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インボイス制度の導入に伴う独占禁止法・下請法上の留意点

インボイス制度の導入に伴う免税事業者への対応につき、2022年10月から11月にかけて3回にわたり、「裏Q&A」と称した記事をこのnoteに書いてきました。幸い、多くの方にご覧いただき、今般、これらの記事にいろいろ加筆した冊子を、SMBC経営懇話会・実務シリーズNo.267として標記のタイトルでSMBCコンサルティングから出版いただくこととなりました。
そこで、noteでも加筆後のものを冊子頒布価格と同額での有料記事として差し替えて掲載いたします。冊子は、一般の書店では販売されていませんが、SMBCコンサルティングのサイトでお求めいただくことができます。

はじめに

インボイス制度は、2016年の消費税法改正によって導入され、2023年10月1日から施行されます。2016年の改正では、消費税率が10%に引き上げられるにあたって、飲食料品等に対して適用する軽減税率が導入され、それについてはマスコミでも大きく報道され、世間の注目を集めました。他方、インボイス制度の導入については、施行期日が随分先であったためか、それほど世論の反発を受けることなく採用に至りました。

しかし、インボイス制度の施行期日が近づくにつれ、インボイス制度の導入に伴い想定される事態が認識されるようになり、不安や危惧の声が高まってきました。とりわけ、インボイス制度の導入に伴って、消費税の免税事業者が不合理な不利益を負わされるのではないかという、独占禁止法(優越的地位の濫用)や下請法上の懸念が示されています。

こうしたことから、政府は、財務省、公正取引委員会、経済産業省、中小企業庁および国土交通省の連名で、2022年1月19日、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」を公表しました(同年3月8日一部改正。以下「公式Q&A」と呼びます)。また、公正取引委員会は、「インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え方」というポンチ絵を公表しています(以下「公式ポンチ絵」と呼びます)。

公式Q&Aや公式ポンチ絵は、当局の解釈指針を示しており、非常に重要なものですが、諸々の事情があるのか、肝腎なことが言及されておらず、実務に混乱を招いていると感じることがあります。そこで、公式Q&Aや公式ポンチ絵の行間から理解することができる考え方について、企業の実務の観点から一歩踏み込んだ解説をしたいと思います。

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