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工学部 化学・バイオ工学科の特徴

高校生のみなさん、こんにちは!
大学院工学研究科 化学工学専攻 博士課程前期2年の斉藤です。

私は学部4年間を東北大学 工学部 化学・バイオ工学科で過ごしました。今回は、工学部の中の化学・バイオ工学科(通称、化バイ)で学ぶことや、理学部化学科、農学部、薬学部との違いについて紹介したいと思います。

記事の最後には、情報収集に役立ちそうなホームページをまとめました。そちらも合わせてご利用ください!

★サムネイル画像:青葉山東キャンパス中央付近。化バイの建物は、写真奥側の坂を登って右側にあります。

学科概要

化学・バイオ工学科は工学部のなかの学科の一つです。まずは、化バイで学ぶ内容について見ていきましょう。化学・バイオ工学科のホームページには

化学は「形」あるところすべてに関係する学問です。 そのため、私たちの学科はすべての学生が幅広い分野を学びながら自分の適性にそって専門に進むことができる「一体教育」を行っています。 学科には応用化学・化学工学・バイオ工学の3 コースがありますが、3 年次まではすべての学生がおなじカリキュラムで学ぶため、 社会に就職後も専門分野にとらわれず幅広く活躍できる人材育成を行っています。

とあります。つまり、はじめはすべての学生が応用化学・化学工学・バイオ工学の基礎的な内容を学習します。各分野の具体的な内容は次の通りです。

● 応用化学:原子レベルでの物質の構造や機能の制御を目指します。高校化学のイメージに一番近いと思われます。
● 化学工学:高品質な化学製品を効率よく・環境に優しく製造することを目指します。化学工場など、産業との関わりが強い分野です。
● バイオ工学:化学をベースに生物のからだの仕組みを理解し、私たちの暮らしに役立てることを目指します。

化バイは、4年次に上がる際にこれら3分野の中から1つを選び、それを専門的に学ぶというシステムになっています。それぞれの分野を一通り学んだ後で専門分野を決めるので、「この分野に進んでみたけど、自分がやりたいことと違った」という状況を避けることができます。

以上が化バイの概要ですが、「○○学部、○○学科と化バイはどう違うのだろう?」という疑問を持っている人も多いと思います。東北大の受験生の場合、理学部化学科、農学部、薬学部と化バイで迷う人が多いようです。そこで、これら学部/学科と化バイの違いを以下で説明します。

理学部化学科との違い

理学部

↑理学研究科合同C棟(青葉山北キャンパス)。主に理学部の3、4年生と大学院生がここで勉強や研究に取り組んでいます。

理学部化学科と化バイの大きな違いは、理学部化学科は研究・アカデミック志向が強いという点です。

卒業生の進路選択に、この違いは大きく反映されています。それぞれの学部の公式ホームページから得られた進路状況をまとめると

<理学部化学科>
学部卒業後、91%が修士課程進学。修士課程修了後、27%が博士課程進学

<化バイ>
学部卒業後、96%が修士課程進学。修士課程修了後、8%が博士課程進学

となります。どちらも修士課程まで進むという点は同じですが、理学部化学科のほうが博士課程への進学率が高くなっています。

東北大に限らず、一般に理学部と工学部では理学部は研究寄り、工学部は実践寄りと言われています。アカデミックな研究に専念したい!という気持ちが強ければ理学部化学科、実践的な事柄も学びたいなら化バイ、という選択もありかもしれません。もちろん、化バイで博士課程に進学したい!という人も、手厚いサポートが受けられます。

農学部との違い

青葉山新キャンパス(農学部

↑青葉山新キャンパス。2017年に開設された、比較的新しいキャンパスです。農学部はこちらに位置しています。

学科概要で紹介したように、化バイは「応用化学系・化学工学系・バイオ工学系」という3つの系統の内容を学びます。応用化学系と化学工学系の場合、生物とはほとんど関連のない研究内容もあります。(私は化学工学系でしたが、研究対象はガラスやプラスチックなどの物質で、バイオ要素はありませんでした。)

これに対し、農学部は

食料、健康、環境に関する広範な知識と技術を理解・習得し、豊かな農学的思考を基礎にして、資源生物の生産と活用、食料の生産と健康増進、生物遺伝資源の保護、環境の保全修復に貢献できる指導的・中核的人材を養成する。

とあり、食料、環境や生物資源に関わる内容が中心となります。これが、農学部と化バイの大きな違いだと思います。

取り扱う事柄にも、違いがあります。化バイのバイオ工学系の場合、生体の仕組みを分子レベルで解明する、といった側面が強いです。例えば、タンパク質や酵素の分子構造、細胞内のイオンチャネルに着目した研究が行われています。実験では、植物などから抽出した試料や、実験用の細胞を使うことが多いようです。

農学部はより実践的で、フィールドワークなども行われているようです。農学部の詳細については当該学部のホームページ等も確認してみてください。

薬学部との違い

薬学部

↑薬学研究科A棟(青葉山北キャンパス)。このほか、薬学部には薬用植物を栽培する植物園などもあります。

薬学部と化バイの大きな違いは「薬学部のほうがより人命に直接的に関わることを扱い、患者の方との距離が近い」という点です。

化バイで行われているバイオ系の研究は、基礎研究という側面が強いです。そのため、化バイでは臨床研究など、ヒトを直接の対象とした研究を行うことはありません。これに対し薬学部は、薬局での実習や臨床研究で、実際の患者の方と関わることがあります。また、薬学部には薬剤師免許取得のための課程がありますが、化バイにはありません。つまり、薬剤師免許を取得したいのであれば薬学部に行く必要があります。

「医薬品に興味がある」という人は、どのような形で医薬品と関わりたいのか考えてみるとよいでしょう。医薬品の分子構造に興味があるのか、それとも患者さんとの関わりも含めて興味があるのか。薬剤師免許を取得したいのかどうか。卒業後の進路も含めて、様々な観点から考えてみましょう。

おわりに

ここでは、化バイの特徴を、他の学部や学科と比較しながら概観しました。化バイは化学やバイオに関する内容を、実践的なものも含め幅広く学べるという特徴があります。以下に、今回紹介した学部/学科のリンクを記載していますので、充分な情報収集を行い、自分に合った選択をしましょう。



▼化学・バイオ工学科のページ。学生生活の様子が詳しく載っています。

▼化学・バイオ工学科と大学院のページ。詳しい研究内容はこちら。

▼理学部化学科のページ。

▼農学部のページ。

▼薬学部のページ。











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