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BOAR HUNTER最新作『Germination of Concepts』リリース記念インタビュー

今作は曲が集まってできた作品ではなくて、アルバムで一単位の作品なんです。だから一度でもいいので1曲目から最後までアルバムを通して聴いてほしい。

NAISHO、CAUCUS、sugardrop、Smokebeesなど、2000年代半ばの東京インディーズ・シーンで活動していたメンバーがネット上で集結したBOAR HUNTER。それぞれのオリジナル・バンドの音楽性とは一線を画すサウンド構築が白眉で、3月15日に発表された最新作『GERMINATION OF CONCEPTS』は前作以上にエレクトリカルな作風となった。そのGorillazとYo La TengoとSuperorganism とThe Postal Serviceと安全地帯らを同時に感じさせる奇天烈でディストピアなアルバムを作り上げたメンバー=JeonSig Hong (G&Cho)、Katsuya Yanagawa (Vo)、Miki Hirose (Cho)、bj (Ba)、Ricky (Dr)にバンドのことと新作について伺ってみました。
Interviewed:小野肇久 (DREAMWAVES)

■まず最初にBOAR HUNTERが結成されたいきさつを教えてください。

Katsuya Yanagawa
「僕のソロ・プロジェクトでPRAGMAっていうのがあって、ジョンシクは打ち込みが上手っていうのを知っていたので「せっかくだからコラボしてみようか」ってなったのが母体となる一番最初の絡みでした。2018年とかですね。」

JeonSig Hong
「元alicetalesの2人、sugardropのnkとCAUCUSのイッチーが運営しているMcFly Recordsが2018年にリリースしたお年玉コンピにPRAGMA+tokuyamm9名義で「Not Everything Absorb」という曲を収録しました。実はこの曲は何度もブラッシュ・アップされていて、BOAR HUNTERの1stアルバム『A Terror to Behold』や、『GERMINATION OF CONCEPTS』ではJeonSig Hong Remixとして収録されています。」
 
■ジョンシク君は数年前から愛媛に住んでいるんですよね?

JeonSig Hong
「そうなんです。だから東京でやってたようなバンド活動はできなくなっちゃうなと思っていたんですけど、ネット経由でファイル交換すれば音楽制作はできそうだなと。ロック・バンドは難しそうだけど、打ち込み系だったら活動できるかなと思って、それでBOAR HUNTERをやることにしました。」
 
■他のメンバーはどのように集まったんですか?

JeonSig Hong
「女性のコーラスを入れたくてすぐにミキちゃんを誘ったんです。その頃はDJもメンバーにいたので結成当初は4人で活動していました。そのDJが辞めたり色々と入れ替わりもあったんですけど、ギターにsugardropの橋口君、ベースにCAUCUSのbjが加入して今のメンバーに落ち着きましたね。bjはヒップホップが好きなことも知ってたし、彼の声はすごくいいのでラップもしてもらおうかなと思って。ほんと、彼の声は使えるんです(笑)。波形を切り刻んでイジりたおすとすごくいい感じになるんですよ。」

bj
「僕の場合、通常のラップというよりはそれを素材にした音が曲に散りばめられてるって感じです。しかも本番ではなくて試しに録った昔の音源データを引っぱり出されて加工されちゃうから、今後はいつ使われてもいいようにちゃんと録音しようって心に誓いました(笑)。」
 
■ミキさんは現在もたくさんのバンドで活動していますが、BOAR HUNTERはどんなイメージで参加しようって思いましたか?

Miki Hirose
「最初は「Yo La Tengoっぽい感じ」と聞いていたので、ジョージアのようなコーラスを考えていました。」

Katsuya Yanagawa
「ちょうどその頃、1stアルバムに入っている「pepper」っていう曲を作っていて、僕もジョンシクから「Yo La Tengoみたいなヴォーカル入れてよ」って言われた(笑)。」

JeonSig Hong
「最初は中国語のラップを入れる予定だったんだよ(笑)。だけど、柳川がすごくいいメロディを乗せてきたから、もうその路線でいこうと。」
 
■曲を制作していく際、ジョンシク君からの細かい指示はとくにないのでしょうか?

