見出し画像

越境する音と交錯する音楽人を通して読み解く東アジア

おはようございます。テツジンです。
ご訪問、ありがとうございます。
本日、昨日の話に続き、違う角度で李香蘭について論じてみます。
本日は、参考文献のタイトルに因んで「越境する音、交錯する音楽人」というテーマで話します。
今日は、下記の5つのキーワードに沿って話を進めます。

1. 記憶の場
2. 世代
3. 李香蘭
4. 玉置浩二
5.ジャッキー・チュン(張学友)

まず、「記憶の場」について説明します。
(少し難しい理論なので、読み飛ばして大丈夫です。)

現在、記憶の概念が人文社会科学で重要視されています。
それは、フランスの歴史学者である ピエール・ノラが率いるプロジェクト『記憶の場』の役割が大きいと考えられます。

ピエール・ノラはその著書『記憶の場(第 1 巻)』のなかで、記憶の場は「場」という語のもつ3つの意味――物質的な場、象徴的な場、そして機能としての場――においての場である。
3つの場が相互関連している例として「世代」を挙げている。ノラによれば、「世代は、人口上のことを指し示すがゆえに物質的である。また、記憶の結晶化も伝達もおこなうがゆえに機能的であると考えられる。そして、ごく少数のものたちが経験した出来事や体験によって、それを経験しなかった多数の者たちを性格づけるがゆえに、本質的に象徴的である」という。

ピエール・ノラの理論に基づけば、記念碑、駅、博物館、住所、言葉、食、本、切手、世代、映画、日付、世代、音楽・歌、などなどが記憶の場になりうると言えます。

本日、直接関係するのは、「音楽・歌」と「世代」です。


それでは、冒頭であげた残りのキーワードについて説明します。

☆李香蘭については、この二日間紹介したように、波瀾万丈の人生を送り、女優、歌手、政治家として活躍しました。


☆玉置浩二(1958年~)については、誰でも知っているロックバンド『安全地帯』のボーカリストですね。
日本だけではなく、中華文化圏でも大人気です。

☆ジャッキー・チュン(張学友 1961年~)は中華圏で四大天王の1人、「歌神」と呼ばれています。


李香蘭(1920年~2014年)は、戦前世代、玉置浩二(1958年~)と張学友(1961年~)は同じ世代です。
この3人の繋がりについてみてみましょう。


1989年12月21日と12月22日にフジテレビ系列局で、『さよなら李香蘭』(さよならりこうらん)が放送されました。フジテレビ開局30周年記念番組として製作され、人気歌手・李香蘭となった山口淑子の半生を描いた物語です。

主題歌『行かないで』は玉置浩二が作曲して歌いました。その後、ジャッキー・チュン(張学友)にリカバーされて中華圏でも大ヒットしました。中華圏では、北京語バージョンの『秋意濃』と、曲名自体が『李香蘭』となった広東語バージョンがあります。

どのバージョンでも、世代を越えて歌い継がれています。

李香蘭は亡くなりました。しかし、日中の狭間に生きてきた李香蘭の平和への思いは、日中のトップレベルの音楽人の交錯を受け、歌の連鎖によって、国境と世代を越えて歌い継がれていくでしょう。

私は語り部として、李香蘭について語り続けていきます。

参考文献
・玉置浩二&安全地帯オフィシャルサイト
 https://saltmoderate.com/

・ノラ,ピエール編/谷川稔監訳『記憶の場』第 1 巻、岩波書店、2002 年。
・貴志俊彦『東アジア流行歌アワー―越境する音 交錯する音楽人』岩波現代 全書、2013年。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?