UFCがイベントを休めない理由? 親会社エンデバーがまさかの大減速!


UFCの親会社エンデバーが、コロナウィルスの影響をモロに受けて悪戦苦闘している。

ドゥウェイン・ジョンソン、リアーナ、マット・デーモン、クリスチャン・ベールといった著名芸能人を抱える米大手芸能事務所ウイリアム・モリスが、巨額の借入金をテコにして、イベント大手運営IMG、UFC、ミスユニバース、プロフェッショナル・ブルライダーズ(プロのロデオ大会)などを相次いで買収してできあがったのが、巨大企業エンデバーである。

エンデバーは現在、スポーツや音楽など合計8つの事業会社を傘下に擁し、事業の多角化を図りながら、巨大化してきた。事業の多角化には、ある事業が不調でも、別の事業の収益で補うことができるという利点があるはずだった。

ところが、ほとんど全ての事業がライブイベント関連であるという共通点が、今回のグローバル・パンデミックのせいで、エンデバーの弱みと転じてしまった。いまや全ての事業が一斉にストップしてしまったのだ。しかも、スポーツやコンサートといったライブイベント事業に満員の観客が戻ってくるのは、順番的にはおそらく、他の全ての経済活動が元に戻った後の最後のことになるだろうから、事業の復活には相当の時間がかかりそうなのだ。

借入金を最大限に活用して事業の拡大を図ってきたエンデバーは、総額72億ドルの負債を抱えている(うち46億ドルが長期負債)。これに対し、昨年度のエンデバーの売上金額は36億ドルだった。しかし、コロナ感染の広がりと共に、昨年比で売上が実に70%も落ち込んでいるいるのだという。売上が確保できているうちは問題がなくても、売上が減少すれば、たちまち利払い負担が重くのしかかる。

また、昨年9月に予定していた株式上場が土壇場で延期になったことで、想定していた資金調達ができなかったことも、現在のキャッシュ不足に拍車を掛けている。

エンデバーでは3月に、250人の社員を解雇もしくは一時帰休とすること、アリ・エマニュエル社長とパトリック・ホワイトセル会長が年内いっぱい、報酬を返上することを発表している。

4月27日には、全社員7500人の3分の1にあたる2500人に、出社は1週間おきとする代わりに、給与も半額にするといったコスト抑制策を打ち出した。

5月7日にはさらに追加で300人の社員の解雇もしくは一時帰休を発表している。社内はさぞかし戦々恐々で、仕事どころではないだろう。こうして相次いで打ち出された人員削減策で、エンデバーは年間1億5千万ドルのコスト削減を実現するという。なお、UFCはエンデバーの人員削減策の対象とされていないと報じられている。

ニューヨークポストは、エンデバーが6月までに2億5千万ドルの資金調達を計画していると報じている。調達した資金は、社員の給与やオフィス賃料などの必要経費に充てられる予定だ。

こうした動向を受け、米国の財務格付け会社スタンダード&プアーズは4月13日、エンデバーの格付けをBからジャンクボンド並のCCC+へと引き下げた。ちなみにUFCの格付けはBである。S&Pは、「エンデバーは、コロナウィルスの影響によりイベント事業・エンターテインメント事業の先行きが不透明になっていることから、当面財務リスクが高まっている」と指摘。年半ばごろまでにコロナウィルスが収束し、売上が回復に転じない場合、同社は不良債務の再編を行う必要が生じると分析している。

このため、エンデバーが傘下企業を一部売却するのではないかとの噂もある。

ただし、エンデバーがUFCの一部を売却することは考えにくい。なんといってもUFCは今やエンデバーの稼ぎ頭である。大会を開催している限り、UFCにはESPNから年間7億5千万ドルの売上がたつ。しかもエンデバーのUFC株式持株比率は51%に過ぎず、売却により過半数を下回ることになると、UFCに対するエンデバーの支配力が大きく低下することになってしまう。

デイナ・ホワイトUFC会長はこうした状況について聞かれても、「あのな、カネならあるんだよ。隠居したければいつでもできるぐらいにな」と半笑いではぐらかしているが、親会社がこうしたのっぴきならない状況である以上、UFCとしてもノンビリと休んでいられるヒマはないということになることは間違いないだろう。

実はエンデバー傘下のプロフェッショナル・ブルライダーズは、UFCに先立ってイベントを再開している。

あるメディア関係者は、「エンデバーが倒産の危機にある、とまでは言わないまでも、経営者の真価が問われていることは確かだ。倒産するにはハリウッドでの存在感が大きすぎる会社だから、何かしら救いの手は現れるだろう」と語っているが、併せて次のようにも語っている。

「でも、あのリーマン・ブラザーズが倒産すると思った人など、1人もいなかった。エンデバーが倒産したりしたら、のちに映画が作られるような大きな出来事になるだろうね」



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