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ニンジャスレイヤーTRPGシナリオ「ブロークン・ボーダーライン」前日譚:短編小説「シャドウ・ソング」

◆機械◆ドーモ、T1000Gです。この記事は私がNMを担当していたセッション「デッドリー・ボーダーライン」の続編が出ることとなったので、次のセッションの前日譚をまとめたものになります。実際「デッドリー・ボーダーライン」を行ったメンバー「ザイバツ・バスターズ(仮名)」はキャンペイグン化する予定です。彼らのこれから訪れるであろうイクサの前日譚を目撃せよ!◆千◆

前回セッション「デッドリー・ボーダーライン」のリプレイはこちらを参照。PLの1人であるせにすち=サンが書いてくださいました!感謝!

◆注意◆前日譚は小説めいた何かであり、ダイスブッダ要素は殆どない◆

◆◆◆◆◆


空は暗黒に包まれていた。昼も、夜も、コンビナート群から吐き出された重金属含酸性雲がネオサイタマを覆う。陽の光が、ネオサイタマを照らすことはない。代わりにネオサイタマを照らすのは、マッポのマグロ・ツェッペリンの漢字サーチライトや、「実際安い」「フリーズドライ・ヌードル」「マル=サン」と書かれたネオン看板だ。

オソラクカナリタカイ・ビル、その屋上。ネオサイタマの暗黒よりも暗い、より暗い影が、亡霊めいて轟く風に吹かれて揺らめている。その影のシルエットははっきりしない。ただ一つわかるのは、胸部が豊満と言う事だけだ。影は懐から端末を取り出し、それを確認する。

#SOUKAINET14:
『シャドウソング=サン。君の任務は例の四人衆がイクサした「ザイバツ駐留部隊」の調査だ。
前のイクサは境界線上だったが、奴らはどうやら我々の領域に潜伏しているらしい。健闘を祈る』

#SOUKAINET14:
『了解』

シャドウソングと呼ばれた影はIRC端末を懐にしまうと、ネオン輝くネオサイタマのストリートめがけ跳ぶ。NSPDのマグロ・ツェッペリンの漢字サーチライトがその影を捉えることはない。彼女は斥候ニンジャなのだから。

前転着地し、コンクリートへその衝撃を逃がす。ウケミの基本ワザである。彼女は人気の少ない路地裏に降りた。微かにニンジャソウルの痕跡を感じる。歴戦の斥候ニンジャであるシャドウソングにとって、ソウルの痕跡を辿ることなど容易い。

「先が思いやられる」「無事」「インガオホー」といった看板が、まるでこれから起こることを暗示しているかのように感じられた。だが、シャドウソングが止まることはない。彼女は組織に尽くすマシーン。自分が捕まり、辱められようとも、必ずや情報を上層部に届ける。それが斥候としての仕事だ。死ぬ時も、必ず1人。

ニンジャソウルの痕跡が途絶えた。外れか?否、彼女のニューロンが「怪しい」と告げている。己のニンジャ第六感を頼りに、数ある建物の中からある錆びれた廃工場を選び、しめやかに潜入した。表向きは錆びれた廃工場、落ち武者やユーレイといった類を本能的に恐れ、誰も近づく者はいない。

だが、中はどうだろうか?見よ、シャドウソングが全方位を警戒しながら進んでいくと、タタミ敷きの立派な廊下が広がっているではないか。右側や奥にはフスマがあり、貴族的な施設を思わさせる。彼女は本能的にジツを発動し、透明となっていた。

#SOUKAINET14:
『発見しました。座標を送ります』

#SOUKAINET14:
『ご苦労。君の任務は成功だ。帰ってきなさい』

#SOUKAINET14:
『いえ、私はもう少し内部を探ります。必ずや朗報を』

#SOUKAINET14:
『……了解した』

端末を操作し終えると、シャドウソングは影の見えるフスマに聞き耳を立てた。

―――「スローハンド=サンが亡くなったのは残念だ」「ハイ。ワシも残念です」「今回はそれもあるが、私はそれだけをしに来たわけではない。君の功績は私の目を引くものがある」フスマの奥では、赤熱する炭を思わさせる赤橙色のニンジャがチャ・ミキサーを用い、茶器の中のチャを泡立てて向かいのニンジャに差し出していた。

