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3人暮らしパート1

私が実家を出たのは大学進学の時だった。

新しく始まる拠点は実家から離れていることもあり、
大学側が探してくれた場所だったようだ。

最初だから安ければ安いほどありがたいという親からの条件でたまたま決まった、
某県某市にある安アパートだった。

駅から徒歩5分以内の、
1K6畳の2階、
エアコンなしの畳だったが、
とても広く感じた。

ただ気になったのは、
入った瞬間ドヨーンとした空気と、
押入れに入っていた黒いカラーボックスだった。

引っ越しを終えた当日の夜、
金縛りにあった。

中学高校は毎日のように金縛りにあっていたのでもう慣れっこだったが、
やはりあの瞬間は気持ち悪い。

「またきたか」と諦めつつ周辺の状況を確認すると、
ゴキブリが飛び回り、
真っ黒な影が渦巻いていた。

「あ、ここはヤバいところだった」

あの頃は「事故物件」などというものすらも、
そんな言葉も知らなかった。

だから内見もしていない私には何があったかなんて入ってみないと分からなかったのだ。

その日から家で寝た日はほぼ毎日、
2年間金縛りは続いた。

誰が泊まろうと、
時間をずらして寝ようとも、
金縛りにあったのだ。

最初の頃はやはり怖くて、
誰がいるのかなんて見ようとはしなかった。

慣れてくると、
いろんなことを観察するようになっていた。

今日は何時に金縛りにあった、
今日は空気がいつもと違う、
今日は2人の気配がする、
そんな感じでいろんなことがわかってきた。

その部屋にいたのは、
30歳前後の女性と、
3〜5歳くらいの男の子だった。

続く…





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