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"静粛"というコア価値 AirPods Proのワオ!モーメントを考える。

なぜ、自分は声のインターネットに全力で投資するのか?の説明...

"静寂"という付加価値。

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あなたはもうAirPods Proを入手しましたか?

AirPodsの進化バージョン ワイアレスのカナル型ノイズ・キャンセリング式高性能イヤフォン。税別¥27,800 今はまだ生産が追い付かず、ヘタすると入荷迄1ヶ月待ち。異例の人気でアップルは生産ラインを二倍にしても、まだまだ品薄が続きそう。そう、年末商戦にギリギリ間に合った超ヒット商品。そう、その通り。

でも本当にそれだけ?否! AirPods Proを使い始めるとすぐに気が付かざるを得ない圧倒的な付加価値 それはその「静寂」なのです。
装着してすぐに訪れる(あるいは、天空から降りてくるような)静粛。これの破壊力はこのデバイスの強烈な存在理由であり、今回のヒットをもたらした、まさに「ワオ!モーメント」なのです。

僕の親友のヨシュア君はAirPods Proを試した時、その静寂に感動して思わず涙を流していました。だけれども、彼のその感動は決して大げさなものではなく、多くの人達が今まさに世界中で同時的に感じている強烈な体験価値なのだと思います。
僕はその体験価値「静寂」のパワーは単なる"イヤフォン"という製品カテゴリーの枠組みを超えた、もっと大きな世界観を我々にもたらす、非常に底深い可能性を秘めていると考えています。


世界観デバイスとは?

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AirPods Proは本当に久しぶりの世界観デバイスだと思います。

それこそApple II、Macintosh、iPod、iPhone、iPadなどの系譜に連なる、新しい世界観を世の中にもたらし得る製品だと思います。

自分自身の体験に即して言うと、僕はしがないエンジニア・サラリーマンだった当時(1987年頃)に奮発してその頃内臓メモリー1MBだった(外部記憶は80MB HDD)Mac Plusを買って人生が激変したという生々しい経験と記憶があります。
グラフィカルユーザーインターフェイス搭載のパーソナル・コンピュータで(それ自体が革命的だった時代です)オブジェクト指向のソフトウェア概念を独学でカタカタ学んでいると、世界中の開発者たちがデジタルネットワークを通じコードを流通させている世界観を鮮やかにイメージする事が出来ました(1980年代当時はまだモバイルコンピュータどころかWi-Fiやインターネット、ウェブすら存在していませんでした。)

ただ、世界観としては、十分、その当時でも想像する事が出来たのです。


そう Macintoshはその誕生の段階で既に人がデジタルに創造的ネットワーキングをするであろう近未来を感じさせる"世界観の喚起力"を持ち合わせていました。...Macintosh初号機発売が1984年1月で、例えば Twitter社の設立が2006年3月ですから、その世界観喚起力は実に物凄いものと言えます。そう世界観デバイスはやがてやってくる、当然・必至の未来の世界観を喚起する力があるのです。

耳に刺さったコンピュータ AirPods Pro

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iPhoneもiPadもApple Watchも全てがAirPods Proの為に存在したと言うとほとんどの人は「?」と思うでしょう。でも、これは突拍子も無い思い付きではありません。2001年に最初のiPodが登場して以降、AppleはiPodとiTunesの売り上げで急激な成長と巨大な利益の獲得を実現します。

https://www.statista.com/chart/10469/apple-ipod-sales/

その当時はまさか電話(iPhone)の販売で世界一の企業になることなど誰も想像していませんでした。それ以前、iPod登場前にはまさかAppleがデジタル音楽プレイヤーの領域で世界一の企業になるとは誰もが想像していなかったことと同じことなのですが、世界観デバイスはその世界観を破壊的に再構築できる力を持っています。ですのでそれ以前と以後であらゆる価値観が切り換わります。


