ユニバーサルという愛の香り
南風、という名前の香りができたとき、『ユニバーサルという愛』がテーマになったなと思った。
最初は身体とか生命をイメージして作ろうとしたんだけど。
ユニバーサル、誰にでも合う、最大公約数的な、ベーシックで素直な香り。
ところがどっこい、できてから嗅いでみると、思ったよりも甘めで、まさに南風っぽい雰囲気になって、わたしの思う「ユニバーサル」のミニマムなシンプルな良さとは少し違った。
うーん、ちょっとレシピを見直しなのかなあ。どこでズレたかな、と思いながら、何を加えて何を引けばいいのか考える時間を過ごした。
それからしばらくし、何人かにこの香りを作って送ることになったときに、その意味がようやくわかったのだった。
それは、この「南風」というのはこれで完成ではなかったのだということだった。
送る方の今のテーマや、好みの香りを訊いて、南風に追加する作業をしていると、ある意味この香りは、何を加えてもすっと馴染んでひとつにまとまるという不思議な力があった。
まるで、熟した果物の香りや、水分をはらんだ植物の香り、みずみずしい生命をまるごと包んで吹かす、南風のように。
それは、まさに「ユニバーサル」な香りで、どんなふうにでもカスタマイズできるように最初計算し尽くされているデザインかもと思った。
なるほど、なんかちょっとズレてる、と最初に感じたブレンドは、それで正解だった。
なぜなら、送る相手の方に必要な香りを選ばせてもらうことで、その香りは完成するのだから。
ユニバーサルという愛は、一見なにかが足りないように感じたり、率直すぎて色気が内容に見えるけれど、本当はそうじゃない。
それは、いつも、何にでもなれる魔法なんだ。
3種類、南風をベースにそれぞれの違う精油を加えたものを、あらためて嗅いでみた。
ほんとうに、同じ人間なのにこんなに違うんだね、と驚くように、別の香りだった。
素敵だ。
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