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カマキリの赤ちゃんに再び出合った。の巻。

 今夏の初めから、一匹のカマキリの赤ちゃん(カマちゃん)が我が家のタイムの鉢植えでスクスクと育っていた。夏の半ばに10日間ほど鉢植えの水やりを大家さんにお願いしたのだが、この間にタイムは見事に枯れ、カマちゃんも巣立ってどこかへ行ってしまった。鉢植えの滅亡は大家さんの予言どおりで、予言の負の力を改めて思い知ったのだった。

 それから約3週間後、大家さんの庭を見下ろす我が家のベランダで、一匹のカマキリが立ち尽くしていた。完全に成長しきった成虫とは呼び難い、中くらいのサイズ。カマちゃんが順調に大きくなっていたら、ちょうどこのくらいの大きさなんじゃないかと思われた。胸の鼓動が高鳴り、汗だくで“カマちゃん”に話しかけた(掃除機をかけているところだったのだが中断して)。

 そして昨夜。ここ数日の間にめっきり元気になってきたバジル(薄緑色の小さな葉を茂らせるタイプのもの。グリークバジルだと思われる)の枯れ葉を取り除いていたときのこと。目の前に何か小さなものがピョンと跳んできた。

 カマキリ!ちいさっ!

 その子は、初夏に出合ったカマちゃんよりもさらに小さかった。私の爪半分ほどの大きさ。生まれて間もないのか、薄茶色で、まだバジル色にカモフラージュできていない。じっと見つめていると、私のことを立派な木か何かだと思ったのか太ももへ跳び乗ってきた。

 カマ〜(と命名)、いらっしゃい。産毛が心地良いかい。

 日本では通常、春から初夏にかけて孵化するといわれているカマキリ。 キプロスの夏は長いのだが(10月頃まで)、最近また朝晩に初夏のような涼しい風が吹くようになったので、いのちも呼応して芽吹いているのかもしれない。ベランダのハーブ類でいえば、グリークバジルだけでなく、パイナップルミントも蘇ってきた。

 これまで我が家周辺で遭遇しているカマキリは、ハラビロカマキリと特徴が似ている。なんといっても、幼虫のときのクイッと上に反り上がった腹部の形状が可愛らしい。どんなに眺めていても飽きることがないのだが、一体どうしてカマキリの赤ちゃんにはこんなにも愛らしさを感じるのか。

 愛しい気持ちのなかには、よくできたミニチュア人形(昆虫形?)を見ているような愉しみと驚きが混ざっているように思われる。体長1センチあるかないかという小柄なボディなのに、翅を除くあらゆる外部器官が揃っている。とても精巧なつくり。そして、まだ飛ぶことはできないけれど、俊敏に跳び、狩りをする。ボクサーのような左右に動く独特の動きも、すでに身についている。

 ニューカマ〜の出現。新たな出合いに心躍った夜。またひとつ、日々の生活に喜びと彩りを加えてくれるものが増えた。カマ〜の誕生、引っ越し、そして定住を記念して一筆。

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