見出し画像

「1億円の低カロリー」ショートショートnote杯

これからは健康の時代だ。

ある缶コーヒーメーカーは、新商品の開発に突き進んだ。

そしてコクと旨味のある低カロリー『コクウマコーヒー』が発売された。

が、売れ行きはさっぱり。倉庫は在庫の山。その金額は1億円に達した。

「むむむ。これは困った。こんなに美味しいのに・・・」

U社長は在庫の山を見上げ、ため息。

そこにやって来たのは宣伝部員のY君。

「社長。僕にいい考えがあります。ひとつ、任せてくれませんか?」

「なんだって?・・・よし君に任そう」

Y君は、『コクウマコーヒー』のコクと旨味を取り除き、カロリーをさらに下げ、100gあたり5カロリー未満にして、『ゼロ・カロリーコーヒー』として再発売させた。

正確にはゼロではないが、表現上は問題ないので、商品は健康志向にのって大ヒットしたのだった。

工場前の敷地でヒット祝いパーティーに興じる社員たちを見ながら、U社長は変な時代になっちまったなぁと、『コクウマコーヒー』の在庫を飲むのだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?