JeonSig Hong
「みんな東京のインディーズ・シーンで近くにいた人たちばかりなので、お互いに趣向などはわかっているんですよね。だから細かい決まりごととかはないです。さっきのYo La Tengoの話ですけど、それっぽいメロディがあったから「じゃあもっとそっちに寄せてやろう」っていう後付けのアプローチはありましたけど。でも、個人的に指標にしているのはCUBE JUICEっていうアーティストでして、彼はジャンルをバチッと決めるんじゃなくて様々な音楽性を披露しながらもそのルーツをわかりやすくしているような楽曲なんですけど、常に自分の中でそれは意識していました。」
 
■確かにBOAR HUNTERのメンバーは全員バンドのキャリアが長いし、普段からいろんな音楽を聴いていることもあって、それぞれが持っているもうひとつの音楽的側面を表現しようとする音楽集団なのかなって思っていました。

Katsuya Yanagawa
「僕は完全にそうですね。CAUCUSはバンド・サウンドが肝なので、どうしてもライヴで声が通りやすい歌い方やキーにしたり、スタジオでそういう設定作りが必要になってくるんですけど、BOAR HUNTERは完全に音源メインで活動しているのでそこは考え方が違ってきますね。あとトラックが結構オシャレなので、歌のキーも少し下げたり、あとはポップになりすぎないようにしています。」

■Rickyさんはどう感じていますか?

JeonSig Hong
「彼はNAISHO時代からの付き合いなんですけど、実は最新作には参加してないんですよ。ライヴではもちろんドラムを叩いてもらいますけど。」

Ricky
「去年、新宿のナインスパイスでやった初ライヴのときは参加しました(笑)。」
 
■様々なバンドに参加しているミキさんは、BOAR HUNTERの多様性についてはどう思いますか? 

Miki Hirose
「実は今、12組のバンドで活動しているんですけど(笑)、その中でもBOAR HUNTERは唯一無二だと思っていて、ネット上だけで活動しているところも面白いですし。オルタナやエレクトロニカを基調としながらもヒップホップの要素も取り入れたりと、個人的にはSuperorganismの雰囲気を感じさせるバンドだなって思います。あと、バンドにはギターで参加することが多いんですけど、BOAR HUNTERみたいにコーラスだけで作品に参加するってことがないので、それも新鮮です。ギターはライヴでは弾きますけどね。」

JeonSig Hong
「そういえば、ミキちゃんのコーラスのメロディの付け方が変なんですよ。もちろんいい意味で(笑)。BOAR HUNTERのメンバーは自分のバンドではほぼフロントマンだし曲も作れる人たちだから、メロディが決まればコーラスもだいたい決まってくるんですけど、ミキちゃんの場合は僕が思ってもいなかった旋律の動きをしてくるんですよね。それがちょっと安全地帯っぽいコーラスのメロディだったりするんです(笑)。」

Miki Hirose
「安全地帯大好きなので、ちょっと出ちゃってるかも(笑)。」

JeonSig Hong
「柳川のヴォーカルもわざと甘めにエディットしてるから、意外と安全地帯とは親和性があるのかもしれないですね(笑)。」
 
■(笑)では新作についてお聞きします。いつ頃から制作が始まったのでしょうか?

JeonSig Hong
「デモ音源は2021年の8月くらいから作り始めていました。前作となるEP「the sins of the ancient youth」がリリースされる数ヵ月前くらいですね。
Katsuya Yanagawa:2曲目の「miasma」のコーラス部分が一番最初で、今discordを見直してみると「YMO meets Gorillaz的な」っていうコメントが書いてあります(笑)。」

bj
「その話は知らなかったけど、この曲はGorillazっぽいなって思ってたよ。」
 
■『GERMINATION OF CONCEPTS』というタイトルは<概念の発芽>という意味だそうですが、その意図を教えてください。

JeonSig Hong
「制作に取りかかった最初の頃は右往左往していて、どういうアルバムにしようかと考えていたんですけど、あまりしっくりこなくて。そうこうしているうちに2、3曲できてきて、ふと「曲順通りに曲を作っていこう」っていう頭に切り替わったんです。つまり、ひとつの曲のアウトロを作り終えたら次の曲のイントロを作っていく流れにしました。そうなると、新しい曲を着手するときはイントロだけが完成しているっていう状態で、そこから色々とみんなのトラックを足していくんです。それで、1曲目と最後の曲以外ができた辺りからアルバムのタイトルを考えていて、この手法のこともあってパッと思い付いたのが<概念の発芽>だったんです。」
 
■概念について、もう少し教えてください。

JeonSig Hong
「まず大前提として、タイトルやジャンルとかは所詮ラベルだと思っているんです。で、概念とか意味や本質というのは最初からそこにあるわけではなくて、何かが誕生したあとに第三者が名付けるものというか、自分も含めてあとから気付くもの、みたいに捉えていて。例えば、何でもないできごとを繋ぎ合わせただけでも、人ってそれを見たら様々なストーリーを感じてしまうと思うんです。それに近い感じでしょうか。あと、「どういう音楽のバンドやってるの」って聞かれると困っちゃうんですよね。色々なジャンルが融合されているから確実に説明できる言葉が思い付かなくて、いつもちゃんと答えられない……。」
 
■今作は、アルバム全体としての概念を表現したってことでしょうか?

