週報85(2020.1.27〜2020.2.2)

週報の時間です。

2月になりました。今年の1月は、長く感じられました。その間に読書の時間を大いに確保することができました。

○読書について

今回読んだのは柳田國男の『孤猿随筆』です。一文ごとに言い回しの粋(すい)が感じられる筆致は、行き急ぐ現代人に何をか急がんと語り掛けるようですが、それだけでは生きていけません。そういうところを忘れてはいけません。時間のかかる読書でしたが、読み切るのにかかった時間ということでいえば、過去にもっと厳しいものがありました。ベルクソンの『物質と記憶』です。思い出しては本を開いてというのを繰り返して1年ほどを要した先にやっと読み終えました作ですが、まさしくこれを「読了」というのだろうといった感じが起こりました。ただ読み終えたにすぎず、到底、肉体化にまでは及んでいないことが、はっきりと自覚されたのです。

何をもって最高の読書とするかは、学生時代の自分において「全内容が暗記できたかどうか」でした。今でこそ意味深い捉えとは言い難いことを理解しますが、当時はそれで本気でした。読んだのに覚えていないのか、それでは意味がないではないかと問われるのを恐れました。

しかし実際の読書は、自分の内側に他者の記憶を取り込む仕事で、何かを契機に自己の体験とそれとが共鳴し、はじめて肉体化されるというシステムを援ける作業と言い得ます。結局、書の内容を完全に暗記したところで、覚えた内容が自己の生活上の何物とも共鳴しないのであれば、私たちは単にメモリースティックで終わりです。

私が『物質と記憶』の著述内容のうち確かに共鳴できたものがたった一文だけあって、それは「感情を伴わない知覚はない」という表現でした。どんな些細な刺激にも、少ないながら感情が伴っているということのようです。美味しいものを食べれば幸福を感じ、振るわないものにして不幸せを感ずるといった意味ですが、実際には、ペンを持つとかノートをめくるとか、そういう目的の過程に過ぎない所作にも感情が働いているという次元で捉えてみると、上述の引用はもっと面白くなります。

1年かけた読書にして共鳴でし得る箇所が一つしかないという事実には愕然とするしかありませんが、効率を目当てに読む本の味気なさもまたつらいです。焦らず今後も読み続けたいと思います。

○また来週…

M3に向けた製作が本格化しています。今回はインストアルバムを作っています。イベント前には情報を公開する予定なので、どうぞお楽しみに。

また来週お目にかかります。

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