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自分たちでゼロから結婚式を創った夫婦の話し。~Ep18.結婚式1日目~

Ep18.結婚式1日目

 翌朝、雨は止んでいた。少し湿度が高くジメジメとしていたが結婚式1日目を迎えた興奮から眠気は飛んでいった。起きるなり寝室の扉を開け、外を見た。テントは無事だった。ただ、1か所屋根の布を外し忘れたテントは見事に折れていた。予備のテントは無かったため応急処置をして使用した。

 朝早くからスタッフはフル稼働して来場者に備えた。主役である僕とみはるもほとんどスタッフと同様に働いた。誘導を一手に任せていた長谷川は来場者の送迎と指示に追われ、もはやお祝いムードどころではなかった。リーダーの木内も現場の混乱を何とか収めようと奮闘していた。

 10時近くなって来場者が徐々にやってきた。1時間ほどすると会場は150人近い参列者で賑わいを増していた。まだ作業着で衣装に着替えてすらいなかった僕は最後の準備に追われながら、参列者と会話を楽しんだ。皆、口々に「こんな結婚式初めて。」「今まで一番楽しい結婚式。」「会えて嬉しい。」と言ってくれた。

 いよいよ、みはるも水色のドレスを着て僕もスーツに身を包んだ。皆の楽しそうな笑い声を聞きながら控室で嫁のドレス姿を見たときにようやく「やっとここまで来たな。」と実感した。外に出ると皆が一列になって迎えてくれた。

 僕たちの結婚式では原則として礼服を禁止した。ルールはシンプル。「女性はピンク色、男性は水色を使用すること。」ジャケットを羽織る人もいれば、ピンクのワンピースを着る人、Tシャツの人もいた。皆、思い思いの格好で見ているだけで楽しかった。

 入場の際はシャボン玉で出迎えてくれる予定だったが、待っている間にほとんど吹いてしまったみたいで残りの液がちょっとしか無かったが皆に祝福されていることが嬉しかった。

 最初の挨拶を一通り終え、あとは自由な時間にした。お腹が空いて食事に行く人もいれば、僕たちと写真を撮りに来る人、プロフィールムービーを見て楽しむ人もいた。

 とにかく、皆が楽しそうだった。半年前、僕が感じたあの「違和感」は無かった。そこにあったのは作りたかった「繋がり」だった。

 夕方、会が終わると引き出物を渡しながらみはると一緒にお見送りをした。僕たちは全員と話しながら来てくれた感謝を伝えた。「本当に今日は来てくれてありがとう。」その時出た言葉は決して社交辞令ではなく心から出た想いだった。

 その日は気を使ったこともあり、僕は2日目に向けたミーティングを途中で抜け死んだように眠りに落ちた。


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