JeonSig Hong
「そうですね、自分の哲学みたいなものをアルバムで打ち出したっていう感覚ですかね。それぞれの曲が集まってできた作品ではなくて、アルバムで一単位の作品なんです。だから、一度でもいいので1曲目から最後まで通して聴いてみてほしいです。」
 
■では、制作の途中で「曲順通りに作ってやろう」っていうモードになったのはどうしてですか?

JeonSig Hong
「スピリチュアルっぽくなってしまいますけど、去年、原始仏教の本を結構読んでいたのでその影響があるのかもしれないですね。それは意識的にやったのではでなくて、自然の流れでそうなっていった感覚というか。友だちが言うには「無意識レベルで浸透させたものが現実へと顕現していく」ってことらしいです。仏教には刹那という時間の単位があるんですけど、それもキーになっているのかもしれません。あと、僕の美意識として表層的にメッセージ性のある表現をしたくないっていう掟みたいなものがあって、それも作用しているのかも。」
 
■今作のそういったアルバム作りの考えを他のメンバーは知っていたのでしょうか?

Katsuya Yanagawa
「トラック作りにそういった意味や考えがあるというのは初耳でしたね。あと、「メッセージ性のある歌は云々」って言ってましたけど、歌詞を作る身としてもそういったモットーがあるっていうのは初めて聞いたし(笑)。でも、長い付き合いなので「そうなんだろうな」っていうのを汲んで歌詞を書いてましたけどね(笑)。」
 
■この流れで歌詞についてお聞きします。今作の歌詞はどのような世界観を表現しているんですか? 

Katsuya Yanagawa
「前作のアルバムに比べて音がよりエレクトリカルで、かつ、ちょっと毒々しい雰囲気を感じ取っていたので、僕はそれらから近未来とファンタジーみたいなものが融合した世界観を想像したんです。と同時に宇宙や呪いとか、そういうイメージも沸き起こってきたので、歌詞の中に宇宙船が出てきたり、闇の誓願をしたりだとか。」

JeonSig Hong
「すごく面白いのが、アートワークを制作するときにデザイナーには「一度世界が崩壊したあとの新世界に植民した、コロニストたちの生活や共同体を観察する」っていうイメージを伝えたんです。それプラス「ちょっとカルトっぽさがあって善悪とかもカオスな感じ」ってお願いして。そのあとに初めて柳川の歌詞の対訳を見たんですけど、結構それとシンクロしていたのでビックリしました。」
 
■今作において何か印象的なことはありましたか? 

Miki Hirose
「実は、担当のコーラス以外でムーグを演奏しました。このムーグ、フリーマーケットで0円でゲットしたんです(笑)。「holynumber」と「excluding handle」で聴けます。」

JeonSig Hong
「ほんと、そのおかげで曲の雰囲気がガラッと変わったのでエッセンスとして最高でしたね。」

bj
「僕は「miasma」でラップ・デビューしたことですね。柳川君の歌詞のワード感とかを加味してリリックも考えたんですけど、自分でもそれは大きな発見でした。あと「smudge」の後半のパートに僕のヴォーカルを足すことになって、個人的にはArab Strapの「I Still Miss You」が思い浮かんだのでダークでヘビィな歌声を入れたんですけど、そういった提案も初めてだったのでよい経験になりました。」

JeonSig Hong
「そこはすごく気に入っていて、どんどん気持ち悪くしてやろうって思ったよ(笑)。音を重ねていったらクトゥルフ神話系な雰囲気になって、めちゃくちゃよくなった。」
 
■そういえば「mental mirror(Mediumbuddha)」のMediumbuddhaって何ですか?

