TV番組「快刀乱麻」を知ってますか?~明治開化 安吾捕物帖~【1793文字】
『もし願いが叶うなら、見てみたいテレビ番組は』と聞かれたら、過去すべてのTV放送された大河ドラマ・NHK少年ドラマシリーズなどを筆頭にあげたいですが、同様にあげたいのが、1973年にテレビ放送された『快刀乱麻』です。
『快刀乱麻』という番組名だけでは、どんな番組がいまひとつピンとこないですよね。
ちなみに、番組主題歌は内田喜郎氏が歌う『少女ひとり』。
オープニング主題歌というよりは、エンディング主題歌みたいな静かな曲です。
いや、この主題歌を聴いても何の番組だかわからないですよね💦。
じつは原作があります。
原作は、坂口安吾の連作ミステリ短編『明治開化 安吾捕物帖』です。
(青空文庫で全作品無料で読めると思います)
この「安吾捕物帖」というのもよくわからないタイトルですね💦。
そもそも、坂口安吾は大のミステリー(特にクリスティ)ファンで、戦争中に、推理小説の犯人の正体がわかるラスト部分を破り取り、防空壕の中で評論家の友人たちと読書会をして犯人当てゲームに興じていたとか😅。
ちなみに安吾は独特の推理をするため、犯人を当てる確率は良くなかったみたいです💦。
さて本題。戦後、本格ミステリ『不連続殺人事件』を書いて、推理作家としても活動した安吾は、昭和25年から『明治開化 安吾捕物』の発表を始めます。
この作品は、明治の初め、文明開化の時期を舞台にしています。
安吾がこの時代を舞台にしたのは、執筆当時の社会と密接なかかわりがあります。
当時の日本は戦争に敗れ、GHQの占領下にありました。
安吾の目には、江戸にやって来た薩長の官軍=GHQというように見えたのです。
ミステリは純粋に謎解き小説というスタンスだった安吾は、この連作短編を以下のパターンを踏襲して書くことにしました。
この作品をドラマ化したのが、1973年の『快刀乱麻』(全26回放送)です。
時代的に言うと、大河ドラマ『国盗り物語』が放送されていた時期です。
番組途中で、視聴者向けに犯人が誰か当ててくださいといった感じのテロップが挟まれたらしく、原作のミステリ要素は活かしつつも、設定を大胆に脚色しています。
主人公の探偵、結城新十郎(若林豪)は自由民権運動家となっています。つまり反体制側の人間です。
最初に見当違いの推理を披露する勝海舟(池部良)に事件を説明する剣術家の泉山虎之介(花紀京)は彰義隊の生き残りで、いがみ合いながらも息の合う、戯作者の花廼家因果(植木等)は元薩摩藩士、西南戦争では西郷軍に加わったの生き残りということで、賊軍出身の体制側ではない人間として描かれています。
つまり、これは反政府・反体制側の人間たちをメインにして、文明開化で西洋化を進めるものの権力の腐敗が出てきている新政府に対する抵抗の物語として見ることができるのではないか?と思うのです。
1973年という政治の季節が終わりつつある時の時代背景を考えて、妄想してみました。
いや、番組は見たことないですが😄。
ボクの妄想がどこまで当たっているか知りたいので、見てみたいと思うのですが、この時期のテレビ番組の多くは、テープに保存するということはされていない様で、おそらく『快刀乱麻』放送時のテープは残っていないはずなので、再放送はあり得ないでしょう💦。
番組自体も視聴率的に今ひとつだったのか、途中から番組名を『新十郎捕物帖・快刀乱麻』と、より番組内容かわかるものに変えられています💦。
尚、安吾のこの作品は、クリエイターの想像を喚起させるのか、設定を大幅にかえて、2011年に『UN-GO』のタイトルでアニメ化されています。
またNHKBSにて、2020年に再ドラマ化されており、これまた原作とは設定が一部変わっているようです。
主人公の設定はちょっと原作に近づいており、自由民権運動家ではなく、洋行帰りの名探偵という設定です。
作者が想定していない設定を、毎回新たに加味されて、三度も映像化されているミステリ小説も珍しい気がします😄。
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