「つまらないものですが」「いえ、結構です。悪いです」複雑怪奇な礼儀作法シークエンス!ここで一度断らず即座に受け取れば、ムラハチである。この複雑怪奇な礼儀作法シークエンスを重んじるのはザイバツ・シャドーギルド。そのニンジャ達だ。間違いない。シャドウソングは唾を呑み、奥で起こっているその様を頭の中でイマジネーションする。

「そう仰らずに」「それでは」対する柿色のニンジャ装束に身を包むニンジャは、奥ゆかしく茶器を取り、二度回してそれに口をつけた。「ふむ」赤橙色のニンジャはその様をじっくりと観察している。礼儀作法シークエンスに誤りがあれば、柿色ニンジャは赤橙色のニンジャの視線に耐え切れず、自らセプクを申し立てるであろう。赤橙色のニンジャは小さく頷いた。

「ワイルドハント=サンが亡くなった今、このネオサイタマ部隊を指揮できるマスター位階の人材は君のみといっても過言ではないだろう。ボーツカイ=サン」「いえ、ワシのような者には身に余ります」ここで即座に「ヨロコンデー!」などと歓喜の言葉を口走れば、先程と同じようにムラハチを受けることは必然。これもまた、複雑怪奇な礼儀作法シークエンスの一つである。

「そう仰らずに」「いえ、他にも優秀な人材はおられましょう」また一度断る。そうしなければならないのだ。「ボーツカイ=サン。そろそろブッダもお怒りになる」「それでは。身に余る役目ではございますが、尽くさせていただきます」ボーツカイと呼ばれたニンジャは奥ゆかしくオジギした。

―――シャドウソングは気付いていた。ザイバツの最上級ニンジャ達……グランドマスターが、ネオサイタマに来ている……!有益な情報は入手した。潮時か。シャドウソングは素早く、そしてしめやかにその場から立ち去った。

……その様を、鷹を腕に乗せたシルエットの影が見ていたことも気付かずに。「行こうか。アヤミ=サン」

◆◆◆

シャドウソングはコートを羽織り、メンポを取ってネオサイタマの猥雑なストリートを歩いていた。この姿であれば、誰も彼女をニンジャとは認識することはない。路地裏では女性のホームレスが、ヨタモノの集団にファックされていた。シャドウソングは顔を歪めたが一瞬で凛とした表情を取り戻し、そそくさとその場を立ち去る。

キューン!バイオイーグルが獲物を求めてネオサイタマの夜空を旋回する。あのヨタモノがファック&サヨナラをすれば、女性の死体はあのバイオイーグルのエサとなるのだろう。シャドウソングは無意識に、ネオサイタマの暗黒に包まれた空を見た。「……」

その時!

シャドウソングが気付いた時には、バイオイーグルが彼女めがけ滑空してきていた。大きく荒々しいバイオイーグルだ。その荘厳な姿だけでも驚きに値するものだが、特筆すべきはそのクチバシである。カタナを咥えているのだ!

「!?」「キューン!」バイオイーグルはクチバシのカタナでシャドウソングの首を切り落とさんとす!だが彼女はニンジャだ!即座にブリッジ姿勢へ移行し、この奇襲攻撃を回避する。急な姿勢変更で、彼女の豊満な胸が揺れた。

「む」シャドウソングはコートを捨て、異様なアトモスフィアの在処を瞬時に見つける。そこには、甲冑めいた装束を身に付けたニンジャが、バイオイーグルを愛撫しながらシャドウソングを冷たい目で睨んでいた。

