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此岸を生きるものには肉体を継続しなければならない義務がある。

2023年秋。
私が一番恐れていたことだった。

KANAの父,つまり亡くなった次女の夫であり、我々の元義息に彼女ができて、実家を出て三人で暮らしているという。


それを聞いた時、ショックで1週間ほど落ち込んだ。
次女が可哀想で仕方がなかった。

夫と子供の為に一生懸命働き過ぎて亡くなったようなものだったから、たった4年で切りを付けられ、忘れられてしまうのかと思うと胸が締め付けられた。


そして、KANAはどうなるんだろう?

 継母、虐待、非行、家出…
 異母兄弟が出来て僻むかもしれない。

色んなことが頭の中をぐるぐると回る。

私たちとの距離はどうなるんだろう?

 血が繋がっているのに、
 娘の忘れ形見だというのに、
 口を挟むどころか、
 もう会わせてもらえないかも知れない。


そもそもこのnoteを書き始めたのは、娘が忘れ去られて記憶が風化してしまうことが怖かったからだ。

そして「嫁いだ娘を亡くす」という特異な立場から発信したかったからでもある。

どんな親でも子に先立たれると言うのは辛いことだが、結婚して幼い子供がいる娘を亡くした場合、問題はより複雑になる。

私も今どき、「嫁がせた」などとは思っていなかったが、実際に事が起こると何もかもが婚家の主導になった。

葬儀だって、私たちが口出しできることではなかったし、その後の仏壇、墓、孫にいたっては、どうしようもなかった。

血を受け継いだ孫がいる事はありがたい事であり、娘の命は後に繋がってるという事は喜ぶべきことに違いない。

がそこから新たな苦しみが生まれる。
娘は亡くなり、手を合わせる場所もなく、孫も持っていかれる。
二倍の喪失感を味わった。

私はそれを書きたかった。
同じような立場で苦しむ人の光となればと。


この4年間、辛いことがあっても何度も気持ちを立て直して、笑顔に変えてやってきたつもりだ。

なのに、また打ちのめされる。



もちろん、私は彼に生涯独身でいて欲しいと思ってた訳ではない。
同じく33歳で妻に死に別れたのだから、寂しく不自由であるだろう。

KANAにしても、ずっと父子家庭でいるよりママと呼べる人が欲しいだろう。

だが、見殺しとまでは言い過ぎだが、娘婿はもう少し何とかしてくれなかったのかと思わない節もない。

夫が何度も失業を繰り返した上にマネーリテラシーの欠如で、一家は経済的に困ってたので,娘は働かざるを得なかった。

KANAを保育園に送り迎えしながら、大阪まで片道1時間の電車通勤をした。
それも限界だと言うので、10年近く勤めた会社を辞めて地元で就職した。

が、小さい子がいるので中々いい仕事にありつけない。
ブラックベンチャーや悪どい派遣会社を転々とし、メンタルもやられていた。

でも辞めれば即保育園に行く資格が無くなる。
絵に描いたような負のスパイラルだった。

そんな妻の事を積極的に助けるのでもなく、娘婿はノホホンとスマホばかり触っていた。
浮気とまではいかないが、女の子のいるサイトなどを追いかけていたようだ。

前からよく頭が痛いと言ってたらしいのに、頑張りすぎる妻に病院へ行けとも言わなかった(気に留めてなかった)と後で分かった。

私たちは見かねて、実家の近くに越して来て、保育園の送迎を含めて面倒を見ることを提案した。

だが,元々頑張り屋で独立心の高い娘は結局、夫と一緒にいる事を選択した。

KANAもパパが大好きだったから、亡くなった後もそこは感情移入しないようにして来た。
娘の代わりにと娘婿と孫を大切に扱ってきたつもりだ。

なのに…
と思うと切なくなる。

そうするうちに、ある考えが浮かび上がってきた。

そうだ。

肉体を持つ世界では、死んだら負けなんだ。
負けという言い方は適切でないかもしれない。

しかし,この世では肉体を養うことが優先される。
生きている限り、飲んで食べて排泄して、若ければ生殖も含んで、生きていかねばならない。

つまり、
此岸を生きる者は生を継続しなければならない義務があるのだ。

と諒解した。

この世では肉体を持たないものに発言権はない。
魂の世界では違う原理が働くのだろうが,この世にはこの世のルールがある。

そして、再婚によって、次女がその夫と娘の記憶から抹消されてしまうと考えているのは私の憶測で、彼らは彼らなりのやり方で次女を記憶し、思い続けることだろう。

つまりは私は自分の身勝手な考えに囚われていただけだった。

私は親として次女を記憶し続け、KANAが大きくなってママのことを知りたくなったら見せられるようにして置くのが役目なのだろうと気がついた。

次女はもうそんなことを超越した世界にいるのだろうから。


#嫁いだ娘を亡くすということ
#此岸

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