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はじめてのEGFR-TKI〜術後補助療法を中心に〜(2022.9)

[1]肺がんにおけるEGFR変異

1-1. EGFR変異のほとんどがEx19 delかEx21 L858R変異


https://www.spandidos-publications.com/10.3892/or.2017.5409

1-2-1. uncommon mutation (Ex20ins)

・Ex20ins:初期耐性:既存のTKIの奏効率が10%弱に留まる。
・ガイドラインでもTKIを使わない事が推奨される

1-2-2. uncommon mutation

・Ex20 T790M変異:第1、第2世代TKI耐性後に生じるMutation
・他にもEx18 G719X、E21 L861Qなどがある。
・compound mutation:複数EGFR遺伝子変異が合併する、uncommon mutationとともに奏効率が低いとされる群

https://www.haigan.gr.jp/uploads/files/photos/1283.pdf


[2]EGFR-TKI

2-1. それぞれの世代の薬剤

<第一世代>
2002年 Gefetinib(イレッサ®️)AZ
2007年 Erlotinib(タルセバ®️)中外
<第二世代>
2014年 Afatinib(ジオトリフ®️)BI
2019年 Dacomitinib(ビジンプロ®️)P
<第三世代>
2016年 Osimertinib(タグリッソ®️)AZ

<第四世代>
EAI045がEGFR(L858R/T790M/C797S)として開発中
<Ex 20ins用>
mobocertinibが武田薬品工業にて開発中

http://www.haigan.gr.jp/journal/full/057020069.pdf

2-2. 世代間の特徴

第1-3世代に関しては、この図がわかりやすい。

https://www.futuremedicine.com/doi/10.2217/fon-2017-0636

・第1世代はほぼ使わない。T790M(-)でC797S(+)の時は、まさかの第一世代が効くかも、という伝説がある程度。

・第2世代では、EGFR以外にHER2、ERBB3、ERBB4をブロックし、HER阻害剤としての効果を持つのが魅力。
→いずれも約1年で治療抵抗性となり、その半数にT790M変異を認める。

・第3世代はT790M変異にも効果がある。上記図のようにWild-Typeには結合しないので、毒性の低下につながる。

*OsimeがChemoに勝った初めの試験がAURA試験、OsimeをFirst lineで使うようにした試験が「FL」AURA試験、OsimeがAdjuvantとして使えるようにしたのが「AD」AURA。Neoadjuvantとして使用検討しているのが「NEOAD」AURA試験。と、わかりやすい。

http://img01.junglekouen.com/usr/o/i/t/oitahaiganpractice/nejmoa1713137_f1.jpg
FLAURA試験で、1-2世代との違いを見せつけたFig.。

・第四世代は、C797Sを克服したTKI製剤で、開発中。
*現状最強のOsimertinibであっても、10ヶ月後には進行してしまうことが問題となっており、再発した二次療法患者の20〜40%で、C797Sの獲得(osimertinib との結合に必要なEGFR残基の三次変異)が原因とされている。

[3]driver oncogene+肺癌は脳Metaに注意

3-1. CNS転移の頻度はEGFRmの方が多い

・EGFR wild : 約20%
・EGFRm: 約30%
・ALK:約40%
・ROS1:約20%
・RET:約25%

・EGFR変異肺がんのCNS転移のほとんどは BMで、LMCは数%
*CNS:central nervous system
*BM:brain metastases
*LMC:Leptomeningeal carcinomatosis 髄膜癌種症

3-2. CNS meta治療としてはTKIの方が期待できる

・殺細胞性抗癌薬はBBBの移行制限あり、CNS meta治療としては期待薄。対して、EGFR-TKI、ALK-TKIといった分子標的薬の奏効率は70-80%と高い。

3-3. CNS metaの耐性機序は、他と異なる可能性

・LMCは髄液検査で評価できるため、その遺伝子解析を行ったところでは、T790M変異は20%以下と低かった。
・高濃度薬剤在下での耐性機序と、BBBのために低濃度薬剤存在下で出現する耐性機序は異なるのではないか?という仮説がある。

Hata A, Katakami N, Yoshioka H, et al. Rebiopsy of non-small cell lung cancer patients with acquired resistance to epidermal growth factor receptor-tyrosine kinase inhibitor: Comparison between T790M mutation-positive and mutation-negative populations. Cancer. 2013;119(24):4325-4332. doi:10.1002/cncr.28364

[4]EGFRm症例は、AdjuvantにChemoではなく、EGFR-TKIの方が良いのでは?というCQについて。

4-1. 第1、第2世代で、これまでOSに有用性を認めなかった。

・第1世代、第2世代のEGFR-TKIを使用した術後補助療法は、一部の試験でDFSの有用性を認めたものもあったが、OSの延長は認めず。それがガイドラインにも反映されている。もちろん補助療法ではなく、再発時であれば、使用する。

https://www.haigan.gr.jp/guideline/2021/1/2/210102040100.html#cq30


・下記はエルロチニブを術後補助療法に使用し、PFSはよかったけどOSは変わらなかった、というRADIANT試験の2015年の論文Fig。

https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2015.61.8918?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed#
https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2015.61.8918?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200pubmed#


4-2. 第三世代のOsimertinibは結果を出してきた(ADAURA)

・EGFR変異陽性(Ex19 del, L858R)
・StageIB-IIIA期の完全切除NSCLC患者682人のうち
A)60%はAdj Chemo施行して、術後26W以内にOsim vs Placebo開始
B)40%はAdj Chemoなしで術後10W以内にOsim vs Placebo開始
・第3世代EGFR-TKI(Osimertinib)は補助療法として、3年間内服。

・DFSを大幅に改善、OSはimmature
→NCCNはCommon mutation(19-DelとL858R)にはオシメルチニブの術後補助療法を推奨

■24ヶ月後のDFS
・44% / 90%, Placebo / Osime,(II-IIIA)
(HR=0.17、99%CI:0.11-0.26、p< 0.001)

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2027071?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed

・Smoker
・StageIIIA>II
・Ex19del
・術後補助あり

の方が、術後Osime加えてより効果あったよ、というお話

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2027071?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%3dpubmed

・第三世代を3年飲んでも、RADIANTと似たようなOSカーブになる

https://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa2027071/suppl_file/nejmoa2027071_appendix.pdf



・ADAURA試験について発表されている論文は3つ!(2022.9.4)

4-3. Erlotinibも結果を出してきた(EVAN Phase2)

・完全切除後StageIII EGFRm NSCLCの補助化学療法
・Erlotinib  vs  CDDP+VNR
・5年DFS, 48.2% vs 46.2%
・medOS, 84.2M vs 61.1M( HR 0.318; 95% CI 0.151 ~ 0.670)
・5生率, 84.8% vs 51.1%

https://ascopubs.org/doi/full/10.1200/JCO.22.00428


4-4. TKIのAdjとしてのReview

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8071858/



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