[いだてん噺]二十三日間07(1239文字)
スウェーデンのエテボリーに着いて9日目、8月12日。
『昨日一日の休みをとったので今日は大変元気がいい』と絹枝は自伝に記している。
但し、長い列車の旅の影響か上歯全部が浮いているような気がしており、この日の朝食を終えた後には、上顎の臼歯が痛み出し、歯科医で応急手当を受けている。
また円盤投げは、初めて取り組む競技なので、勝手がわからないながらも、成果は出ていた。
円盤投げの方が練習しやすいものの、槍投げも好記録がでていたため、円盤揚げ一本に練習を絞り込むという判断ができずにいた。
この日の練習を終えた夕方、通訳のマルチソンが、絹枝の記事が掲載されている新聞を持ってきて、書かれている記事について訳してくれた。
記事を訳するマルチソンの言葉を聞いて、絹枝は苦笑せずにはいられなかった。
絹枝は今まで、走り幅跳びで五メートル六〇以上を跳んだことはなかったのである。
(※都市名は、人見絹枝自伝に記されているエテボリーに統一)
(敬称略)
■参考・引用資料
●『人見絹枝―炎のスプリンター (人間の記録)』人見 絹枝:著、 織田 幹雄 ・戸田 純:編集
●『二階堂を巣立った娘たち』 勝場勝子・村山茂代:著
●『はやての女性ランナー: 人見絹枝讃歌』 三澤光男:著
●『短歌からみた人見絹枝の人生』 三澤光男:著
●『KINUEは走る』 著:小原 敏彦
●『1936年ベルリン至急電』 鈴木明:著
●『オリンピック全大会』 武田薫:著
●『陸上競技百年』 織田幹雄:著
● 国際女子スポーツ連盟 - Wikipedia アリス・ミリア - Wikipedia
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