19/09/08 まだ覚えている

昔々のこと。
正座した私の足の指を、母が「ド・レ・ミ・ファ・ソ」と言ってひとつずつ押さえていった。母のその感性が大好きだった。
今、同じことを7歳のAの小さな足にしてみるのだが、まったく気に触れないようで無視される。無視されながら、自分の行いに母の息遣いを感じている。

Googleフォトの写真を整理していて母の姿を見つける。穏やかな泉に、コンコンと哀しみが湧き上がってくる。まだ、ダメなんだなぁ。
本当に「まだ」だとすればそれも寂しい気がしてくる。後ろ髪を引かれながら、このままでいたい。あの深い哀しみを私は宝物のように胸に抱き続けている。忘れて色褪せることは怖い。それはおそらく色褪せても失うことでもないものだと思うが、怖いと思うのは、やっぱり「まだ」なのだろう。