家と近いはずだよね?
だいぶ走ってきたのかな?と考えながら、
目覚めないのが心配でアタフタする。

近くにある丸椅子を運んでくる。
うるさいキャスターの音が耳障りだ。
深津先輩の顔に手を伸ばす。

「…アキちゃん?」

顔を触る前に声が聞こえて、私の手を握る深津先輩。

「深津先輩、わかる?病院だよ。」
声が裏返る。目が覚めて嬉しいのと、心配で上手く話せない。

「…気持ち悪いぴょん。」

なんか、まだ少し朦朧としてる…?
「走ってたら、急に真っ暗になったぴょん。」

「…深津先輩、倒れたんだよ。」
それを聞いてもっと具合悪そうにする深津先輩。

「……アキちゃんの前で?」
信じられないという顔をする。
頷く私を見て、今まで見たことない嫌な顔をする。
「俺、ダサいぴょん。」
具合が悪そうにため息をつく。
私の手を握ったまま、もう片方の手の甲を自分の目の上に置いた。

「どのくらい走ってたの…?」
「…‥…10日間、練習終わったらずっと吐くまで走ってた。」

それを聞いて、なんで。と言った私に
「走らないと、ダメだった。」と小さい声でいう。

手の甲をずらして、握っている私の左手を見つめる深津先輩。

しばらく硬直しているので、心配になる。

深津先輩が握っていた手を離して、また手の甲で顔を隠して私に背中を向けた。

「アキちゃん…もう大丈夫ぴょん」
「え…でも。」と言う私を遮るように
「こんな姿見られたくないぴょん」
と深津先輩が言った。

はっきり拒絶されたのは初めてだったので
何も言えなくなる。

心配になるのと同時に、離された手にはめられている沢北に貰った指輪を思い出す。

「…深津先輩、無理しないでね。」

そうだよね、深津先輩にはリョーコさんがいるし。
なるべく明るく声をかけた。

病室を出る時、後ろ髪がひかれて振り返る。
「お水も飲んでね…。」

病室のカーテンを閉めて、しゃがみこんだ。

やっぱり私達話すべきなんじゃないかな。
問い詰めてみようかな。
そう思って立ち上がる。
カーテンの隙間から
後ろを向いている深津先輩を見て言葉を飲み込んだ。

これでいいのかもしれない。
また、上手くいかないかもしれない。
傷つくかもしれない。

そう思って後ろを向かずに病院を後にした。

独り言のように「さよなら」と言った。



急に意識がはっきりして
ばっとフラフラする体を起こして走り出す。
静止される声も聞こえるけど、
それよりも伝えないといけない言葉が口からでる。
何度も繰り返しながら、君の姿を探す。

頭がくらくらする。
病院の外に出て、周りを見回すけど
アキちゃんの姿はない。

両手で頭を抱えたまましゃがみ込む。

急に嗚咽がして
気づいたら涙がでた。

アキちゃんのことは何にも上手くできない。
自分が嫌になる。

左手の薬指にはめていた指輪が頭から離れない。

独り言のように「アキちゃん、会いたい。」と言った。
しゃがみ込んで口を両手で覆って肩を震わせて泣いた。



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