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風と空き箱

ジムで汗を流したあと、しばらく外気に触れていたくて、ほど近くにある公園を目指す。二つあるベンチのうち、向かって右に腰掛けた。

過ごしやすい初夏の午後。

自分の身体を傷めつける苦行を経てから全身に浴びる風は、何ものにも代えがたい充実と、癒やしの感覚をもたらしてくれる。

5分ほど経つと、それまで雲に遮蔽されていた陽光が、烈しく降り注いで来た。たまらず木陰のベンチに居を移す。このベンチには煙草の空き箱が置いたままになっていたから、自然と避けていた。しかしそれも避暑地の優位を考えれば物の数ではない。

Marlboroの空き箱を隅に追いやると、しばし広葉樹の傘下に微睡む。夢と現実との境界を綱渡りするような数分を過ごす。

目を開くといつの間にか親子づれが近くにいて、枯れ葉の絨毯を踏み回し、その足裏から伝う感触と、パリッとした耳心地のよい音を楽しんでいた。

私は彼らの時間を邪魔しないよう、席を立つことにした。
空き箱は私のものではないが、その親子は、ベンチに座っている私の持ち物だと思うだろう。

私は空き箱を手に取ると、腰を上げ、その場を立ち去った。


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