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安達裕美佳による個展「あるひのこと」を開催します

KATSUYA SUSUKI GALLERYでは5⽉22⽇(⼟)から6⽉13⽇(⽇)まで、安達裕美佳による個展「あるひのこと」を開催いたします。

1987年に東京⽣まれ、2012年に東京造形⼤学⼤学院美術研究領域を修了した安達裕美佳は、在学中より個展を開催するほか、グループ展にも積極的に参加し精⼒的に作品を発表しています。
その表現⽅法は絵画に留まらず、インスタレーションや写真、様々なジャンルのアーティストとのコラボレーション、パフォーマンスなど多岐にわたります。

この度、安達にとって3年ぶりとなる個展「あるひのこと」では、⽇常⽣活の中で蓄積されてきた記憶の断⽚をキャンバスに落とし込んだ絵画作品が中⼼となります。

パーソナルなものである記憶を、「あるひのこと」という⽇時を限定させない⾔葉で括り普遍性をまとわせることで、鑑賞者が作品と向かい合った時に⾃⾝の記憶と重なり合い、作品は鑑賞者の「あるひのこと」になります。
⽇々流れていく時間の中で、消えそうになっている記憶の中からすくい上げられた、パーソナルでありながら普遍的な記憶の断⽚の数々。

是⾮、ご⾼覧下さいますようお願い申し上げます。
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泳ぐ⼈

 安達裕美佳の作品の前に⽴つと、描かれた線や⾊⾯を追って、⽬が⼤きく動く感覚が起こる。
それは、⼒強い、そして注意深い、決断によって画布に絵筆を⾛らせる姿を、追体験することになるからだ。やがて、その画⾯は⽬と腕だけで産みだしたものではなく、彼⼥の全⾝の動きによって表されたものだと気付く。画⾯に描かれた街の⼀⾓や⼈々、⽊々や草花は穏やかに静⽌しているにもかかわらず。
 では、その動きはどこで発⽣しているのだろうか。作品に現わされた光景は、安達の記憶と結びついているようだが、おそらく記憶はその先へ進むためのきっかけでしかない。⽩い画⾯と向き合い、⾃分の記憶と描く⾏為の奥へと、⼀筆ごとに踏み込んでいく。それは夢⼼地の世界と⾔い換えてもいいのかもしれない。夢ではない。現実でもない。そのあわいに存在する世界を探索しているかのようだ。
 安達の作品が簡潔にして断⽚的な姿をとることが多いのは、なにかを⼿にした瞬間を画⾯に移し替えているからだろう。重層的な形態をとった場合は、⾃分の⽣を越えた時間の経過のなかに⼿を伸ばそうとしているのだと読み取ることができる。夢と現実のあわいに⾝を浸し、⼿⾜を⼤きく広げ、⾃由形で進み続けることで、⾃分の⽣の実体と、その鮮やかさに触れようとしている。

野⽥尚稔/世⽥⾕美術館学芸員
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アーティスト・ステートメント

「拝啓 ⼋重桜と藤が⼤森で満開の頃、如何お過ごしですか。カナダは陽気も好く⽗が贈ってくださった⼦供達の鯉のぼりが泳いでます。」

 2021年4⽉3⽇、祖⺟が旅⽴った。その⽇、祖⺟の家の⼋重桜と藤は、祖⺟の旅⽴ちを祝福するように、私たちをもてなすように咲き誇り、また、残された者が悲しみにくれない配慮として、やさしい祖⺟がくれた贈り物だったのかもしれない。冒頭の⽂は、告別式にコロナ禍で帰国できなかった弟から寄せられた⼿紙の⼀節だ。しまっていた涙がこの時⼀気に溢れ、会場の皆んなの啜り泣きと共鳴した。幼い頃、共働きの両親のために、祖⺟は⼤森から私たちの住む世⽥⾕に通い、孫4⼈の⾯倒を⾒てくれていた。祖⺟が来ると、暖かく、おいしい⾷事が⽤意され、部屋はすっきり整った。それは普通の家庭⽣活なのかもしれないが、私たちにとっては⼤きな幸せだった。

 3⽉29⽇、祖⺟の危篤を知って会いに⾏ったあの⽇も、世の中はソメイヨシノの花盛りだった。この⽇、祖⺟の家は⼈の出⼊りがあると聞いていたが、予想に反して、部屋はしんと静まりかえり、叔⺟が⼀⼈、発芽した⾦柑の⼿⼊れをしていた。この時、まだ祖⺟は落ち着いていて、穏やかな顔で眠っていた。⼆⼈っきりで対⾯したのは、これが最後となった。