「ソウカイヤが見つけてしまったか……だが死ねば元に戻る……死ねばな……ドーモ、デスナイトです」「……」シャドウソングは黙っていた。彼女はタント・ダガーを抜き、そのブレードを自らの血で汚す。そして、一瞬にして空中に文字を描いた。「シャドウソング」と!デスナイトのニンジャ視力は確かにそれを捉えた。

「ほう……喋れないか」「ザッケンナコラー!」突如、シャドウソングは今までの所業からは予想もつかぬヤクザスラングをデスナイトに浴びせた!「何……?」「イヤーッ!」シャドウソングはコンクリートを強く蹴り、大きく跳躍!そのままデスナイトめがけてトビゲリを繰り出した!

「イヤーッ!」デスナイトはこのトビゲリを身を逸らして回避!「君はどちら何だか。喋るのか喋らないのか」デスナイトは跳躍して距離を取り、スリケンボウガンをシャドウソングめがけ射出する。バヒュンバヒュンバヒュン!「イヤーッ!」シャドウソングはチャクラムめいた大型スリケンでこれを弾く!

「キューン!」そこにカタナを咥えたバイオイーグルがシャドウソングめがけ高速滑空!シャドウソングの腕を切り落とさんとしている!「イヤーッ!」シャドウソングはこの奇襲攻撃をチャクラムめいた大型スリケンで弾きながら、流れるようにデスナイトにチャクラムを投擲!「イヤーッ!」デスナイトはイアイドー斬撃を繰り出し、このチャクラムを切断した!

切断されたチャクラムの破片がデスナイトに当たることはなかった。しかし、その破片がブーメランめいて戻ってきたのだ!「グワーッ!?」予想外の機動をするチャクラム破片を受けるデスナイト!「ほう……なかなかだ。君のカラテは実際良い」デスナイトは冷たい声でそう呟いた。

「キューン!」バイオイーグルが滑空し、シャドウソングに右袈裟切りをを繰り出す!「イヤーッ!」シャドウソングはこれを腕を回して逸らす。だが、バイオイーグルが視界から消えるとそこには、間合いを詰めたデスナイトの姿が!「イヤーッ!」デスナイトの恐るべきイアイドー斬撃!

「ンッ!」咄嗟に腕をクロスし、その腕に装着したブレーサーでこの斬撃をガード。そして腕を勢いよく開放!「ヌゥーッ!」デスナイトがよろめく。「イヤーッ!」そこにシャドウソングはデスナイトの首目掛けクロスチョップを繰り出した!これを食らえばデスナイトの首はカタナを刺された海賊めいて首を天まで吹っ飛ばすことだろう!

「キューン!」だがバイオイーグルがシャドウソングの関節に滑空斬撃!「ンアーッ!」右足を負傷し、膝をつくシャドウソング!クロスチョップはデスナイトの甲冑めいた装束を傷つけるのみ。そこにデスナイトは左斜め下から右上目掛けてシャドウソングを斬り上げる!「ンアーッ!」衝撃で宙に浮くシャドウソング!無防備状態である!

「終わりだ」デスナイトが無防備状態のシャドウソングめがけイアイドー斬撃を繰り出そうとした、その時!彼女はノイズめいて揺らぎ、一瞬にして姿を消したのだ!「何」一方姿を消したシャドウソングは素早くワーム・ムーブメントで地面を転がって距離を取っていた。更に、チャクラムめいた大型スリケンを取り出し、カラテをこめて投擲した!「キイィヤアーーッ!」

「ヌゥーッ!」デスナイトは己に迫る処刑ギロチンめいたチャクラムをニンジャ第六感で感知し、身を逸らしながらカタナで防いだ!バリィーッン!カタナのブレードは、チャクラムによって破砕!ゴウランガ!デスナイトは得物を失ったのだ!

