恩返し(88日目)

・道満晴明『バビロンまでは何光年?』読んだ。道満先生の作品読んだ後っていっつも「ああーーーーーーーおれもこういうの書きてえーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」って思うよね。『ヴォイニッチ・ホテル』読んでも『ニッケルオデオン』読んでもそう思った記憶がある。

・そしてそういうのを実際に書けたためしがない。あんなテクおれにはねえ!

・でもホテルものもいつか書きたいにゃーとかやっぱり思う。というかホテルに限らず、素性の知れないさまざまな人が集まる場を舞台にした群像劇って、誰しも一度は書きたくなるものじゃありませんこと?

・その意味では拙作『まほうびんぼう』もそういう欲求に基づいていた部分があったような気がする。東京の架空の下町のぼろアパートにしみったれた秘密結社があって、少しずつそこのメンバーが増えていくのね。とりあえず会った人みんな勝手にメンバーにしていくモダンチョキチョキズ方式。本人はメンバーだと思っていなくても秘密結社はメンバーにカウントしているのである。

・読んでくれたあなたも秘密結社来夢来人の一員です、とかそれっぽいことを言ってみよう。

・幻の2巻をどうしようか3ヶ月に1回くらい考えては何もせずに終わることをここ何年か繰り返しています。

・書くペースがのんびりしすぎてて刊行がトンだ時、「現金な話で申し訳ないのだけれども、伊藤さんが別の本で売れれば出せるかもしれない」と言われたのですが、売れるどころか別の本が出ていないのであった。担当さんごめんなさい。

・その後別のネタをお蔵入りにして以来ほぼ没交渉だった担当さんと、同人誌作成をきっかけに久々に連絡が取れたのはとても嬉しかった。別に商業出版の世界で成功を収めたいという欲求はもうあまり持っていないんだけど、彼らに何も恩返しができていないというのはずっと申し訳なく思っている。

・創作というのは恩返しであるのかもしれない。いままで読んできたものや、触れてきたもの、接してきた人たちに対する恩返し。それも、直接的に返すのではなく、その先の別の誰かにバトンを手渡すように、受け取った何かを受け継いでいくという類いの。何かを読んで何かを書きたくなる、というのはそういう心の反応なんだろうとも思う。

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