 祖⺟の家にあった古いアルバムや、告別式に飾られていた祖⺟の昔の写真を眺めているとき、祖⺟の記憶の彼⽅へと吸い込まれるような感覚に陥った。6⼈兄弟の⻑⼥として弟妹たちの⾯倒を⾒てきた祖⺟、ひときわ可憐な学⽣時代の祖⺟、凛とした⺟になった祖⺟、私の会うことのできなかった祖⽗の⻑い闘病⽣活に寄り添い続けた祖⺟。やさしく朗らかな⼈柄の中に表には⾒せない芯の強さを持っていた。

 展覧会が決まった当初、私は私の⽇常にある「あるひのこと」を淡々と描くつもりでいた。

 しかし、祖⺟の死を⽬の当たりにして、私の世界に祖⺟が頻繁に現れるようになった。それから朝⼣散歩をするたび、開花する花や勢いよく育っていく新緑を眺め、「ありがとう」という気持ちが溢れてきた。美しい花や⽊々を眺めると、そこに祖⺟がいるような気がした。そんな祖⺟への想いを吐き出すように「あるひの祖⺟」やその後の「あるひ」の断⽚を描き落としていくことになった。

 どんなことがあっても季節は流れ、蕾が開き、花が散り、新緑に沸き⽴つ。その変化し続ける⾵景は、変わりながらも変わりなく、淡々と過ぎていく。

安達裕美佳

展覧会概要

展覧会名
安達裕美佳「あるひのこと」

会期
2021年5⽉22⽇(⼟)〜6⽉13⽇(⽇)

営業⽇
⽔曜⽇〜⽇曜⽇

定休⽇
⽉曜⽇・⽕曜⽇

営業時間
11:00〜19:00

入場料
無料

会場
KATSUYA SUSUKI GALLERY
〒152-0022 東京都⽬⿊区柿の⽊坂1−32−17
TEL:03-5726-9985
Mail:info@katsuya-susuki-gallery.com
HP:https://katsuya-susuki-gallery.com

交通アクセス
東急東横線「都⽴⼤学駅」より徒歩5分

【新型コロナウィルス感染予防ご協力のお願い】
・発熱や咳、だるさなどの症状があるお客様は、御来廊をご遠慮いただきますようお願い申し上げます。
・マスクの着用と、入口で手指のアルコール消毒をしていただきますようお願い申し上げます。
・ギャラリー内が混雑した際には、入場を制限させていただく場合がございますので、その際はご協力の程、よろしくお願い申し上げます。
・新型コロナウィルスの感染拡大の状況によって、営業時間の変更及び会期の変更の可能性がございます。最新情報などはホームページ及び各種SNSにて告知させていただきますので、よろしくお願い申し上げます。

安達裕美佳 / Yumika Adachi

1987 東京⽣まれ
2010 東京造形⼤学造形学部美術学科絵画専攻卒業
2012 東京造形⼤学⼤学院美術研究領域修了

◉ 個展

2009 「近今館 」node
2011 「GUNMA」SPACE/ANNEX GALLERY
2012 「⾏為かじょうが」blanClass(パフォーマンス)
   「アリス時計、ポストカードそしてレコードジャケット」Woodberry Coffee
2015 「第5回世⽥⾕区芸術アワード“⾶翔”受賞記念 安達裕美佳展」世⽥⾕美術館区⺠ギャラリー
2018 「散歩するエメラルド」S.Y.P Art Space Gallery and Lab

◉ グループ展

2011 グループ展Satellite9ホンマタカシ企画『Our Mountain』UTRECHT/NOW IDeA
2012 「パフォーマンス&ファッションショー/安達裕美佳×⾼松太⼀郎」time spot|cafe+studio
2014 グループ展『撤収展』ハンマーヘッドスタジオ
2020 阿佐ヶ⾕アートストリート2020

◉ 受賞歴

2012 東京造形⼤学修了制作展『 ZOKEI展』 ZOKEI賞受賞
2015 世⽥⾕区芸術アワード“⾶翔”2015受賞

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KATSUYA SUSUKI GALLERY
2021年3⽉、コンサートや舞台公演のためのホールや図書館などを併設するパーシモンホールが佇む、都⽴⼤学エリアの芸術⽂化の中⼼である柿の⽊坂の地に、新しい現代アートの発信基地としてオープンするコンテポラリーアートギャラリーです。

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TCMは「世の中の体温をあげる」という想いをかかげ、「Soup Stock Tokyo」等を手がけてきた遠山が構想する「新たなアート体験」に、PARTYが得意とする「デジタルでの体験設計」を融合させ、アートと個人の関係をテクノロジーで変革させ、新たな価値の提示を目指しています。