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伝わる相手

ガチャ…
家の中で響く。
僕はこの音が好きだ。
温もりを感じる音なんだ。

隣の家の友達は
握ってから反時計回りに
取っ手を下ろすタイプ。
向かいのあの子は
縦についた取っ手を
引くだけなんだけど
スゴく綺麗な装飾がしてある。
え?僕かい?
僕は…回すのさ。
少し古くて
キィ…って音がする。

でもね。
家の人は優しくて。
ギュッと握ってくれる。
温かさを感じる。

ある日
家にお客様が来たんだ。

客「おじゃまします」
キィ…
客「硬いですね笑」
ググッ…ガチャ
客「あ、開きました!大丈夫です!」
主人「少し古くなったかの」
客「でも不思議と握りやすいですね」
主人「油でもさせばつかえるやろーに」
キュッキュッ
ゴシゴシ
主人「ついでに綺麗にしてやろう」
そう言いながら布で拭いてくれた。
主人「ほら綺麗や」
客「アンティークな取っ手ですね」
主人「この形に惚れて買ったんや」
「この取っ手がよかったんや…」
客「思い入れがあるんですね」
主人「こんな家に付けてしもてな」
客「そうですか?雰囲気ありますけど」
主人「もっといい家がよかったやろに」

僕は嬉しすぎて泣きそうになった。
もちろん涙なんて
人間みたいなものはないけど。

そのとき。
キィ…
音がした

客「あれ?いま音が?」
主人「はっはっはっ」
大きな声で笑った。
客「どうしました?」
主人「なぁに。気にするな!」
「これからも使うよ」
客「ん??」

主人には何かが伝わったのだと思う
温もりを感じる瞬間は
それぞれ違うはず。

その相手が
ドアノブでも…

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