狂った漫画とダンスってくれないか―『Retry〜再び最強の神仙へ〜』トンチキ感想その①―

変な漫画を紹介したい。

無料漫画アプリ「ピッコマ」で連載中のアクション漫画『Retry〜再び最強の神仙へ〜』である。

この漫画は、やばい。

無理して簡潔に説明するなら、「余りに絵も内容もツッコミ所が多すぎて逆にギャグ漫画として切れ味が良くなりすぎた武侠+転生モノ」であろうか。

あらすじをピッコマから引用しよう。

啓友は30歳の時に現代の地球を離れ、修仙界に行き、仙界へとたどり着くための修練をしていた。 生まれつき才があったため期待されていたが、心魔にとらわれ死んでしまう。 だが気がつくと大学入学前の自分に戻っていた!これは天から与えられたチャンス! 今度こそ最強を目指す!

この文章を読んでアナタはどんな印象を受けただろうか。こう、所謂なろう系っぽい漫画かな? という感じの大雑把な予想をもった人が多いことであろう。で、実のところその認識で問題は無い。我々常人の予想を400%ほど上回るトンチキっぷりであることを除けば

まず主人公の啓友……真田啓友であるが、コイツの言動や価値観がぶっ壊れている。彼の行動はいたって単純だ。

①再び最強の仙人を目指す(全ての前提)

②そのために今の段階から仙人の修行をし直す(これは人命よりも優先される)

③修行のために必要な環境や素材を徹底して用意する(これらの邪魔になる存在は基本実力で排除ないし殺害する)

④ついでに最初の人生の心残り(主にかつて自分や家族の邪魔をした人間のことを指す)を精算する(仙人パワーでよくて尊厳破壊、悪ければ殺害)

()の内容を読めば分かるが、彼はこれらの目的を達するためなら他者の命を奪うことすら一切何も躊躇うことが無い。ギャフンと言わせる程度で済むのならそれは奇跡とでも呼ぶべき慈悲であり、両足を破壊させて許すのでさえまだ有情、おとなしく負けを認めた相手を容赦なく追い打ちして殺す光景だってそのうち見慣れたものになる、それが真田啓友、通称真田先生なのだ。一度最強の仙人になりかけた彼にとっては地球という星でさえも取るに足らないモノに見えている(本人談)。そんな彼のことだから人の命を重く扱う訳もなく、当然の成り行きとして死体の山が積み上がるのだ。

このような猟奇的な行動に走る真田先生を支える価値観がある。それは、

「圧倒的な力こそが全てを解決する」である。

「運命は変えられないものなんかじゃない! 俺に必要なのは絶対的な力だけだ」(第55話より)

こんな小学生でもやべーと分かる思想を、彼はこの世の真実であると確信している。そしてその思想のままに己が道を血で染めつつ驀進していくのだ。立ち塞がる存在には力、力、とにかく力を見せつけるか直接叩きつける。直接叩きつけられた奴らは当然大抵死ぬのだが、問題は見せつけられた方である。対立した結果ギャフンと言わされる奴はこの際どうでもいい。注目すべきはそれを見守る傍観者の方だ。

みんな真田先生が大好きになっちゃうのである

とにかくどいつもこいつもみんな真田先生に憧れるか見惚れてしまう。神だのスーパーマンだの自分もああなりたいだのと言って羨望の眼差しを向け始める。それが例え真田先生が情け容赦ない殺戮を繰り広げた直後であってもだ。

どうやらこの漫画、真田先生の価値観は彼個人のみならず地球人類全体に普遍の感性であるらしい。

圧倒的な力は人間の倫理感と感性さえ覆す、それがこのトンチキ漫画『Retry〜再び最強の神仙へ〜』なのだ。

主人公のヤバさに重点をおいて解説したが、それ以外も様々な要素がものの見事に悉くトンチキなのも見逃せない。そもそも絵がなんか変だ。単に下手というよりかは、「そこでそんな描き方をするか?」みたいな謎の構図が次々出てくる。謎過ぎて味がある。きっとアナタもやみつきになる、そういう類いのアレさ加減に満ちた絵が延々先述したトンチキストーリーと共に襲ってくるのだ。まず耐えられない。

言葉遣いもどことなくおかしい。それもその筈、この漫画中国→韓国→日本と二カ国を経由して翻訳されているのだ。二度の翻訳を経た結果、登場人物は微妙に変な言葉を発し、謎のトートロジー注釈が飛び交う。漫画のコマさえアプリ用に元の構造から分解・再構成されているから、どのコマを見ても違和感がないということがない。酩酊状態で漫画をふにゃふにゃ読んでいるような気分を一生味わわされる。腹筋に厳しい。

最後に重要な事実に触れておくが、この漫画、「ピッコマ」において大人気の漫画である。アクションジャンルの漫画では2021/2/3現在2位、全体ランキングでも18位(これでも前日は9位だったのだ)と相当上位に君臨している。果たしてこの漫画、どういう受容のされ方をしているのか。「ピッコマ」にはコメント欄がないため、残念ながらその実態を確認することはできない。できないが……断言しよう。

絶対みんな同じ楽しみ方してるよ、これ。

今回はノリで書いたので雑な感想記事になったが、機会があったらもう少し細かく内容を書いていきたい。とにかくハマればひどい中毒性を発する漫画だ。覚悟を持って、トンチキに付き合って欲しい。ではでは。


続く…

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