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【#ミレニアル・Z世代の寄付論】寄付者の「善意」に依存したファンドレイジングは、もう限界だ。

皆さん、こんばんは!社会問題と向き合う人のクラウドファンディング GoodMorning(CAMPFIREのグループ会社)キャンペーンプランナーのてっちゃんです。

今回は『寄付者の「善意」に依存したファンドレイジングは、もう限界だ。』と題し、これからの時代のカルチャーの発信源であり、生産労働人口の中心となる、ミレニアル世代やZ世代の興味・関心や消費行動の特徴から、今後の非営利セクターが抱えうるファンドレイジングの課題について、考えていきたいと思います。

震災や感染症等による変化の激しい時代において、スピーディーに課題解決に取り組める民間の非営利セクターの重要性は年々増しており、非営利セクターが迅速、且つ持続可能な活動を続けていくためには、計画的なファンドレイジングの戦略が必要不可欠です。

そんな非営利セクターが、近い将来に抱えうる課題とその解決策、そしてファンドレイザーが果たすべき役割について、寄付大国であるアメリカの現状から一緒に考えていきましょう。
※ 記事の内容は私個人の見解であり、CAMPFIRE / GoodMorning 公式の意見・見解ではありません

1. 急速に低下するミレニアル・Z世代の寄付率

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まずはミレニアル・Z世代の寄付率の現状に関するデータからご紹介します。少し古いデータになりますが、Stanford Social Innovation Review の『For Good or For Ego?Changing Motivation for Philanthropy and Their Impact on Funding』によると、2000年以降、寄付をするアメリカの家庭は減少傾向にあります。2000年には66%だった寄付率は、2016年までに12%減少し、54%になっています。

その中でも特に注目すべきは、ミレニアル・Z世代に該当する、30歳以下の若年層の寄付率です。2005年には47%だった寄付率が、2016年までに22%も減少して、25%になっています。

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気候変動の危機を訴えるグレタ・トゥーンベリさんを起点として、Twitterで全世界へ拡散され、世界的なムーブメントとなった「#FridaysForFuture」。ミレニアル・Z世代は、スマートフォン一つで新しいカルチャー作り出すことが、当たり前の時代に生まれた世代であり、その中心に存在するのがミレニアル・Z世代です。

そして、その世代が数年後には生産労働人口の中心となる時代が訪れます。その存在は、ビジネスセクターのみならず、非営利セクターも既に無視できなくなってきているのではないでしょうか?

2. ミレニアル・Z世代は社会問題に関心がないのか?

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それでは、ミレニアル・Z世代は社会問題に興味・関心がなくなってしまったのでしょうか?答えはNOです。寧ろミレニアル・Z世代の社会問題に対する関心の強さは、他の世代を上回っています

アメリカのコーン・コミュニケーションズが行った、企業のCSR活動に関する調査によると「企業は社会的・環境的課題に取り組むべきだ」と回答したZ世代は94%で、他の世代よりも数値が高いことが明らかになっています。

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また「#FridaysForFuture」や「WE Day」に代表されるように、ミレニアル・Z世代の社会問題に対する関心や連帯感は非常に強い印象を受けます。

日本国内でも、大学時代に非営利セクターでインターンを経験し、大学卒業後のファーストキャリアで非営利セクターを選ぶ若者も、株式会社ボーダレスジャパンMAKERS UNIVERSITYから、社会起業家を志す若者も増加傾向にある印象を受けます。

それでは、何故それと逆行するように、ミレニアル・Z世代の寄付率は大幅に低下しているのでしょうか?

3. ソーシャルアクションの「多様化」と「対価性」

ここからは僕の個人的な見解ですが、ミレニアル・Z世代の寄付率が大幅に低下している要因は、ソーシャルアクションが「多様化」し、その中で「対価性」の勝負に負けた「寄付」が選択されなくなったからではないかと考えます。

ここ数年でソーシャルアクションの選択肢は、非常に多様になりました。以下に「消費」と「時間」に分けて、いくつか事例を紹介していきます。

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モノづくりを通じて途上国の可能性を伝える、株式会社マザーハウスの質の高い革製品や、人や環境に配慮した、デザインや品質の良い洋服を集めた株式会社ボーダレスジャパンのセレクトショップ「Enter the E」など、エシカル消費の質の向上、及び選択肢の増加により、個人が普段のお買い物と変わらない、純粋な購買行動を通じて、社会貢献できるようになりました。

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また、ジェンダーニュートラルなアンダーウェアブランドである「REING」のアンダーウェアなど、社会的なメッセージが強く込められたプロダクトを購入することで、彼らが発信している世界観を支持し、その世界観を作り出す仲間であることの意思表示ができるようになりました。

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資金調達の手段として当たり前になりつつある、クラウドファンディングに対する支援も、その多くは「購入型クラウドファンディング」であり、構造的にはリターンを販売しているECサイトと同義なので、厳密に言うと「寄付」ではなく「購入」に当たります。

魅力的なリターンの購入や、サイト上で簡単に支援ができる、非常に手軽な支援体験により、誰かを応援できたり、社会課題の解決に参加できるようになりました。

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「最高の授業を世界の果てまで届ける!」を目指す特例認定NPO法人e-Educationの海外インターンや「子どもの貧困に本質的な解決を。」を目指すNPO法人Learning for All の学習支援ボランティアなど、学生時代から社会課題の解決に取り組める機会は非常に多くなりました。

また、自身のスキルを社会課題の解決のために提供する、社会人のプロボノを受け入れる団体も増加傾向にあります。

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「ソーシャルビジネスで世界を変える」株式会社ボーダレスジャパンに代表されるような、社会課題の解決を目的とした事業や、それを後押しする仕組みが生まれ始め、若者が社会起業家を目指したりファーストキャリアでもソーシャルビジネスを選択できるようになりました。

