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ウィンターセミナー&大忘年会

2017年12月23日(土)十勝プラザにて、ウィンターセミナーを開催いたしました。畑作農家、酪農家、農協職員、大学職員、学生、資材販売業者、流通業者など52名が参加しました。毎年開催しているセミナーですが、今回はテーマを設け、「事業継承における現状の問題と今後の展開について」としました。 「継承(けいしょう)」とは「身分、権利、義務、財産などを受け継ぐこと」を意味し、「承継(しょうけい)」とは「地位・事業・精神を受け継ぐこと」を意味します。今回のテーマとして適切なのは「承継(しょうけい)」であり、資産や人材など培ってきた財産をどのように後継者へ受け継いでいくのか、経営コンサルタント、農協職員、生産者など異なる立場から手法や事例、経験などをお話しいただきました。

有限会社 ケイ・エス・シー 代表 笹山 喜市 氏 「事業承継の基本的な考え方」 経営コンサルタントの笹山先生からは、質問形式に事例を挙げながら、具体的な方法論を講演していただきました。事業承継の問題は放っておいても問題は起きないが、相続は放っておいても相続が開始され、問題が発生してしまうため、決して混同してはなりません。事業承継は新規開業扱いとなり、開業した年は消費税が免除になるが、経営は繁盛しなければ決して意味がありません。「自分はどこに売りたいの?」、「何を売りたいの?」、「お客さんは誰なの?」を考えることが重要であり、事業承継は計画的に行う必要があります。 事業承継の例として、兄弟3人家族において、父が長男に事業の権利を移した後に、長男が事故で亡くなってしまいました。長男が持っている事業の権利は、長男のお嫁さんに移ることになったため、次男や三男が売買で牧場を買うことになってしまいました。 事業承継の問題は、様々なパターンがあり、同一の案件はほとんどありません。自分自身の事業承継の問題点や改善点を把握するために、専門家(弁護士・税理士・経営コンサルタント)はきちんと選ぶ必要があります。また、合わないと感じたらすぐに変えることが大事となります。夢・志・戦略は持っていなければならず、戦略とは戦いを省略することです。まず行うことは、①固定性資産と流動性資産の把握をすること②資産構成のリスト化をすることです。

十勝清水町農業協同組合 富樫 和之 氏 まず農協が行っている役割として、①後継者への承継、②高齢者からの新規就農への承継、③離農の手続き(農協が資産を買い取り、簡単なビジネスモデルを作り、新規の人に渡す)、④法人設立の手伝いが主にあります。経営移譲といっても、単に農地の名義を変えるわけではないため、経営者側(親)と後継者側(子)の両方に同席して頂いて話しを進めるようにしています。また、生産者とともに農業委員会や司法書士の所へ行くことも行っています。法人化によって後継者(子)に継承する際、農協と生産者さんとの密接力が落ちてしまうことがあります。しっかりと話す土台を作ることが農協の仕事であると考えています。また、常にアンテナを立てながら、生産者の相談に乗っていくことが必要です。今後農協としては、様々な人と連携を取りながら相談に乗り、法人の知識や経営分析の知識なども増やしていく予定です。

有限会社 中藪農園 中藪 俊秀 氏、中藪 俊彦 氏 中藪農園の歴史は今年で100年目となり、20歳から17haの面積で農家を行ってきました。早くに父を亡くしていたため、なかなか規模拡大ができませんでした。数年前に農地を引き受けて、現在は90haの面積となり、近いうちに100haの面積となる予定です。経営面では、ビート、小麦、種イモの栽培はやめました。自分で作った作物を売っていきたいとずっと考えていました。土壌診断を30年間行ってきたため、土壌診断に基づいて施肥設計を行っています。また、ほとんどの作物を自分で売っており、農協には、売っていません。直接取引によってスーパー、生協や加工会社に売っています。子ども(俊彦)にも少しずつ事業や経営のことを教えています。いいものを作ってマーケティングしていくのがこれからの農業のポイントだと考えています。また、人間関係の繋がりを大事にしてくことが非常に重要で、良いものを作って、ルートを開けば自然と売り先は広がっていくと考えています。

麓郷生産組合 菅野 義則 氏 まだ息子達への経営移譲は考えていないが、自分自身も30年前に父から受け継いだため、その時の経験や地域の状況についてお話しいたします。地域の先輩と一緒に土づくりの勉強会へ参加したことがきっかけで、農作物の生産は大事だと思いました。そのため10人くらいで生産者のグループを作り、こだわった農作物を作ることにしました。現在、面積は17haあり、タマネギ、ジャガイモやニンジンを作っています。有機農業を行うようになってから、地域の反感をかうようになってしまいました。傾斜の畑15haを平らにする土地改良代の借金が負担となりました。現在、地域に6つしか農家がなく、かなり早いペースで農家が離農しています。農家戸数が減っているのが地域的な問題であり、人材の育成が上手くいかなくなることを懸念しています。そのため地域の将来像の話し合いすることが必要だと考えています。きちんと意見を述べることができる地域の代表者を育てることが大事です。若い人たちがやりたい農業を支援する先頭が農協ではなく、地域みんなで支えていくことが必要だと考えています。

小泉牧場 小泉 浩 氏、酪農ヘルパー 小原 佐満利 氏 現在、年間200件の酪農家が離農し、20件の新規就農があります。酪農家を目指す学生や若い人が増えてきています。しかし、技術研修の見直しが必要であり、実習だけではダメであると考え、技術にはノウハウ、技能や原理の全てが含まれます。今後は、就農に必要な技術の洗い出しや就農に向けたカリキュラムの作成が必要だと考えています。小さな集まりを大事にしていき、一人が多様なネットワークに参加することで若者のネットワークを広げていくことが必要です。世界に通用する酪農家を育てる支援をしていきたいと考えています。

遠藤牧場 遠藤 裕子 氏 士幌町で育成牧場を経営しており、300~350頭ほどの規模で行なっています。今回は女性目線での事業承継をお話ししたいと思います。子供への事業承継において準備したことは①「人に使われる経験」をさせる、②農場継承(経営移譲)について教える、③一人でできる環境を作ることです。現在は後継者を育てることとして、①チャレンジさせる(経験値を増やす)、②責任を持たす(お互いに家を空ける、親がいない時の成長度は大きいと考えている)ことを考えています。社長として、経営者の皆さんへ伝えたいことは、①「おまえのため(の投資)」はためにならない、②「自己資金」での経営もあり、③引退する準備(社長として借金は残さない、親としてきれいに身をひく)ことが大切だと考えています。  

セミナー終了後は、ふく井ホテルレストランバイプレーンにて大忘年会を開催いたしました。会場は熱気に満ち溢れ、この場でたくさんの繋がりが生まれました。生産者、公的機関、民間企業など立場が異なる者同士で「食」や「農」に関する様々な議論が熱く交わされました。声を張り上げ、熱意を語らなければ相手に伝わらないため、参加者自身からのアプローチが必要となります。アースカフェは、人と人をつなげる場「プラットフォーム」を提供することにを念頭に活動を行なっています。これからもセミナーなどのイベントを通じて、たくさんの人と繋がる場を提供していきます。

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