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#4. 不思議な関係

いつから、どちらから始まったのか正確には覚えていないが、中3の時少しだけ付き合った元カノと、お互いの誕生日にお祝いメッセージを送り合うということが未だに続いている。中学卒業の辺りで付き合うもすぐに別れ、最後に会ったのは自分の記憶の限り多分成人式。

出会いは中学3年生。受験に備え塾へ通うことを決め、同じ学校の仲の良い友人が通っているという理由で近場の塾へ体験に行くことにした。体験授業当日、受付で手続きを終え少し緊張しながら入った教室に彼女<Aさん>はいた。別の中学から通っていたAさんはセミショートが似合う可愛らしい子で、初めて見たその時から「仲良くなれたらいいな」なんて漠然と思っていた。余談だが、その時の授業にはもう1人別の中学の女子<Bさん>がいた。友人も自分と同じクラスで授業を受けていたので、授業が終わった後「Aさん可愛い」と話したところ、彼はBさんの方が好みだったらしく、なぜかその場で「AさんとBさんどっちが可愛いか」という議論になり、しかも自分がキツく(多分、お前は全然分かってないだの何だの)言いすぎてその友人を泣かせてしまった。そこにたまたま先生が通りがかったのだが、事情を聞いた後の先生の「こいつ体験に来た初日から何してんの...」みたいなドン引きした表情を未だに覚えている。先生、自分も多少は大人になりました。

話を戻そう。体験を終えて入塾したのが春過ぎ頃かな。クラス分け用の入塾テストの結果Aさんと同じクラスになった。そこから週2,3のペースで塾に通っていたが、Aさんとは会った時挨拶を交わすくらいで特に会話をすることもなく淡々と塾通いが続いた。何となく周囲の目も気になって。中学生の時って、何となくそういうのあるよね。

そして迎えた夏休みの時期。当時学校からは「税の作文」の課題が出ていた。確か原稿用紙3枚分くらい。それが面倒だった自分は、その時たまたま塾の自習室で一緒に勉強していたAさんに「税の作文できてたら貸してくれない?」と聞いてみた。そしたら「いいよ~」と返事があり、次に塾で会った時作文を持ってきてくれた。その中に手紙が入っていた。A4サイズで1枚。「読めない所あったら言ってね」みたいな内容だったけど、それが嬉しかったので返事を書き後日渡した。別になんてことない「作文ありがとう。助かったよ~」といった感じの内容だったと思う。

そしたら次会った時に返事をもらった。それに返事を書き後日渡して、また向こうから返事がきて...どちらから言うでもなく、自然な流れで塾で会う度の手紙交換が始まった。周りに人がいて何となく渡しにくい時は、次会った時に渡せなかった分も含めて2回分渡すか、歩いて追い越した時にわざと目の前で落としたりしていた。

何となくいい感じだなと思っていた。いつしか、向こうからの「To ●●くん」という手紙での呼び方も苗字から名前に変わっていた。それに合わせて、手紙の最後の「○○より」というAさんの名前の部分も苗字から名前に。勉強やお互いの学校の話、そして恋愛の話。手紙を書く時間が楽しかったし、返事を貰うのがいつも待ち遠しかった。周囲の誰にも明かさない2人だけのやりとり。多分もうその頃Aさんを好きになっていたと思う。手紙の中で「好きな人がいる」と書いたこともあるが、それに対し「告白したら絶対成功するよ!頑張って」ということも書いてあった。嬉しくて舞い上がったけど、告白するのは受験終わってからの方が良いかな。自分はそうしたかった。上手く切り替えることができない気がしたから。どうしようか。考えながらも塾へ行き手紙を交換する日が続いた。

が、突然その状況は一変する。時期的には年末近くだったと思う。ある日学校の他のクラスの女子に呼ばれ「今日一緒に帰らない?」と言われた。仲は良くも悪くもなかったと思う。帰り道の方向が同じなのは知ってたから「部活で遅くなるけどそれで良いなら」と。待ってるとのことだったので、部活終わりに合流し一緒に帰った。話の内容は特に覚えてないが多分当たり障りの無い会話。

それから2~3日後塾へ行きAさんから手紙をもらったが、普段とどこか様子が違う。いつもは家に帰って手紙を読んでいたけど、その違和感が気になったので、授業が終わった後空いている教室に入り手紙を読んだ。そこには全体的にヤケクソな字体の文章が並んでいた。明らかにいつもの手紙の雰囲気とは違う。何より、「To ●●くん」という呼び名が名前でなく苗字で書かれているのが見えイヤな予感がした。内容は「学校で女の子と2人で帰ったって聞いたよ。きっとその人●●くんのこと好きなんだよ。おめでとう。その子に悪いからもう手紙交換やめよう。返事もいらない。まぁ、その子との進展連絡くれてもいいけど」というものだった。

目の前が真っ暗になった。現実味のない、重いのか軽いのか分からない足取りで帰宅し「一緒に下校した子とはそういう関係じゃない」と手紙を書き、次に塾で会った時渡した。ところが、何となくそれで手紙交換は終わってしまい(それ以降は授業中「この授業難しいね」という紙が1回来たくらい)、塾で会っても軽く挨拶を交わすだけの関係になった。受験本番が差し迫る中、何となくもやもやした感じが嫌だったので正月を過ぎた辺りで告白をした。告白は成功して付き合うことになり、お互い無事志望校に合格したけど、何となく続かず「彼氏彼女」という関係性は中学卒業の時期と共に終わった。

成人式で中学振りに再会した時は、何だか照れくさくて良い時間だった。お互い年とったね、みたいなことを他愛もなく話したと思う。誕生日にお互いメッセージを送る、ということはこの辺から始まったのかな。特に会おうという話もしないで(0ではなかったけど結局成人式以来会ってない)、「誕生日おめでとう」という言葉と、簡単な一言。「元気?」「仕事どう?」とか。以前一度「塾でやりとりした手紙まだ残ってるよ」と伝えたら「捨ててー笑」と返ってきたけど、懐かしく甘酸っぱい青春が詰まった手紙は、とてもとても捨てられない。

不思議な関係。もうじき向こうの誕生日だけど、その度に「今年も夏が来るな」と、毎年の風物詩のように思っている。この関係性は何と言うのだろう。どうでもいいか。お互い健康で、毎日を一生懸命頑張っていればそれで良いのだ。そして年に1回お互い「おめでとう」と。この投稿が見られることは無いと思うけど、まぁ見られても全然構わない。毎年ありがとう。そして、これからもよろしく。

End.

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