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オトクについておもうこと。

大学では哲学ゼミに所属していて,毎週,ひとりの思想家の著作を1冊読んで議論する。今回はK.マルクス『資本論』だった。『資本論』第一部第一章「商品」についての思想を一部,私なりにざっくりと要約してみる。

資本主義社会とは商品の集合体であり,個々の商品はその社会の富を構成する要素となる。では生産物に商品としての価値を生むのは何なのか,どこにあるのか。マルクスは,商品としての価値はほかの商品との関係性によって相対的に決まるという。ほかの商品の質的量的価値を等価として結び付けることではじめてその商品の価値が見いだせる。そしてその等価価値は社会的状況の変化によって左右される流動的なものである。

マルクスの論の帰結がどのような結果をもたらしたかはともかくとして,私はマルクスの価値形態論は資本主義の仕組みについては鋭く的を得ていると感じた。

価値形態論を前提に考えれば,昨今大流行するサブスクリプションのこわさに気づくことができると思う。サブスクリプションの中にあるひとつひとつの商品は,完全に商品の価値が等価価値としての貨幣形態との関係性に見合っていないのではないだろうか。サービスのからくりや利益の還元がどのようにされているかについては知識がたりないので言及しがたいが,商品の価値と消費の単純な視点でみればの話である。

映画やテレビ番組見放題の某サブスクリプションを例にとると,それぞれの作品はそれ一つとして商品の価値を持つが,サブスクリプションというサービスの中に組み込まれることでその商品ひとつひとつの価値は失われるだろう。完全には失われないにしても。

「安ければいい」「オトクなほどいい」という社会的状況をサブスクリプションの法則が反映しているとすれば,便利さや消費者としての利益追求の行き過ぎがいずれ価値の特殊性を奪い資本主義社会を構成しているはずの商品を消してしまうことになるのか?安さや進歩を前面に押し出す資本主義が行き着く先は何なのだろうか?

自身もサブスクリプションのサービスの恩恵にあずかる身として,いまいちど商品価値としてのサービスの在り方を見直したいと思った。正当な価値を持った商品を選ぶことは,それをつくりだす人びとの存在と力を守ることにもつながるだろうから。

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