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先輩をくすぐる魅力に目覚めてしまう負けず嫌いな秀才少女の話

前回のお話:


【第三話】

私立笑来学園の理科準備室で、私、箕咲まりなは決断を迫られていた。

「ぎゃあああああああはははははははははは!!!!あひゃ!!!あひゃひゃひゃ!!!!むりいいいいいいぃぃぃぃ!!!!」

目の前でパイプ椅子に拘束された和泉先輩が狂ったように笑い叫んでいる。

彼の両足には、特別製の「くすぐり上履き」が履かされており、脱げないように足首と繋がれている。

上履きの中はローションで満たされ、特殊な中敷きの無数の毛によって、足の裏と指の間をノンストップで激しくくすぐられていた。

この責めはつい30分ほど前に私自身が受け、あまりのくすぐったさに気を失ったもので、私には和泉先輩の苦しみがよくわかっている。

「だずげでえええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!くすっ!!!くすぐって!!!!くすぐってくれえええぇぇぇぇぇぇ!!!!」ガタンッガタンッ!

和泉先輩は地獄のようなくすぐったさに椅子をガタガタ揺らして悶えながら、私に「くすぐってくれ」と懇願してくる。

なぜこんなことになっているのか。

全ては理科教師で科学部顧問の佐橋花先生に仕組まれたのだ。

彼女の策略で私たちはそれぞれ理科準備室に呼び出され、鍵をかけられて閉じ込められてしまった。

和泉先輩に至っては、「くすぐり上履き」を履かされたまま。


先ほどの花先生とのやり取りが思い出される――


『ところで和泉くんを足裏くすぐりから解放する方法がひとつだけあるわ』

『あああああひゃひゃひゃひゃ!教えて!!!!ふひひひひひいいい!!!!』

『実はこの上履き、足裏以外の部位に一定のくすぐったい刺激を感じていると、その間はくすぐりが停止する機能がついてるの』

『そ、それってつまり』

『誰かが足裏以外の場所をくすぐってくれれば、足裏のローション責めは一時的にストップするってことよ。それ以外に止める方法はないわ』


そう言い残し、私たちを監禁したまま花先生は職員室へと去ってしまった。

先輩を地獄の足裏責めから解放してあげるには……私が、先輩のことをくすぐるしかない。

私は決断を迫られていた。

「ど、どこでもいいから!!!!くすぐって!!!!足裏より!!!!ローションより、マシだから!!!!!!!頼むっ!!!!」

「それしか、ないんですよね……」

ごくり……。

私はパイプ椅子に拘束された和泉先輩の背後に回り、彼の腋の下に手をかけた。


「……で、では、失礼しますね」

これは不可抗力だ。

私が迷っていれば、その間も和泉先輩はノンストップ足裏責めに苦しみ続けることになる。

先輩とは初対面だけど、目の前で苦しむ姿を見て放ってはおけないし、このくすぐり責めの恐ろしさは私自身よく知っているのだ。

先輩を助けるには仕方のないこと。自分にそう言い聞かせる。


ああ、私は今からこの手で、この人をくすぐるんだ。


どうしてこんなに意識してしまうのか自分でもよくわからない。

私は覚悟を決めて和泉先輩の腋の下に掛けた指を動かした。

こちょこちょ――

「ぎゃああああああああああははははははははははは!!!!ひっひいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」

その途端に、予想以上に大きな笑い声をあげる先輩。

私はびっくりして手を止めてしまった。

「す、すみません! そんなにくすぐったかったですか?」

「あひゃひゃひゃひゃ!!そ、そうじゃ、なくて!!あひゃひゃ!!!」

「え?」

おかしなことに、私がくすぐる手を止めてもなお、先輩は変わらず同じトーンで笑い続けている。

「く、くすぐったいのは!!!!あ、足の、足の裏で……」

「え……」

上履きが止まっていない。

花先生に騙された、という可能性も一瞬考えたけれど、なんとなく和泉先輩の口調から言いたいことが分かってきた。

「……それって、つまり。今の刺激じゃ足りないってことですか?」

「ひゃ、ひゃあああははははは!!!ぎゃははははははは!!!!」コクッコクッ!