JeonSig Hong
「Mediumbuddhaっていうアーティストのことで、前述したMcFly Recordsのコンピとかにも参加してるんですけど昔からファンだったんです。で、彼に「好きな曲を選んでリミックスしてほしい」って依頼したら、彼は「sunder mind」を気に入ってくれて。sunder mindっていうのは僕が好きなゲームに登場する、精神にダメージを与えるエスパー的な技の名前で、彼はそういうところまで調べてくれてリミックスを作ってくれたんですけど、その完成度がすばらしすぎて「もうこれは完全にオリジナル曲でしょ」って思い、「mental mirrorr」っていうタイトルの曲にしたんです。mental mirrorrというのは、実はさっき話したsunder mindを跳ね返すことのできる技の名前なんです(笑)。」

Katsuya Yanagawa
「今初めて聞いたけど、めちゃくちゃいい話だね(笑)。」

JeonSig Hong
「ある意味、各パートの音源をカウンターで返すみたいな、BOAR HUNTERの制作方法を象徴しているよね。個人的には一番好きな曲かも。」
 
■では、各メンバーのオススメの曲を教えてください。

bj
「僕は1曲目の「oblivious colonists」です。The Postal Serviceっぽさとか、ああいう感じがすごくよくて、冒頭から異次元の世界へ連れていってくれるような曲だと思います。MVの雰囲気も好きですし。」

Katsuya Yanagawa
「僕は2曲目の「miasma」ですね。この曲にはみんなの声がたくさん入っててそれぞれの特長が出ているところが推しです。ヴォーカルやラップ、語り、トラックなどすべてがコラージュされているところも楽しくて、ちょっと気持ち悪いっていう(笑)。」

JeonSig Hong
「イントロの声はLADY FLASHのnicoflashなんです。」

Katsuya Yanagawa
「TESTCARD RECORDS繋がりだ(笑)。」

JeonSig Hong
「LADY FLASHとは付き合いが長いし、前作もそうですけど昔からの仲間に声をかけて参加してもらっているので、その流れで今回はニコちゃんにお願いしました。」

Miki Hirose
「私は6曲目の「excluding handle」です。Yo La Tengoも大好きで、彼らの大名曲「I Heard You Looking」のBOAR HUNTER版だと思っています。」

Katsuya Yanagawa
「この曲の後半のコーラスを考えたとき、完全にYo La Tengoを意識して作ったので、バレてる(笑)。」

Ricky
「僕は4曲目の「subwave(signal a)」がすごく好みで、よく聴いてます。」

JeonSig Hong
「バンドとしては3曲目の「sunder mind」 が一番気に入っていて、ちょっとCUBE JUICEに寄せていったところがあるかも。最初は自分の歌で切り貼りしてエディットしたから、ちゃんと柳川の声でそれができるのか不安だったんですけどうまくハマったので、その達成感もあります。」
 
■それでは最後に、今後の予定はありますか?

JeonSig Hong
「3月26日(日)に東京の高円寺highで開催されている『Total Feedback』にレコ発ライヴで出演します!そして、6月17日(土)には名古屋初ライヴとして『DREAMWAVES』にも出演します!」



3/26(日)高円寺HIGH
Total Feedback
BOAR HUNTER ”Germination of Concepts” Release Party

BOAR HUNTER
RAY
nanocycle
Moon In June
broken little sister

DJ/
chicchi(Lazyperfection)
ヒヌマナオヤ(cattle,Test Card Records)

6/17(土)名古屋
DREAMWAVES

詳細未定


「ボアハンターという名前だから、斧を持った大男が、猪の頭蓋骨を砕き、血と脳髄を浴びながらうめき声を上げてこっちに走ってきて「ツギハオマエダ」とか言ってる音楽を想像したけど、全然ちがった。 よく考えたらそんなハンターは、すぐに職と命を失う。
 
彼らの狩りの仕方といえば、ニューオーダーやシガーロスみたいな匂いがするエサでリスナーをおびき寄せ、ガチガチのビートのトラバサミでロックする。 あとは鋭いノイズで仕留めるだけ。 確実に罠にハマった者の耳を殺しにかかってくる。 
 
