【読了】「沖縄県営鉄道殺人事件」(辻真先:著)[892文字]
アニメ脚本家として、ミステリ作家として著名な辻真先氏は1932年 3月23日が誕生日なので、もうじき92歳になられますね。
今もミステリ作品を発表し続けていて、横溝正史が78歳あたりで「悪霊島」を発表したのを軽くクリアしていて、人生100年時代を感じずにはいられません。
本格ミステリという、一般的には量産が効かない作品ジャンルですが、精力的に作品を執筆され続ける作家がいないわけではありません。
例えば、西村京太郎氏、例えば内田康夫氏、そして辻真先氏。
多作で全容が掴み切れないのですが、お三方の共通点としてはトラベルミステリの名手という点でしょうか🤔。
辻真先氏はその作品から80年代~90年代の時代の空気を感じることができるのではと思い、改めて作品を読んで見ようと思いました。
「沖縄県営鉄道殺人事件」は1990年7月に出版されています。
34年前、辻真先氏が58歳の時ですね。
昭和から平成へと変わってまだ間もない頃、多分に昭和の空気が残っていた時期だと思います。
沖縄県営鉄道は昭和20年に運行を停止しているようです。作中では、平成に起きた事件と昭和20年の沖縄県営鉄道とが交互に描かれまています。
辻真先氏のミステリの特長は、トリッキーな作風そして、弱者へのまなざしがあります。特に後者は作品の根底に暗く流れる水脈のようであり、ビターな後味を残します。
これは、ボクが辻作品から、時に離れてしまう要因でもありますが💦。
ミステリとしての2つの謎は、本格ミステリファンなら見当がつくと思います。
ですが、なぜそうしたのかという事件関係者の心のひだの奥にひそむ感情は読者が容易に推理できるものではありません。
作中で事件の遠因として描かれている沖縄県営鉄道の爆発事故は、作者の創作かと思っていたのですが(一部、創作も入ってますが)、読後ネットで調べたら、1944年12月11日に実際に起きた事故であったことを知りました。
尚、2005年に辻氏は「沖縄軽便鉄道は死せず」という作品を書いています。
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