上履きの足裏責めに爆笑させられながら、必死で頷く和泉先輩を見て、私の中にある感情が芽生えた。

「ふーん、そうですか」


私は、むっとしていた。

恥ずかしさとか、申し訳なさとかを押し殺して、決死の覚悟でくすぐったのに。

私のくすぐりじゃ刺激が足りなくて「上履き」が止まらない?

たかが「上履き」ごときに、敗けてるってこと?

「じゃあもう、手加減なしでいいですよね」

「ぎゃははは、ぎゃは…………え、え?」

戸惑っている様子の和泉先輩。彼の腋の下に、私は再び手を掛ける。

「リベンジです」

こちょこちょこちょこちょ

さっきより激しく指を動かす。すると――

「ぎゃああああ、は、は、は、あ! 止まった!! 上履きがっ! ふふっ止まった!!」

「本当ですか!? よかった!」

足裏のほかに一定のくすぐったい刺激を感じるという条件をクリアして、上履きのローション責めが一時停止したようだ。

私も先輩もひとまず安堵する。

「そ、そのまま、くすぐりっひひっ続けてくれ」

「わかってます」こちょこちょこちょ

もし私がくすぐるのを止めれば、数秒後にはまた地獄のくすぐりが再開される……花先生が言うには、そういう設定になっているはずだ。

私は引き続き先輩の腋の下に挟んだ手を動かし続ける。

「……ふひっ…………ははっ……」

「……先輩、くすぐったいですか?」

「え? ああ、うん。くすぐったっ……ぃけど、上履きと比べれば……全然っ……マシだよっ」

「そう、ですか」

当初の目的は達成した。

でもこれって、私「上履き」にリベンジできたのかな?

和泉先輩は、確かに定期的に小さな笑い声をあげるものの、ずいぶんと落ち着いた様子だ。

我慢しているのか、それとも私のくすぐりはこの程度の……?

「私は、箕咲まりなよ……」こちょこちょこちょ

「え、名前なら、さっきも……?」

定期テストも、受験も、常に1位を取ってきた。

それは両親に褒められたいとか、お仕置きされたくないとかいう思いもあったけれど、それだけじゃない。

私の中にもやっぱり他人に負けたくないという強い気持ちがあってのことだ。

そう、私は負けず嫌いなのだ。

「先輩が、悪いんですからね?」

「み、箕咲さんどうしたの? くふっ……か、顔が怖いよ?」


「あぁっあの、箕咲さん!? これ、ぐふふっ、気のせいかな?」

「えー? 先輩、どうしたんですか?」こちょこちょこちょこちょ

「ああぁぁっ!! こ、心なしかっ、ゆ、指の動きが、ははっ、は、激しくなって?」

「そんな訳ないじゃないですか。何も変わってませんよ?」こちょこちょこちょこちょこちょ

「そ、そうかなああああははは! で、でも、ほら、明らかに……!!」

明らかに、指の動きが速くなり、くすぐり方が激しくなっている。

もちろんそんなことは私も分かっている。

わざとなんだから。

「私が先輩に対してそんなこと、するわけないじゃないですか」こちょこちょこちょこちょ

そう言いながら、先輩の腋にあてがった10本の指をどんどん激しく、そして左右で不規則な動きに変えていく。

「あああははははははは!!くすぐったいって!あはは、あはははは!」

「わかります。私もさっき上履きにやられた後、思い出すだけでもくすぐったい錯覚がありましたから」こちょこちょこちょ

「いや!!違う!!絶対違う!!!腋がくすぐったいよ!ああああははははは!!!」

「うーん。この程度じゃ、さっきまでと違って普通に喋れるみたいですね。やっぱり激しくするだけじゃ限界があるんですかね……」

この時にはもうすっかり、私の研究癖が発動していた。

実験とイタズラは紙一重だ。

「先輩先輩、今どこがくすぐったいって言いました?」

「わ、腋が……」

先輩がそう言いかけた瞬間に、私はくすぐる手を脇腹を移動させる。

「ええ~?嘘はダメですよ。腋はくすぐったくないでしょ?」くにくにくにくに

「あ、ちがっ今変わってっ脇腹っが! ああはははは!!」ガタッガタッ!

