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なぜ小池知事は都議選後、リベラルに「塩対応」し始めたのか

アゴラで今週火曜(9月5日)、『「いまさら」反小池に舵を切った朝日新聞の社説裏読み』と題した記事を投稿。朝日新聞が小池都政への批判ボルテージを上げた背景を分析したが、その中で残っていた「宿題」を考えてみた。

上記記事では、都議選が終わって朝日にとって小池氏が「反安倍」文脈での利用価値が半減したことなどを検証した。そして朝日が小池批判に転じる「口実」として関東大震災の朝鮮人犠牲者に対する追悼文中止問題が浮上したわけだが、その問題をスクープした東京新聞も含め、リベラルメディアが批判することを小池氏も計算済みのはず。マスコミ世論に敏感なはずの小池氏が、ここにきて“変化”を見せてきた背景に興味深いというのが前回執筆時の宿題だった。

自民党議員時代の小池氏は憲法改正に積極的な関係を表明、過去の選挙では、ゴリゴリの保守政治団体である幸福実現党と街頭演説などでコラボするなど、韓国では「極右政治家」扱いされるほどの保守的志向を見せていた。しかし都知事選に立候補して以降は、舛添都政で暴走気味に進めていた都有地の韓国人学校貸し出し見直しはあったものの、国会議員時代に見せた保守的言動は総じてなりを潜めていた。それどころか都知事になってから、ネット右翼から「左傾化」レッテルを貼られる行動が目立つようになる。

リベラルとの“蜜月”を象徴した宇都宮氏との接近

都知事就任直後、驚かされたのは宇都宮健児氏との急接近だ。就任1か月後の16年8月30日、宇都宮氏は、持論の「豊洲市場移転見直し」など10項目の要望書を小池氏に手渡しているが、メディア視点でこのとき興味深かったのは、都庁サイトの「知事の部屋」でその模様を公開したことだ。行政サイトでは、政治的中立性に配慮した運営が多く、都知事選に2度出馬し、直前の知事選も出馬をギリギリまで目指していた人物からの政策申し入れの画面をこれみよがしに提示するあたり「異例」に思えた。

都庁サイト「知事の部屋」より引用

政治的解釈を伴うマスコミ各社の報道だけでなく、都庁サイトでも掲載するあたり、政治的思惑がゼロのはずはない。そこには、宇都宮氏の支持層に対するアピールという裏目的もあるはずだ。宇都宮氏の支持層が特に重視していたのは市場問題。一方、この時点から約3週間前、小池氏はすでに築地移転について「立ち止まって考える」と表明。都政改革をアピールしたい小池氏といわば“利害一致”したようにもみえ、このあと、宇都宮氏は公の場でしばしば小池都政への期待を示すなど「蜜月」があったことは、小池氏のリベラル側への秋波を象徴する出来事だった。

そして今年6月、小池氏が「築地は守る 豊洲を活かす」というW市場活用を打ち出し、宇都宮氏は「無責任だ」と態度を一変。都議選が終わってからは小池氏への批判的言動がよく報じられるようになり、先ごろも市場関係者に辺野古のヘリ基地反対運動と同じように座り込みを薦めるアジテーションを繰り広げるまでになった。

ここで注意したいのは、市場問題だけにとらわれては本質を見失ってしまうことだ。たしかに市場問題に限定してみれば、宇都宮氏との利害が決裂しただけに過ぎないが、よく考えると、先述した朝鮮人追悼文中止問題も浮上したのも同時期だ。あくまで仮説ながら、ここ2ヶ月の小池氏のリベラル側への「塩対応」は、もっと視野を広く、政治的文脈でとらえ直してみる必要がある。

(続きは有料。またはDMMオンラインサロン「新田哲史のニュース裏読みラボ」でどうぞ)

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