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選手の背景をもっとボケさせたい!というときにできること

こんな質問をいただきました。

こんにちは、いつもnote読ませてもらってます!
写真の背景ボケについてお話しを聞きたいです。
フィールドシート等かなり近くの席に座っても投手を撮る時など納得いくボケ(背景の客の顔が全く判断できないレベル)がでず悩んでいます。勉強不足なのは承知ですがうまくボケさす方法などあれば教えて頂きたいです。
使用機材 eos 70d ・シグマ150-600

ということで、今回は野球写真の「背景ボケ」について、概論的な感じで行こうかなと。質問された方はもしかすると「そのくらい知っとるわ」って感じかもですが、まぁオレもそのくらいしか言えないんだよ、ってことで許してください笑

背景ボケと「被写界深度」

いわゆる写真の「ボケ」というのは、「被写界深度」というやつと密接に関係しています。被写界深度が浅いと、背景がボケやすいです。深いと、後ろの観客の顔まで認識できたりします。被写界深度について知りたい方は、以下のページを参考にしてみてください。

背景をぼかすには被写界深度を浅くする必要があります。そのためにはどうすればいいかというと、ざっくり以下の4つの方法があります。

・被写体に近づく
・被写体と背景の距離を長くとる
・レンズの焦点距離を長くする(ズームで寄る)
・絞りを開く(F値を小さくする)

なんですが、野球写真において、この中で調整できるものは現実的には1つしかありません。自分の席から被写体であるマウンド上の投手に近づくことはできませんし、マウンドと背景の客席の距離を調整することもできません

レンズの焦点距離は調整できそうに見えますが、そもそも撮りたい画角になるようにできる限り寄っているはずなので、それ以上寄ると「撮りたい写真」ではなくなってしまい、本末転倒です。

とすると、野球写真の撮影時に、背景ボケを少しでも増やすためにいじれるのは事実上F値だけになります。なので、野球撮影で背景をボケさせたいときは、できる限りF値を低いところに調整するのが唯一できること、ということになりますね。

F値を小さくすると背景がよりボケる

以下に、あくまで参考程度ですが、横浜スタジアムのフィールドシートから撮った2枚の写真とその撮影データを載せます。

F5.0 300mm ISO1600 1/800

F5.6 400mm ISO2000 1/640

本当は焦点距離が同じ写真で比較できれば背景ボケの違いがわかりやすかったんですが、手元にそういう写真がなかったのでこれを参考にしてみましょう。

背景ボケという観点でいくと、F値では1枚目のほうがボケが大きく、焦点距離では2枚めに軍配が上がります。総合的には、2枚めのほうがよりボケている感じですね。「富士通ゼネラル」という文字が少し2枚めのほうがボケてる感じしません?

まぁ今回はF値と焦点距離のボケ具合の違いの話ではないので細かく比較はしませんが、この組み合わせだとこんな感じ、ということで。

質問された方はシグマの150-600mmをお使いということで、このレンズはF値がF5-6.3のようです。なのでおそらくですが、300~400mmくらいを使った場合はF5.6~6あたりが開放値だと思います。なので上の写真程度のボケを出すポテンシャルはギリギリあるんじゃないかと思います。

では実際に、この程度のボケを出すにはどうすればいいでしょう?

F値を開放で固定できる「AVモード」

背景ボケをメインに考えるのであれば、AVモードで、F値を開放で固定して撮るのがよさそうです。ただこのモードだと、シャッタースピード(SS)が可変になります。野球写真にとって、SSはとても大事な要素です。選手の動きをピタッと止めるような写真を撮りたいならば、SSは1/800以上にする必要があるでしょう。また、うっかり1/60くらいのSSにしてしまうと、撮影時の手ブレが出てしまう恐れもあります。

なのでAVモードで撮るならば、しっかりとISOを適正な数値にしておく必要があります。デーゲームなら小さい数値でも大丈夫かもですが、ナイターやドーム球場だとISO2500~3200くらいに固定したほうがいいかもしれません。ただ、数値を大きくすると画像がノイジーになっていくので、自分のカメラがどのくらいのISOまでなら大丈夫かどうか、しっかり把握しておく必要がありますね。

ちなみにオレの場合は、SSのほうが大事だと考えているのでSS固定のTVモードを使っています。そして、明るさの状況に合わせてISOを調整。撮りながらF値も意識して、F値が開放でも写真が暗くなるようならば随時ISOを上げていく、という方法でやっています。

また、オレのカメラの場合ISO3200が画質的な限界だと思っているので、ISO3200,F値開放でも暗くなってしまう場合は、涙をのみながらSSを遅くします。(実際は、後処理で明るくすることもある)

「もっと背景をボケさせたい!」というときの、別のアプローチ

「なるほど、わかった。でもね、私はもっと背景をボケさせたいんです」もしかすると、そんな人もいるかも知れません。その場合には、実はひとつ別のアプローチがあります。

それは、もっと明るい(開放F値が小さい)レンズを使うことです。CANONの一眼レフだと、300mmF2.8という単焦点レンズがあります。俗に言うサンニッパというやつです。カープの写真を撮ってるツイッターアカウントの方にも、このレンズを使ってる方が何人かいらっしゃいますね。

このレンズだと、背景ボケの強い「キレのある写真」になりやすいです。300mm単焦点なので、600mmをお使いの方は「寄れない!」って感じると思いますが、背景ボケにこだわるなら、これも選択肢に入るかもしれませんね。ちなみに600mmF2.8のレンズがあればもちろん最高でしょうが、あるんですかね? まぁあっても、間違いなく一般庶民に手が出る金額じゃないですね笑

と、つらつらと書きましたが、現実的にはやはりF値を開放に近くしておく、というところに落ち着くかなと。もしこれまでF値を気にしていないようであれば、チェックしてみてください。球場じゃなくても、公園とかのある程度広さのある場所でF値をいじってテストしてみると、F値の違いによる背景ボケの違いがわかると思います。お試しあれ。

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