「なるほど、脇腹を責めるとさっきより大きく動く、と……じゃあこっちは」こしょこしょこしょこしょ

「あああっ腰っ! 今度は腰ぃ~~~~~ひゃああああははははは!!」くねくね

「ふふっ先輩面白いですね」

私は先輩の脇腹をくにくに、ぐにぐにと力加減を変えて揉んだり、腰回りにこしょこしょと指を走らせたりを繰り返し、反応の変化を観察した。

ぐにぐにぐに、もみもみもみ……

「あああああああはははははは!!!!ああああははははははは!!!」

こしょこしょこしょ、さわさわさわ……

「あひいいいい!はははははは、ひ、ひひひひひひぃぃぃぃ!!!」

「かなり敏感に反応してくれるようになってきましたね、先輩」

「ちょっも、もう!!!もうやめて!!!あああははははは!!!」

「え! やめちゃっていいんですか? 先輩がどうしてもやめろというなら、やめますけど……」

そう言って、私は先輩をくすぐる手を少しずつ弱める。

「や……やめ……ぐふっ…やめ……」

迷っている様子の和泉先輩。それもそのはずだ。

私がくすぐるのをやめれば、一瞬だけくすぐったさから解放されるものの、数秒後には「上履き」による無慈悲な足裏責めが再開されるだろう。

「…………やめないで、ください」

「合理的な判断力、さすが先輩ですね。尊敬します♪」こちょこちょこちょこちょ

そう言って腰骨の辺りを激しくくすぐる。

「いいいいいひひひひひひひ!!!!!あああああああははははははは!!!!」

そう言えば、花先生はこんな風にやってたな。

ツツーーーー。

「っ………!!………はっ……ぁくっ!」ビクッ!

私は人差し指を先輩の右の腰に突き立て、触れるか触れないかという距離感を保ちながら脇腹、腋へと向かってツーっと這わせてみた。

「あ~先輩ビクッてした! この反応は初めてですね」

今度は左の腰から、立てた人差し指を先輩の身体にさっきより強く押し当てて、同じように下から上へと這わせてみる。

ツツーーーー。

「ふひっ……………あぁぁ………!!」ビクッビクッ!

「そっかそっか、こういうのも効くんですね。楽しくなってきちゃいました」

ツツーーー。ツツツーーーー。

「……ふぁぁぁぁ……ぁぅぅ……」

「先輩、女の子みたいな声が出ちゃってますよ?」

ツツツーーー。ツツツーーーー。

しばらくの間、指を押し当てる力加減や、這わせる速度を変えて遊んでいたが、ふと私の中にある疑問が生じる。

「あの、先輩」

ツツーーーーーーー。

「はひぃぃっ……にゃ、なに?」

「私のくすぐりと、さっきの花先生のくすぐり、どっちがきついですか?」

「そ、そりゃ花先生の方が…………あっ」

反射的にそう答える和泉先輩。


「……へー。そうですか、そうですよねぇ」


私の中で、プツンと何かが切れた。

「違うっ!違うよ!箕さはひゃあああああああああああああ」

私はさっきまでの先輩の反応から弱いと推測されるポイントに絞って、そこを重点的に激しくくすぐった。

「腋はこの窪みをこれくらいの力加減ですよね。脇腹は左側のここ!このツボが反応大きかったはずです!!」こちょこちょこちょ、ぐにぐにぐに!!

「ああああひゃひゃひゃひゃっひっひいいいっひっひっひ、そこはっそこはやばいぃぃぃぃあぁぁぁ腰、腰ダメええええええ!!!!!お腹あああぁぁぁひえええぇぇぇぇぇぇぇ!!」ガタンッガタンッ!!

