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挙げるとキリがない

海外に行くと決まって朝が早い。

日常と違って目覚ましの音が鳴らなくても、朝日があがる前の早い時間に自然と目が覚める。 体がわくわくしている証拠だけど、これは僕に限ってのことじゃないように思う。

ロンドンでの楽しみの一つに食がある。

『いや~イギリスって食事まずいんじゃないの』って方も多いのではないかと思うけど、 今のロンドンの食事情すごく楽しくて美味しい。

その一つがマーケット。 至る所で様々なマーケットが開催されていて、とにかくロンドンのマーケットはバラエティに富んでいる。

1000年の長い歴史があるロンドンブリッジ近くのバラマーケットは10年程前までは業者をターゲットにした食品市場でしたが、 現在は厳選された食材を扱う有名店が次々に出店し国際色豊かで驚くほど活気的なのです。 個人的なおすすめは、バーモンジーから程近いマルトビーストリートにあるSPA TERMINUS。ここはヴィクトリアン時代に革の職人が多く集まっていたエリアで、赤いレンガの佇まいが風情があって格別です。 人気レストラン〈セント・ジョン〉のベーカリー、厳選した茶葉を扱う〈マイ・カップ・オブ・ティー〉、鮮度のいい蜂蜜が人気の〈ロンドン・ハニー・カンパニー〉などあげるとキリがないのですが、 個性的でそれぞれ独立した食を扱うお店が古い高架下に並んだイギリス版の長屋は、マーケットとコミュティの新しいあり方を示しているようでとても興味深い。 〈セント・ジョン〉の焼きたてのパンを頬張りながら〈マンモス・コーヒー〉でテイクアウト、 一角にある〈ラスコ〉でイギリス中から集められた様々なジャンルのアンティークを 堪能できるオーガニックマーケットは他にはないだろう。

そう思うと尚更楽しい以外の言葉が見つからない。

そして、今の美味しいロンドン食事情とカルチャーを体現できるお店の一つに〈メルローズ&モーガン〉という とても素敵なデリを併設したグロッサリーショップがある。  場所はケイト・モスなど多くの有名人が住み、ロンドン市内を一望できるプリムローズヒルと、文化人にこよなく愛される閑静な住宅街のハムステッドに店舗を構える。

オリジナルの惣菜やお菓子・コンフィチュールなどの販売に加え、イギリス中から厳選された食材が陳列した店内は、 初めて〈コム・デ・ギャルソン〉の〈ドーヴァー・ストリート・マーケット・ロンドン〉を訪れた時の興奮に似ている。

一見ファッションブティックかギャラリーのようなファサードからは、惣菜やグロッサリーを扱うお店とは思えない。 格好だけの表層的でなものではなく、オーナーの強い意志が反映されたお店作りが凝縮されているなと思う。

そう、企業にはできない個人店主の偏愛や美意識がこのお店には詰まっていて凄く共感できる。

うまくいえないけどロンドン的だな~と。

〈メルローズ&モーガン〉のグラフィックを手がけた〈スタジオ・フリス〉のフリス・カー。
偶然にも南ロンドンにアトリエを構えるアーティストのローラ・カーリンと彼女の話をしたところだった。 彼女の代表作に、〈ローズ・ベーカリー〉の『BREAKFAST LUNCH TEA』がある。

なるほど。 フリス・カーが手がけるタイポグラフィがバランスをとりながら全体のお店のイメージへ導いている。

そして新鮮な自家製のグラノーラや濃厚なチョコブラウニーは素晴らしく美味しく、 〈メルローズ&モーガン〉が何故こんなにも地元の人から愛されるお店なのか納得出来た。

僕らの世代の英国カルチャーは音楽やファッションが窓口だったけど、 雑誌『THE GOURMAND』のようなインディペンデントでありながら食を切り口にした様々な試みが 新たなカルチャーを産み出しているように思う。

イギリスの食はまずいというレッテルは、もはや過去の話なのだ。

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