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いのちの星屑

プロローグ
「もうひとつの宇宙に連れていく人たちの選別は、すでに終わっているんだよ」
人の気配を感じ、僕は傍らに目をやった。いつの間にかひとりの少年が岩の縁にちょこんと座っていたのだ。
 「選別?」
はっきりと聞き取れなかった言葉を僕はもう一度聞き返した。
 「そう、今、もうひとつの宇宙につれていく人間を選んでいるんだよ」
 「どういうふうに選ぶの?」と、さらに僕は少年に訊ねた。
 「それなんだけど……いくら訊ねても教えてくれないんだ。おそらく選び方を教えると、この人たちは狡いから、選ばれるように事前に対策を練ってくるだろうと思われているんじゃないかな……? きっと彼らはこの星の人たちが超えられないハードルをやすやすと超え、生き伸びてきたものたちだから、自分たちの常識に照らして考えるのは無理があると思うんだよね」
両足をブラブラさせながら、少年は嬉しそうだ。

 磯の香りを含んだ風が耳たぶを震わせた。耳を澄ましてみると寄せては返す波音が聞こえる。耳を震わす風音以外なにも聞こえない。突然、鳥のさえずりが大気を切り裂いた。三本足のカラスが太陽に向かって飛んでいった。つづく


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