「ここはどうですか? ここは?」こちょこちょこちょこちょこちょこちょ

「あひいいいいいぃぃぃぃぃぃぃもう、もううう無理!!!!もう花先生よりく、くすぐったいからあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「お世辞はいいです! 花先生を越えるためには、なんとなくくすぐり方を変えるだけじゃダメですね。先輩の弱点をもっとちゃんと把握していかないと」くにくにくに

「真面目な子だあああああああ!!!!ああああああははははははは!!!!!」

「先輩、弱点教えて下さい♪」

「い、言う訳ないだろおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「え~ちゃんと後輩指導してくださいよ! いいです自分で探します」

試しに、首をさわさわと撫でてみる。

「ふわああああぁぁぁぁそ、それやばいいぃぃぃぃぃぃ」

「ふむふむ、首はそれなりにやばい」

耳たぶはどうかな?

「あぁぁっそんなとこまで…くひっ……はぁぁ」

うーん、これはくすぐったいのかな?

両耳に人差し指を入れて中からごしょごしょと刺激してみる。

「あああひぃぃぃぃあひぃぃぃぃ!!」

「私、耳とっても弱いんですよ。あ、聞こえてないか」

どんなにやめて欲しくてもやめろと言えない先輩は、もはや私の成すがままだ。

「上半身はだいたい分かってきました。それじゃ次は……」

これまでパイプ椅子に座る先輩を背後からくすぐっていた私は、新たな弱点を探すべく先輩の正面に回り、床に膝をつく。

「ちょ、何考えて」

「ふふふ、じゃあまずは太ももから……」

「ま、待って! はぅっ……」

ズボンの上から先輩の太ももに5本の指を立てる。

「ひゃぁぁぁ……」

その時だった――


パシャッ

「優等生のスキャンダル、いっただき~♪」

理科準備室の、鍵がかけられていたはずの扉が開けられ、茶色がかった髪をポニーテールにまとめた長身の女子生徒が一人、カメラを片手に立っていた。


4

撮られた。

頭が真っ白になる。

「あなた、箕咲まりなちゃんよね。この前の入学式で新入生総代として挨拶してた子。うちの学園に入試満点で合格した近年稀に見る逸材。壇上に立つあなたの可憐な姿に一瞬で虜にされた学生も多いわ。まさに才色兼備」

私たちが茫然としているところ、ポニーテールの女子生徒はとうとうと語り始めた。

「我が部でも遠からず取材させてもらおうって話になってたんだけど、まさかそれより先にスキャンダルが撮れちゃうなんてね♪」

この人、私のこと知って……我が部……? 取材……?

