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[短編小説] エピローグ - 人生の終焉そして始まり

僕の人生はこれで終わる。

とても素敵な人生だった。

とても素敵な物語だった。

あの長い苦しみの果てに一度は捨てた命。

今僕はこうしてここにいる。

最高に素敵な家族と友人たちが集まってくれている。

僕の人生はこれで終わる。

まるで映画のような人生だった。

もしかしたら本当に映画だったのかもしれない。

もしくは小説か・・。

いや、

夢・・?

人生の終焉を迎えた時に気付くんだ。

平凡な朝に目が覚めたことを。

そしてぼんやりと考える。

また今日も仕事か・・って。

そうだよな。

これは夢だよな。

夢に決まってる。

こんなエキサイティングな人生、あるわけがない。

まあいいか。

それならそれでもいいか。

平凡な人生だって悪くはない。

普通に学校を卒業して

普通に就職して

普通に結婚して

普通に子供を作って

普通に働いて

普通に趣味をして

普通に年を取って

普通に・・

普通に・・

普通に・・

普通に・・ってなんだ?

今まで生きてきたのは本当に夢なのか?

こんなリアルな夢があるのか?

今まで生きてきた素晴らしい人生をただの夢で終わらせて良いのか?

朝、目が覚めてからまた始まる平凡な人生

生きる為に仕事をするのではなく

仕事をする為に生きる人生

いつか現状を変えてやると思いながら

結局いつまでも現状が続いて、何も変わらない人生

大きな夢や野望を持っている

いや、大きくなくたっていい

ちょっとした望み

何かをしたい。

・・そう

本当は・・

・・本当は?

本当は・・

・・本当は?

本当はやりたいことがあるんだ・・

・・そう

でも・・

・・でも??

でも・・

・・でも??

無理だよ・・

・・無理だよ?

無理だよ・・

・・どうして?

だって・・

・・だって?

だって・・

・・だって?

だって、自分にはできるわけないから・・

・・どうして?

無理に決まっているから・・

・・どうして?

無理なんだ。自分にはできるわけないんだ・・


・・どうして、やりもしないで決めつけるの?


何かをしたいのに

何かしらの理由をつけて

何もしない人生


でも、

人それぞれ考え方や価値感って違うんだよね。

自分の考え方や価値観を押しつけるのは余計なお世話だし、

それより何より、それって自分勝手・・だよね。


僕の人生は僕の人生

人の人生は人の人生


とりあえず、

僕は僕の人生に後悔はしていない。

それは僕の誇りだ。

それだけで充分ではないか。

今ならはっきりと断言できる。

これは夢ではなかった。

僕の人生は、とても素晴らしい人生だった。

・・と。


さて・・、

そろそろ、あっちの世界に行く準備を始めないと。


それにしても、

良い時代になったもんだ。

iPS細胞による医療が当たり前になり、人間の寿命は飛躍的に伸びた。

悪くなったところを取り換えるだけでなく、若返らせることも可能になった。

もちろん倫理的な問題はまだいくつか残っている。

しかしそれも、じきに解決するだろう。

とは言え、iPS細胞は人類に永遠の命を与えるものではない。

いつか肉体は滅び去る。


iPS細胞医療と並行して、脳科学の分野が大きな進化を遂げた。

脳内で起きている電気信号の受け渡し、

神経伝達網の仕組み、

精神活動の仕組み、

心、

そして、

魂。

この10年ほどで、実に色々なものが解明された。

それは、驚くと共に、素晴らしい科学の成果だ。


・・さて。

もう少しだ。

今日これから行われることは、事前に手順を聞いているので、怖くはない。

あと2時間ほどしたら、医師が来る。

そして、この施設に設置されているコンピューターと僕の脳とを接続する。

実に簡単なことだ。

ベッドに横たわっているだけで良いのだから。

あとは、コンピューターと、僕の脳内に埋め込まれているチップがうまくやってくれるのだろう。

脳内電気信号の受け渡し、つまりは、僕の精神活動・・以前は、魂と呼ばれることもあったっけ・・のデータ転送は数分で終わるはずだ。


あっちの世界は、どんな感じだろうか。

またみんなに会えると思うとワクワクする。

先に行ってしまった家族や親族、友達や仲間たち。

またみんなに会える。


さて、あと2時間・・。

今日集まってくれた人たちと、この世界での想い出話に花を咲かせることにしよう・・


(了)

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