「イヤーッ!」ステルス・アンブッシュ!彼女はチャクラムを投擲した後、デスナイトの死角に素早く回り込み、殺人的なチョップ突きをデスナイトに繰り出したのだ!「キューン!」野生の勘か。バイオイーグルはこのステルス・アンブッシュに一早く気付き、妨害する!「ンーッ!?」ステルス・アンブッシュは不発に終わり、シャドウソングは体勢を崩す!

「これが絆というものだ」デスナイトは一瞬でシャドウソングの懐へと近づいた。中腰姿勢からの両腕を弦めいて後ろへ引き絞る。この予備動作は!「イヤーッ!」デスナイトの両掌が、シャドウソングの胸と腹にめり込む。これぞデスナイトのヒサツ・ワザ、ダブル・ポン・パンチである!

「ンアーッ!?」致命的打撃!その一瞬の衝撃でシャドウソングの装束が爆ぜ、デスナイトへと付着する。くの字めいた状態となりワイヤーアクションめいて吹っ飛んだ!そして壁に叩きつけられ、意識を失いかける。「ンアッ……」今の攻撃で骨が何本折れたことだろうか。骨が肉に刺さる感触が彼女を襲い、苦痛に顔を歪ませる。しかし彼女はまだ諦めていなかった。満身創痍、豊満が露わになった半裸の身でありながら、彼女はチャクラムめいた大型スリケンを杖に立ち上がった。

「一緒に殺そう。アヤミ=サン」デスナイトは夜空を旋回するバイオイーグルを一瞬見て、冷たく呟いた。「キューン!」バイオイーグルがそれに応えるかのようにシャドウソングめがけ滑空する!「くっ…!」シャドウソングはその攻撃を最小限の動きで躱す。この攻撃の後には、デスナイトの攻撃が待っていることは理解している!

彼女の予想通り、デスナイトは小刻みな足さばきで瞬時にシャドウソングのワン・インチ距離へと近づく!「イヤーッ!」右フック!「イヤーッ!」ガード!「イヤーッ!」左フック!「イヤーッ!」ガード!「イヤーッ!」右フックと見せかけ左フック「ン……!」辛うじてガード!「イヤーッ!」フックと見せかけ頭突きを繰り出す!「ンアーッ!?」シャドウソングはよろめく!

デスナイトは再び中腰姿勢から両腕を引き絞った。ダブル・ポン・パンチの構えである。「…イヤーッ!」デスナイトは両掌を目の前の女の肺と腹めがけ繰り出した!「ンアア――ッ!?」シャドウソングは致命的な攻撃を受けた。ワイヤーアクションめいて吹っ飛び、再び壁に叩きつけられる。彼女の内蔵はボロボロである。

「ン……がはっ!」大量の血を吐いた。ノイズめいてシャドウソングの姿が揺らぐ。ステルス・ジツだ。だが完璧に発動していない。血を吐きながらタント・ダガーを持ち、冷たいコンクリートを這いデスナイトへ近づこうとする。

「悲しいことだ。君のそれが私に届くことはない。私とアヤミ=サンの絆が、君に勝った」「……!!」デスナイトは易々とシャドウソングからタント・ダガーを取り上げ、それを彼女の背中に深く突き刺した。「ンア……」シャドウソングは最後に感じたのは、冷たいコンクリート、温かい血液。

#SOUKAINET14:
『ゲイトキーパー=サン。座標を送ります』

「サヨナラ!」シャドウソングは爆発四散した。装束の破片や粉末が、デスナイトの甲冑に付着する。「行こうか。アヤミ=サン」デスナイトはタント・ダガーを持って帰ることとした。勝利の証として。抹殺の証として。デスナイトがタント・ダガーに仕込まれた発信機に気付くことはなかった。そして、彼女が残したものにも……。

◆終わり◆


最後に:
皆さん最後まで読んで下さりアリガトゴザイマシタ!彼女のタント・ダガーがこれからあの四人にどんな影響を及ぼすのか。また、彼女が残したものとは一体何だったのだろうか。それはこれからのオタノシミだ!ザイバツ・バスターズ(仮名)の物語は動く……。

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