月ミるなレポート㉘

宇宙のなかの
ひとつの純潔である
月ミるなへ

月ミるなのこと、半分はわかった気がする
あとの半分は考えないことにした

月ミるなは目をあけてみる夢
ノンレム睡眠がなくなった

大「学校は?」
月「今日は創立記念日なの」

月ミるなから手紙がきた
サラダの作り方が書いてある

ぼくはそれを読みながら
そのとおりにサラダをつくった

背中をまるめた月ミるな
リズムにのって片手をふるう

月ミるながtwitterを見ているあいだに
ラーメンがのびた

月ミるなとわるいことは
ないしょばなしでおぼえる

”月ミるなの研究”が秘密出版された

月ミるなは退屈だから
おこってみたりする

月ミるなが青になってから
渡ってください

駅をおりてすこし行くと
中産階級住宅がいっぱいあった

月ミるなはひとつの青春だよ
だけどおわってしまったんだ

レム睡眠がおわる
夢見る人の意識が消滅する

ちがう宇宙のちがう惑星
ちがう時間系のなか

月ミるなをもういちど
疑似体験しなければならない

空の色とか香水のにおいまで
大切なことになってくる

数千年を十日で走りぬける
経験しなかった人生にたいする嫉妬

月ミるなと和解した

”なかなかやるぜこの野郎”と
認めあった激動の令和

電話ボックスと月ミるな

いったいなんのために
街角にたっているのか

意志の疎通
それ自体が空虚におもえた

月ミるなが意味をもつのは
その不在によってである

不在によって月ミるながはじまる

永久消去の刑

月ミるなのクローンを
つくることは禁じられた

月ミるなはいまでも貧乏だが
そのころの貧しさといったら
ひとつの物語になるほどだった

月ミるなが洗濯して
トースト一枚焼いて
お湯を沸かし温かい紅茶を飲む

流れてくるニュースを
犬猫だけにしたら世界が変わった

だけど小さな世界しか見てないことに
悲しくなった

テコの原理で
月ミるなをそらに飛ばす

また会おうね、みんなたのしく
きらめく星みたいに生きたいね