AirPods Proはもはや我々の耳に刺さったSmall and powerful computerの原型として胎動し始めているのですから、それ以前とそれ以後とがまるで異なる景色になることを想像しても、決して無駄ではありません。


スマートスピーカーの失態。

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僕はAmazon Echoは大いに失態をしでかしたと考えています。あらゆる室内空間内に自然に存在しており、誰もが話しかけられ、その話しかけたキーワードに応じて、即自然な対話として様々なデジタルサービスを利用できる。

時刻の確認(や、アラーム)とニュースと音楽。スマートフォンの画面との対話の面倒を排除し、語りかけると即やりたいことを叶えてくれるアレクサはAmazon Echoのコア・エンジン。声とコンピュータの対話的結び付きとして、Amazon Echo ほど簡潔で有用で継続的利用を促進するデバイスはなかなか他に存在しません。


だからこそAmazon Echoは急激に普及して、全米家庭に浸透しています。Alexaはその普及に沿って世界中の耳に於けるシェアを増大させて来ました。声と対話するデジタルコンピューティングのイニシアティブはアマゾンが圧倒的に握っているように思えました。
https://marketingland.com/alexa-devices-maintain-70-market-share-in-u-s-according-to-survey-265180


ですが、この覇権はAirPods Pro登場により大いに脅かされる可能性があります。なぜなら、ワイアレスのイヤフォンは常に耳の中に存在する small computer with digital network なので、Amazon Echoのようにわざわざ屋内に設置したり、スマートスピーカーに向かって話しかけるという、相当不自然な行為を必要としないからです。
そしてアマゾンはEchoとAlexaの開発環境の育成とアプリケーションストアの普及と活性化を怠った結果として(レシピ通りの超簡単スキル開発はともかくとして、本格的な Voice Computing Application をアマゾン・エコー向けに開発するのはほぼ不可能です。)、iPhoneが長い時間をかけて構築育成したようなアプリ市場は Amazon Echo に於いては実現しませんでした。


デジタルハブ再び?

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"デジタルハブ"という言葉をご存知ですか?これはスティーブ・ジョブズが2001年1月、サンフランシスコで開催したMacWorld Expo基調講演でスピーチしたMacintoshをデジタルなハブとする、新しいライフスタイル提案として語られた新概念です。

デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、携帯電話、デジタル音楽プレーヤーなど、様々なデジタル機器のセンターにMacintoshを据え置き、デジタル・データをより手軽に扱えるソフトウェア群を開発提供するほか、自らも使い勝手の良いデジタル機器を開発販売するというアイデアです(今聴いても、全く違和感無いというより、全く当たり前のアイデアに聴こえてしまうので、これを新概念と言うのにはもはや抵抗すら覚えます)。
例えば、僕は眼鏡を掛けません。ですが、もし眼鏡を掛けている方が自然で快適であれば、僕はいつでも眼鏡をかける生活を選ぶかも知れません。


AirPods Proのユニークなのは、もうこれを装着している方が装着していない状態よりも快適ですらあると言うことです。

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不快では無いとか不便では無いとか、マイナス要素が軽減されていると言う状態より、それを使っている方がむしろ使っていない時より快適便利であると言う状態。これがAirPods Proの偽らざる体験的付加価値です。
と、するならば、アマゾンエコーとアレクサが支配しようとしていた声とコンピューターとの関係構築に於いて、AirPods Proは大きなステップを踏み出したと言えるでしょう。

そしてAirPods ProがAppleのデジタルハブ構想の新しいセンターになるのでは無いか?と考えるのは、その体験価値の強烈なインパクトが強烈に存在するからこそです。


また、iPhoneもiPadもApple Watchも全てがAirPods Proの為に存在したと考えられるのでは無いか?と思えるのは、そのデバイスの喚起する世界観がかつてスティーブ・ジョブズの唱えたデジタルハブ構想の2020年代バージョンを彷彿とさせるからです。
全てのデジタルコンピューティングの体験コアに存在出来る。耳に刺さった small computer としての AirPods Pro は新しいデジタルハブの継承者としては、かなり有力な存在と言えます。iPod 以前 Macintoshが存在していたこと。iPhone 以前にiPod が存在していたこと、その歴史的経緯の繰り返しを彷彿とさせます。