狩りの方法は違えど、この罠からは、うめき声と血と脳髄の匂いに溢れている。 
 
アルバムの最後に葬送曲のような曲が用意されているものの、どこか血の匂いがしていて、簡単に成仏させてくれない。 
 
狂気は油断した者に襲いかかる。 
 
ツギハオマエダ 」
spotify PODCAST「リアルリツイート」MC / 換気扇
 
 「二度と超えられないクオリティに達するものもあれば、沸点を吐き出した様な臓器的アプローチのものもある。
パレットに乗った美しいセパレートのインクの様な楽曲が心を掴んだファーストアルバムから、このセカンドアルバムで少しずつ混ざり合いボアハンターの輪郭が見えてきた。
エレクトロを全面に押し出した今作は、インディーギターポップバンドとしてボアハンターを認知しているファンに裏口から手招きする。
そしてメロディラインは安堵する程のポップネス。
これほど自然な形で、令和のベットルームディスコパンクの初期到達点作品が完成した事に驚きを隠せない。
素晴らしいの一言だ。色味の中に短編小説をみるか、一本の映画をみるか。
今からあなたは狩人となる。」
chicchi (Lazyperfection)
 
「BOAR HUNTERの世界よ、コンニチハ。
漆黒のトライアングルから芽生えた11篇の極彩色に包まれて、いつの間にか何処でもない街で踊りたくなっていました。
不思議と熱を帯びたビートやメランコリックなギターのフレーズに身を委ねると、灰色の現実に同化していた僕はひと時の享楽を得たのでした。
ニューアルバム発売おめでとうございます!」
サイトウ ジュンヤ(THE BUFFETTMENT GROUP)
 
「山間の冷たく、湿った空気の電脳空間を南国鳥が飛んでいく。2000年代のゲームのサウンドトラック盤のような、前作よりも多彩でハードな、BOAR HUNTERのソニックブーム。」
篠原(ラッキーオールドサン)
 
「前作『A Terror to Behold』から大幅な情報量の増加とサウンドプロダクションの変化、その中でも特にビートへの意識が強まったように感じられるが、一体バンドに何があったのだろうか。
音源から想像するに、制作の過程で一旦まとめた楽曲を"スクラップ&ビルド"的に壊しては組み直し、幾度もアレンジを練る中で音を重ね、その結果”リミックス"のようなビート・オリエンテッドな作風になっていったのではないか、と。
変化に耳を奪われつつも親しみやすいメロディは相変わらずで、バラエティに富んだ楽曲群にポップさと統一感を与えている。
個人的には本作の音楽的な参照点として「1997年」を引き合いに出したい。
ローファイもサイケデリックもテクノも盛り上がってクロスオーヴァーしていたあの頃。様々なアーティストがジャンルの壁を越えたコラボレーションを行い、その作品群に興奮していた当時の記憶を呼び起こしてくれる。」
shinji horiuchi(broken little sister)

1stアルバムより、よりダンサブルで楽曲全体のグルーヴが凄まじいですね!
歌メロがなくても成立しそうなくらい、トラックは洗練されていてとってもトランシー。
ほとんどギターが前に出てこないアレンジもカッコ良いです。
前作EPのタイトル曲はTeenage Fanclubみたいだったのに、この振り幅はやばいっす。
松尾翔平(Superyou,ほたるたち)

Boar Hunter's latest album 'GERMINATION OF CONCEPTS' is a powerful and inventive work that showcases the band's unique sound that blends the synth-pop and alternative rock. 

With the mix of synthy bass, glitchy beats, haunting pads, catchy distorted guitar riff, and hypnotic vocals, they create an immersive and engaging musical experience, reminiscent of bands like ‘Supercar,’ ‘Yo La Tengo,’ ‘P-MODEL,’ and ‘My Bloody Valentine,’ with unique twists that set themselves apart.

The opening track, 'Oblivious Colonists,' sets the tone for the album with its dreamy and introspective vibe on top of pumping beats, creating a futuristic and otherworldly feel. The lyrics are thought-provoking, questioning the human tendency to follow the trend without a clear consciousness.  

One of the standout tracks on the album is 'Holy Number.' This track showcases the band's flexibility and ability to build transitions from synth-infused guitar pop to psychedelic trance. With layers of synths and guitars, this atmospheric track naturally merging genres together to create a captivate and engaging listening experience.

The track ‘'Excluding Handle,' is another perfect example of the band's ability to seamlessly blend different genres and styles. The song starts off with a dark and mysterious electronic sound, reminiscent of the legendary Japanese techno band P-Model. As the song progresses, the band shows their range by transitioning into a more upbeat and groovy sound, in a spectacular way much like Yo La Tengo's 'Blue Line Swinger' or Brian Eno’s ‘Here Come The Warm Jet.’ 

The final and also the album title track, 'Germination of Concepts,' is a masterful composition that blends the influences of The Beatles, Sparklehorse, and The Flaming Lips. The enchanting tremolo rhythm guitar and the entrancing beats that resembles a slowed-down tabla, serve as the foundation for the sweet vocal melody, enveloped in a symphony of synth ear candies. The crowning moment of the song is the epic guitar solo, seamlessly tying everything together and delivering an enthralling and immersive sonic experience.

