呪術廻戦の面白いとこについてひたすら独り言を言うよ(97日目)

・自分が面白いものを書けない時というのは、まず自分が何のどこを面白いと思うのかを明確に把握できていないからじゃないか。

・チェンソーマンの話はこないだしたので今日は呪術廻戦のどこが好きかを考えてみようか。

・でもおれ好きなものを人にすすめるのが死ぬほど下手という悲しい習性があるのよね。なのでここから先はあくまで独り言です。

・2日サボったので2日分くらいの勢いで書きます。

・全開でネタバレします。ご注意ください。

・スタート当初は大してピンと来ず、目に付いたきっかけは七海が出てきたあたりだった記憶がある。
脱サラ呪術師というキャラクターが「呪術師も労働もクソ」と語るところに、くたびれたサラリーマンとしては反射的にグッときた感あり。
世界はクソだがやるかやめるかと問われればやる方を取る、っていう諦めが一周したキャラとても好き。
でもこういう人わりと死亡フラグ立ちがち。
自分と何らかの共通点があるキャラクターに人はどうしても目がいってしまうのかなやっぱり。

・その彼が初登場するのがまたよりによって吉野順平のエピソードという、世界や人間の美しさを垣間見せた上でこちらの心をへし折りにかかってくるやつ、というのはやっぱり計算尽くなのかなー。だろうなー。
世界はクソであるが戦わねばならない、と揺さぶりをかけられるときに悠仁と共闘したのが七海でよかったんだなあ、と今となっては思うのだった。
たぶんこれ最強すぎる五条先生ではケアできない領域。
というのがよーくわかったのが先週月曜のジャンプに載った夏油闇落ち過去回なわけですが。
七海がああいう戦いを経ていったん呪術師を辞めた、というのが今になって改めて強い説得力を持つよね……。
あと彼の五条に対する「信用してるし信頼してるが尊敬してない」というちょっとギャグっぽかったセリフに、わりとツラめの背景が塗り足されたよね……。

・この吉野回あたりをきっかけに世間的にも呪術廻戦の人気が一段上がったような記憶がある。
「もしも」の回の扉絵とか、作者の野郎ほんとやりやがった、と思ったものな……。
これらの一連のエピソードがみんなの心を揺さぶったのは、闇に堕ちかけていた吉野が仲間になって救われるという王道の熱い展開の導線を、悠仁との接点や母のキャラなどあまりに綺麗に整えた上で、その正反対に全力で振り切ったからかなあ。
嫌な予感はしていたけども本当にやるのか、と作者のネジの飛び具合をまざまざと見せつけられた。
面白くするためには主人公に一切の情けをかけてはならぬ、とよく言われるが、本当ですね……。
あの時読者みんなが悠仁と全くシンクロして「ぶっ殺してやる」と思ったことでしょう……。

・このあたりから、キャラみんなのハラが固まっていった感じというか、表にあらわれるキャラとそのバックボーンのバランスや見せ方ががっちり噛み合ってきたのがわかるようになってきた。
例えば禪院姉妹の対決のとことか、ウブなおじさんを姉妹百合に目覚めさせるに足る破壊力でしたよね……。
ある創作講座で「I LOVE YOUを100通りに訳せ」という課題に対して解のひとつに「あんたなんか大っ嫌い」と書いた人がその後脚本家になった、なんて話を以前見たが、このふたりについてはまさにその感じで。
死ぬほど仲悪い姉妹という表面の関係に、共に落ちこぼれ虐げられる中で生き抜いてきた過去を敷き、そこから這い上がる強さとふたりで落ちこぼれたまま生きたいと思う弱さ(&怖がりながら嫌々ついていく健気さと執着)のコントラストを姉妹関係のパラレルでぶち当てるという……。
ブレない心と迷いながらも離れられない心を組み合わせるとヤバいエモさが発生すると学んだ。

・考えてみれば東京校と京都校は対になるキャラがメインでマッチアップされてたなあ。
①悠仁と東堂
共通点:戦闘の天才(パワー型)
相違点:ふだんの人間性がまともか異常か、呪術への習熟度
②伏黒と加茂
共通点:名家に途中から迎えられた養子
相違点:個人と組織の尊重度、家に対する使命感
③真希と真依
共通点:名家の落ちこぼれ
相違点:先を行く者と背を追う者
④パンダとメカ丸
共通点:人外
相違点:ノーマルな人間であることを望むかどうか
マッチメイクは共通点がある相手とだと単なる物理的なバトルに終わらず、各々の価値観の相違点を戦わせるものに変貌する。
そこに第三者の介入をブチ込むことによって、そのマッチアップをそのまま敵同士の共闘にスライドさせるという、これまた美味しいとこ全部盛りの展開。ほんとどうやって週刊ペースで毎回引きを作りながら組み立てられるんだろう……。

・東堂先輩も性格は完全に異常者なのに、戦闘に関しては凄まじくクレバーというギャップがいいし、強いのもその術式というより敵の行動を瞬時に読み取る観察眼と判断力故、というのがまたカッコいいよね。
パワー型を最強に近づけるのは頭脳(バカキャラだった場合それはたいてい"勘"で代替される)。

・前日譚読んだ限りだと夏油のモチベーションがわりと謎というか、いわゆる「悪役っぽい価値観」を当てはめられてるなーって感じだったんだけど、ここしばらくの過去編で完全に補強してきたのヤバいですね……。
菜々子と美々子もそりゃ付いてくわ。
ワンエピソードでキャラの背景に説得力を持たせる手腕がハンパないなあと読むたびに思う。
それはキャラのコアの価値観が形作られた瞬間を描くことができれば成立するのかな?
この上手さの正体はまだ見極められていない。

・というか過去編ってたいていダレがちになるのに今作の場合むしろブーストかかってないかと思う。
作中現在こうなってる、ということがわかってるのを逆手に取って、「……ここからどうやって今に繋がるの? 無理じゃね?」って思わせてきたりしてさ。
それがまず五条対伏黒パパ一回戦。
最強キャラをあそこまでボコボコにしてしまう、というスリルの与え方がすげえ。いやこれさすがに死んだだろとみんな思う。
あと現代キャラを意外なとこで出すとかね。九十九とか菜々子美々子姉妹とか。こいつここでこんなことやってたのか、という見えない関係性のリンクをつなげるサプライズ、というか伏線。

・まだまだ語り足りないが、面白い週刊漫画ってめちゃくちゃ作劇の勉強になりますね。特に長編の組み立て方と引きの作り方。

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