19/07/25 死ぬのはこわい

眠る時に寒いと寝付きが悪い。
寝る時の腹巻は必需品だ。せっかく眠れても夜中の寒さに起こされる。
夜中気づくと、背中の向こうでAが泣いていた。
それに気づいた家人が声をかけたら
「死ぬのがこわいんだよ。香川のばーちゃん死んじゃって、じーちゃんひとりになってかわいそう。とーちゃんとかーちゃんが死んだらぼくさびしい」
と、泣きじゃくりながら答えてくれた。
まどろんでいたのでその言葉の後は覚えていないが、その後二人は1時間くらい話したそうだ。

夜中に一人で泣いている小さな姿は、記憶の中の自分と重なる。彼が本を読めるようになったら、わたしの大事な本をプレゼントしてあげよう。

朝目を覚ましたAはにっこり笑顔で「ぼく、昨日泣いたよ」と教えてくれた。
「ぼくなみだがでてスクスクってなって、11じくらいになみだがとまって、(父ちゃんの)背中ずっとさすってて、父ちゃんが"グー"ってなって、"もー!ぼくが一番最後だ"ってなって、一番最後に寝た」
テキストにすると幼く愛くるしい言葉も、その姿と瞳を前に聞くと私には透きとおるように眩しく、強烈だ。
まだ哀しみもと呼べぬ、心の中に生まれた小さな小さな闇が見せる美しさ。昨日のきみよりも、少しだけ多くを知っているきみが目の前にいる。

仕事を終えると、散髪してやや坊主頭になったAが店先まで迎えに来てくれた。
一緒に帰りながら量子学の話を聞かせると興奮気味に食いついてきた。それから帰路で話したことは、生きる人の世界と死んだ人の世界の二つがあること。生きる人の世界には、目に見えないものと目に見えるものがあること。
Aがちっとも疑わなかったことが、私の心を幾ばくか救ってくれた。