Boar Hunter's 'GERMINATION OF CONCEPTS' is a remarkable album that presents their unique and boundary-pushing musical style. This album is bound to fascinate and enthrall listeners who are seeking novel and thrilling sounds. Highly recommended.

Yau(Super Napkin)

以下日本語訳
BOAR HUNTERの最新アルバム「GERMINATION OF CONCEPTS」は力強く独創的な作品で、シンセポップとオルタナティヴロックを融合させたバンドのユニークな音像を披露している。 シンセベース、グリッチビート、揺らめくパッド、キャッチーなディストーションギターリフ、そして魔法をかけるヴォーカル、それぞれが人々を音楽に没頭させ惹きつける経験をさせてくれる。
スーパーカー、Yo La Tengo、P-MODEL、My Bloody Valentineといったバンドを彷彿とさせ、さらにそれらとは違ったユニークな工夫が施されている。

 オープニングトラックの「Oblivious Colonists」は激しいビートの上でアルバムのトーンをドリーミーで内省的な空気感に設定し、未来的で異世界的な雰囲気を作り上げている。
歌詞の内容は示唆に富んでおり、明確な意識を持たずに時流を追いかける人々の傾向に疑問を投げかけている。 

このアルバムで際立つ曲のひとつが「Holy Number」だ。このトラックは、シンセ要素のあるギターポップからサイケデリックトランスへ昇華させるバンドの柔軟性と才能を示している。
シンセとギターが幾重にも重なるこの空間的なトラックは、ジャンルを自然に融合させ、人々を引き付ける魅惑的なリスニング体験をさせてくれることだろう。 

「Excluding Handle」もまたバンドが異なるジャンルやスタイルをシームレスに融合させる力を持っていることを示す最適な例である。暗くミステリアスな電子音で始まるこの楽曲は、伝説的な日本のテクノバンドP-Modelを思い起こさせる。曲が進むにつれ、バンドはよりアップビートでグルーヴィーな音へと振り幅を広げていくのだが、それはまるでYo La Tengoの「Blue Line Swinger」やBrian Enoの「Here Come The Warm Jet」のように華々しい。 

そして最後のアルバムタイトルトラック「Germination of Concepts」はThe Beatles、Sparklehorse、そしてThe Flaming Lipsの影響を融合させた見事な構成となっている。うっとりさせるようなトレモロリズムギターとスローダウンしたタブラのような幻惑のビートは甘いヴォーカルメロディーの土台となっており、シンセ耳に心地良いシンフォニーへと包み込む。
この楽曲が栄光の頂点に達するのは壮大なギターソロであり、すべてをシームレスに結びつけ、心を奪うような没入的な音の体験を届けてくれる。

 BOAR HUNTERの「GERMINATION OF CONCEPTS」は境界を越えていく彼らのユニークな音楽スタイルを提示している、目を見張るようなアルバムだ。このアルバムは斬新でスリリングなサウンドを求めるリスナーを魅了し、虜にすること間違いないだろう。一押しの推薦盤だ。 
Yau(Super Napkin)

BOAR HUNTER『Germination of Concepts』
TCRD-032
Release: 2023.3.15
Format: CD / Digital
Label: TESTCARD RECORDS / FRIENDSHIP.

Track List:
1.oblivious colonists
2.miasma
3.sunder mind
4.subwave(signal a)
5.holynumber
6.excluding handle
7.smudge
8.not everything absorb(JeonSig Hong Remix)
9.mental mirror(Mediumbuddha)
10.cheese cake(signal b)
11.germination of concepts

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BOAR HUNTER is
“intercontinental online lo-fi indie bedroom pop from the far east.”
2019年 結成
2021年 A Terror to Behold(album ‘digital’)
the sins of the ancient youth(ep ‘digital’)
A Terror to Behold(album ‘vinyl’)リリース
2022年 初ライブを決行
2023年 2ndアルバム『Germination of Concepts』リリース

東京インディーシーンで活動を続けてきた各プレイヤーの示す特徴的な音像と、メインとなるJeonSig Hongのプロデュース/エディットとの相互作用とディスカッションを通じ、オンラインにて起ち上げられるそのトラックは、無機質、有機質両面の性格を持ち合わせたグルーヴを保つ。

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