それより。

「……どうして、扉……?」

「ああ、書面でたれこみがあったのよ。理科準備室で不適切なことが行われている可能性アリってね。準備室の鍵も同封されていたわ」

「鍵……花先生ね……!」

「それは言えないわ。情報提供者を守る義務があるもの」

そう言いながら、先ほど花先生が手にしていたものと同じ鍵をひらひらと振って見せる女子生徒。

それを見た和泉先輩が何かに気づいたように声を上げる。

「あっ、こ、こいつは藤田姉妹の妹だ! 悪名高い新聞部姉妹!」

「先輩、知ってる人なんですか!?」

「あら、悪名高いとはご挨拶ね。たしかに私は新聞部の藤田美希よ。そういうあなたは誰かしら? 我が部の重要人物リストには載ってなかったと思うけど――」

「ぐわあああぁぁぁぁああああああ!!!!!!!ぎゃああああああああははははははははははははは!!!!!!」

「わお」

突然叫びだす和泉先輩を見て、しれっと防音扉を閉める藤田美希と名乗る女子生徒。

うっかりしていた。

どうやら私がくすぐりをやめたせいで、和泉先輩が履かされている「上履き」の足裏責めが再始動してしまったようだ。

「ぎゃひひひぃぃぃぃ!!!あああああぁぁぁぁぁ!!!!ダメ!!!!!ダメだ!!!!!!むりぃぃっぃぃぃぃぃ!!!!!!!ぎゃ~っはっはっはっは!!!!!」

「ちょっと、彼どうしちゃったの? ずいぶん楽しそうだけど」

「これには……今回の事には深い訳があって、お話を聞いてもらえませんか?」

そう言いながら、私は慌てて和泉先輩の首元を片手でくすぐる。

「くひっ……くふふっ……」

「あなた達、いったいどんな関係なのよ……。そうねえ。新聞部としても、こういうネタには興味あるけど」

「それじゃあ!」

「いいわ。私としては、この写真で今日の下校時刻に合わせて号外を流すつもりよ。でも18時までに私たちの部室に来たら……話くらい聞いてあげる」

「え、話ならここで……!」

「それはダメ。18時までに部室に来なければ、今の話はナシよ。じゃ、今日来るか来ないかはあなたに任せるけど、いずれにしてもまた後で」

ピシャリと言い捨て、あっさり理科準備室を出ていく藤田美希。

18時まで……あと15分しかない。

「……くぅぅ……ふひっ……」

私が新聞部の部室に行くためには、拘束された和泉先輩をここに残していくほかない。

そうなると、誰にもくすぐってもらえない和泉先輩は逃げられない「上履き」のくすぐりを受け続けることになる。

「はぅ……ぃ、行って」

「え?」

「行ってくれ……僕は……ぁぅ、大丈夫だから」

私の指から送り込まれる首への刺激に耐えながら、覚悟を決めた様子の和泉先輩が私を新聞部に行くよう促す。

「で、でも……そしたら上履きが……」

「くすぐったいのは、今だけだけど……このまま新聞を刷られたら……明日からの学園生活が、終わる!」

先輩の覚悟が本物だと、私にははっきりと伝わった。

「……わかりました。先輩」

私は恐る恐る先輩の首をくすぐる手を止める。

「できるだけ早く戻ってきますから! どうか、無事でいてください!」

そう言い残して、私はすぐさま素足にスリッパで駈け出した。


5

「ここが……新聞部……!」

ガラガラガラッ

「あの!」

「ようこそいらっしゃいましたわ。箕咲まりなさん」

私を待ち構えていたのは先ほどの新聞部員、藤田美希……によく似た女子生徒だった。

顔は瓜二つだが、髪型が違う。藤田美希が活発そうなポニーテールだったのに対して、いま私の目の前にいる女性はいかにもお嬢様といった感じの縦ロール。

口調もなんとなく大人びた雰囲気で、私も幾分トーンダウンしてしまう。

「……あの、さっきの写真」

「ああ、それでしたら」

「見なさい。もう記事のサンプルが出来てるわよ」

部室の奥から不意に現れた藤田美希の手には、パイプ椅子に拘束された和泉先輩と、その正面に膝をついて彼の太ももに両手を這わせる私……という改めて見るとかなり破廉恥な写真。

それを真ん中にでかでかと掲載し、「”あの”新入生にスキャンダル発覚」「放課後の密室でイケナイ遊戯」などと好き勝手な見出しがつけられた新聞記事が握られていた。

何という仕事の早さ。

客観的に見せられた自分の痴態に思わず赤面してしまう。

「申し遅れましたが、わたくしは藤田真希。この美希の姉で、新聞部の部長を務めている者ですわ。まりなさん、取材はこちらでさせていただくわ。私たちの部室では、誰も、嘘をつくことができないのよ」

私は新聞部姉妹の二人に半ば引きずられるように部室の奥まで連れられて、なんだか高級そうな椅子に腰をかけた。

「ひゃあ!」

私が座ると同時に、姉の藤田真希が背後から突然私の両耳を弄ってきた。

「……ちょっと…ひ、ひぅ……ふぁあ……ゃだ」

「あら敏感なのね。今日は楽しくなりそう」


***


「うふふ。面白くなってきたわね♡」

私立笑来学園の職員室にて、不敵に微笑む理科教師、佐橋花の姿があった。

「負けず嫌い。好奇心旺盛で、疑問が生まれたら解決せずにはいられない。答えを見つけるための試行錯誤を厭わず、すぐさま実行に移す行動力……」

この美人教師、夕方になると何やらぶつぶつと独り言を呟き始める、と若干同僚から変人扱いされていることには気づいていない。

「それでいて、本人もとっても敏感な身体の持ち主。いいわぁ♡ 私が見込んだ通りよ、まりなちゃん」

佐橋花は嬉々として、次なる仕掛けの準備を始めるのだった。


(続きます!!)

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