ワオ!モーメントは一日にしてならず。


京都の街をAirPods Pro装着して自転車で移動する時の感覚をどう表現するべきでしょうか?クルマのエンジン音やビルの空調の音、工事の騒音、人々のざわめき、雑踏の音などが限りなくマイルドに遮音された環境でYouTube MusicのPlaylistを聴きながら走る街の体感。
それはもうデジタルワールドになった仮想と現実との複合空間を移動するバーチャルな人間存在のようでもあります。

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ソニーのウォークマンはかつて哲学者や宗教家のシリアスな批判や批評を過激に受けた時期を経て世界に普及を遂げました。ウォークマンはまごうことなき世界観デバイスでした。AirPods Proのノイズキャンセリングされた体験価値は当然、かつてのウォークマンが巻き起こしたような存在論的な論争や批判を巻き起こすでしょう。とは言え一方でこのような世界観を揺さぶる体験をもたらせるデバイスは本当に限りなく希少な存在でもあります。


マジカルモーメント(あるいはワオ!モーメント)は、世界中に普及を成し遂げる「大きな製品」の成立には欠かせない必須条件だと言われます。今まさにAirPods Proが世界中で同時的に巻き起こしているワオ!の驚きはそれが世界に普及を遂げ、耳と声とコンピュータを結びつける、非常に重要なデバイスとして受け入れられていく根源的駆動力になっています。
そして、そのワオ!な体験はほぼ実現不能?と思えるほど困難なものです。だからこそAppleがその歴史を通じ開発し、普及を成し遂げてきた幾つかの歴史的製品群はなかなかコピーすることの出来ない奇跡的製品とも言えます。

後付けで類似製品を安価かつ大量に製造することは可能だとしても同じような世界観書き換えの可能な製品開発に成功できる企業は本当にレアです。マジカルモーメントとは、決して一日では成し遂げられないモノなのです。

世界観デバイスは忘れた頃にやって来る。

僕自身は世界観デバイス、あるいは世界観プロダクト開発以外には正直興味を覚えません。
そして、今回AirPods Proのもたらした「静粛」と言う減算系の発明(ノイズを差し引くことにこんなに大きな価値があるとは!)その体験価値の奥深さ、ワオ体験としての完成度の高さ、品質に対して本当に心から敬意を覚えます。

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AirPods Pro 耳元の感圧スイッチを押し下げて、トランスペアレントモードからノイズキャンセリングモードに切り替わった瞬間のあの心が透き通るような「静粛」に震えつつ、アップルのやり遂げた大きな仕事に感嘆します。とは言え、我々はさらにそれを乗り越え得る世界観プロダクトを実現しなくてはなりません。
なぜなら、その存在の前後で世界観が書き換わるような製品を提供・普及できない限りは、所詮その製品とは何かの二番煎じであり、何かの模倣品であり、何かの追従でしかありません。


AirPods Proは「静寂」を耳の中に自然にもたらすことで、その世界観構築の大きな一歩を踏み出しています。我々は、じゃあ、一体、何を持って、その新しい世界観を人に問うのか?その存在論的問い掛けの可能性に関して言うと、ほぼ無限大だと言えます。

そして、自分自身はClubhouseやDabel.appで示している様な「より自然な音声による雑談」のプラットフォームこそが声のインターネットの本命になると確信し、それに全力で振り切っています。


さあ、新しい世界を作りましょう。明日と言わず今日から!

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ベータ版で100億円の時価総額は前代未聞!な Clubhouseアプリ

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ダベルのユーザーリスト、いつでも誰とでも直接雑談できます。

この記事のオリジナル記事です。是非ご覧ください!


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