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また「社会派クリエイティブ」を掲げる、辻愛沙子さんの手がけた、選挙に行くとタピオカが半額になるTapistaのキャンペーンのように、ビジネスセクターから社会的なメッセージを打ち出すことも、少しずつトレンドになりつつあります。

そのため、ソーシャルアクションの定義が拡張され、非営利セクターとビジネスセクターとの境目はどんどん曖昧になり、もはやどんな立場や職種からでも、社会課題の解決に参画できるようになりました。

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その他にも、署名サイト「Change.org」への署名や、性の多様性を祝福する「TOKYO RAINBOW PRIDE」への参加など、ソーシャルアクションは非常に多様になり、その中に「寄付」が含まれています。

それでは、上記のソーシャルアクションが並んでいるときに「対価性」の観点、つまり消費・参加することが純粋に楽しかったり、満足感が得られたりするのは、どのアクションでしょうか?そして、ミレニアル・Z世代は何を選び取るでしょうか?

この観点がミレニアル・Z世代の寄付率が低下している要因ではないかと考えます。

4. 寄付の「対価性」の議論をはじめよう

「多様化」するソーシャルアクションの中から「寄付」を選びとってもらうためには、寄付者の「善意」に逃げず、寄付の「対価性」の議論を、真正面からはじめることが急務だと思います。

それは、ただ寄付者に対するノベルティを充実させる、のような短絡的な議論ではありません。寄付者の非物質的で、言語化されていないニーズである「心の声」に耳を傾け、逆説的ではありますが、寄付者が対価として「何を購入したいと思っているのか?」に思いを馳せることが非常に重要だと思います。

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簡単な例をあげると、例えばYahoo!が実施している、医療従事者の支援活動に従事する団体に対する寄付キャンペーン。上記のキャンペーンに参加する人は、もちろん新型コロナウイルスの感染拡大防ぐために、現場の最前線で闘う医療従事者の力になりたい、と思っている勇気ある人でしょう。

その上で、もう少しだけ、じっくりと「心の声」に耳を傾けると、そんな社会のために勇気を出して、一歩を踏み出す自分を世の中に発信したい、知ってほしいという、言語化されていないニーズがある人かもしれません。

そのため「のりこえよう」と検索すると、検索数がリアルタイムで分かる、SNSで投稿したくなるようなデザインのビジュアルが表示され、自分がキャンペーンに参加したことを投稿することができるようになっています。

つまり、寄付者は「社会のために勇気を出して、一歩を踏み出す自分を世の中に発信する権利を10円で購入する」ことができるのです。故にその「購入者」は次々と現れ、その度にSNSで拡散されるため、キャンペーンの認知は広がり、5月2日16:30時点で既に200万人を超える人が参加しています。

5.  ファンドレイザーとは「寄付体験のデザイナー」である

Yahoo!が現在も実施しているキャンペーンには、今もなお非常に多くの方が参加し、既に2,000万円分の検索が、医療従事者の支援活動に従事する団体のために集まっています。

その勝因は、寄付者の言語化されていないニーズである「心の声」に耳を傾け、そのニーズを充足できるような寄付体験をデザインしたことだと考えます。寄付者の「善意」という言葉に逃げず、その「対価」として何を提供できるのかを考える続けることが、寄付を獲得する上で、非常に重要だと思います。

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そのため、ファンドレイザーの役割は「お金をください」と求めることではないと思います。寄付者の「心の声」をじっくり聴き、それを充足するために、寄付をする過程や、寄付をしたあとの体験をデザインすること、いわば「寄付体験のデザイナー」であることが、ファンドレイザーが担うべき最も重要な役割ではないかと思います。

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社会課題が複雑化し、スピーディーに課題解決に取り組むことができる、民間の非営利セクターの存在意義は増す一方で、それに伴いソーシャルアクションも多様化し、非営利セクターが一つの課題とその解決方法に対して、寄付を獲得していくことは、今後より一層困難になると思います。

その中で、寄付者の言語化されていないニーズを充足するためのカスタマージャーニーを描き、寄付体験をデザインする力が、ミレニアル・Z世代も含めた多くの人々に選ばれ、寄付され続ける方法ではないかと考えます。

6. さいごにー社会を変えるために、自分を変え続けるー

この記事は、現在の非営利セクターに対する強い危機感であり、近い将来に沖縄で挑戦する僕が真正面から向き合わなければ課題でもあるます。

その上で、コロナウイルスの感染拡大は、現在人々の消費行動を価値観レベルで大きく変化させ、寄付行動もその影響を強く受けているはずです。そして、これからも自然災害やテクノロジーの発展等の外的な要因で、状況は毎秒ごとに変化するのでしょう。

しかし、どんな時代であっても、変わってはいけないことがあるはずです。それは、生まれた環境や個人の特性に関係なく、すべての子どもたちが、自身の夢や目標、生きがい、幸せを当たり前に追求できる社会であること。そして、子どもたちを取り囲む大人たちが、それを実現する責任を果たすことです。

そのような社会の実現を目指す非営利セクターが、そして誰よりも僕自身が、時代の変化に取り残されている場合ではありません。時代の変化を肌で敏感に感じながら、社会に変化を起こすために、しなやかに自分を変化させ続ける姿勢を、育てていきたいと思います。

本日、緊急事態宣言が延長される方針が、政府から発表されました。なかなかこれからの見通しが立たず、本当に苦しい中ですが、明けない夜はないはずなので、今週も皆さん一緒に頑張りましょう。

If you wanna make the world a better place. Take a look at yourself, and then make a change. ー Michael Jackson『Man in The Mirror』


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