栗嫌いのマロン好き(91日目)

娘が遠足で栗をたくさん拾ってきたのでいま茹でているのだけど、問題はその数20は下らない栗々をいかに消費するかであった。
せっかく愛する娘がうきうきかき集めてきてくれたものなので、なんとかおいしくいただきたいところである。

そのまま食べる。栗ご飯にする。甘露煮にする。いろいろある。
でも正直に言おう。おれはあんまり栗が好きじゃないのだ。
皮が固くてポソポソと粉っぽくてねっとりと甘いタイプの食材、処理も大変だし食べるにもおやつなのかおかずなのか脳が判定に困る感じしませんか。ほかにこういう食材かぼちゃ以外に思いつかないけど。

しかし自分という人間のめんどうくさいところは、栗はあんまり好きじゃないが栗味はとても好きなところである。
モンブランおいしい。我々のお口の恋人として名高いロッテのチョコパイの、現在秋季限定で発売されている「贅沢和栗のモンブラン」超おいしい。
ということでマロンペーストにしてしまうのが一番よいのではないかという結論に傾きつつある。断然栗よりマロンである。

○○はあんまり好きじゃないが○○味は好き、というパターンが自分には結構多い。
他にもトマトは嫌いだがトマトソースは好き、梅干しが苦手だが梅酒や男梅キャンディーは大好き、かぼちゃは嫌いだがかぼちゃプリンはいける、みたいなバリエーションがある。
その食材が持っている味には、食感や匂いや温度、甘味・苦味・酸味・塩味・旨味・辛味のパラメータ、異なる味との相性などの条件がたくさんあって、組み合わせやいじくり方によって受け取り方もまったく変わってくるのが不思議だ。

メロンを特別食べたいと思いはしないがメロンパンはたまに食べたくなる、というのはまた別の嗜好だろうか。
その食材そのものより、その食材の味を真似て作ったまがいものの方が好きだったりする。
メロンパンはメロンパン味としか言い様がないわけだが、いつかメロンパンというパンの実物が失われ、後世の人々が文献の中でメロンパンの存在を発見した時に、どのようなささいな混乱が生じるのかを想像すると、人知れずほくそ笑みたくなってきませんか。

それにしても栗をひたすら茹でている間の、悠久ともいえる時の流れに身を任せていると、食べられないものを食べるように加工する、という料理の原初から始まって、なんでもおいしく食べられるようにあらゆる手段を講じ、自然には存在しない味まで生成してきた人間の欲望と叡智に、なにやら呆れと尊敬の入り交じった感慨が湧き上がってきますね。

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