武満徹の言葉

「作曲するということは、われわれをとりまく世界を貫いている<音の河>に、いかに意味づけるか、ということだと気づいた」
(『武満徹全集』p.28 「音、沈黙と測りあえるほどに」)

作曲は音を生み出す作業ではなく、もとからこの世界に存在している音を拾い上げる作業ということだろうか。そうだとすると、思想的にはソシュール言語学のような印象を受ける。
言葉とは、世界から対象となるものを切り取るために必要な道具である、という意味のことを言ったのがソシュールである。
つまり、音楽というものは作曲家が発表する前にこの世界に既に存在しており、作曲家はその無限の音たちから一部を取り出しているにすぎないということになる。

この考えをハッキリと体言している曲が、遺作となったフルートのための独奏曲「エア」だ。

「始めも終わりもない、言わば永遠に続く音楽の一部を切り取ったもの」が「エア」の主題である。

武満が上記の言葉を記したのが1961年、彼は死ぬまで一貫した音楽づくりをしていたのだろうか。

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